2.0 05


《聞きましたー?今夜、とうとう来良学園の生徒が斬り裂き魔にやられたって!》

【え?マジですか?】

[物騒ですねえ。]

《マジマジの大マジンですよー!1年生の女子生徒だって!》

【すいません。ちょっと電話するんでROMります。】

内緒モード《安心しなよ。君の彼女じゃないらしい。》

内緒モード【あ…どうも。でも、一応心配なんで。】

[んー、どの辺か分かりますか?]

《えっと、南池袋の、都電の雑司ヶ谷駅から少し離れたとこですけど、あの辺りに行けば、まだパトカーとか集まってるからすぐ分かると思いますよ。》

[そうですか…。あ、すいません。ちょっと落ちますね。]

《やっだー!セットンさん、野次馬ですかー?》

[いえ、そんなんじゃないですよ。とりあえず、またー。]

ーーセットンさんが退出されましたーー

《あー。もう!》

【すいません、私もちょっと落ちます。】

《えー、電話、繋がったんですか?》

【それが今警察だとかなんとか…現場を目撃しちゃったみたいなんで…ちょっと行ってきます。】

《ホントですか!?》

ーー田中太郎さんが退出されましたーー

《それなら、今日会うのは無理なんじゃ。》

《あ、行っちゃったか。じゃあ、私も落ちちゃおっかなー。》

ーー罪歌さんが入室されましたーー

{かた}

《おや?》

{今日}

{斬た}

《あーっ、昨日も来てた荒らしの人ですねー!ダメですよ!プンプン!》

{斬るた}

{斬った}

《もう、そもそもどうやってここのアドレスを探したんですか?》

{違た}

{弱い、違う、支配、できない}

{愛、足りない、愛}

《なんか、他の池袋関係の掲示板も荒らしてるでしょ、あなた。》

{愛、したい、人間}

{斬った、だけど、違った、足りない}

《えいっ。》

《…強制アク禁しちゃいました。テヘッ☆これで安心ですね。それじゃー。》

ーー甘楽さんが退出されましたーー

ーー現在、チャットルームには誰もいませんーー



荒らしをアク禁にして満足した俺は、チャット画面を閉じた。

あの様子じゃあ二人がチャットに戻ってくることは無いだろうし、今日はこのくらいで切り上げるかな。それに、なまえにも教えておかないとね。

「なまえ。」

「ん?」

ソファでテレビを見ていたなまえに声を掛けると、なまえはテレビから視線を外して、デスクに居る俺を見た。俺は椅子から立ち上がり、なまえへと歩み寄る。

「ちょっと話があるんだけど。」

「うん。どうしたの?」

なまえはリモコンを使ってテレビを消して、俺はなまえの隣に腰掛けた。

ーーさて、なまえはどんな反応をするかな?

「今日、来良学園の1年生の女子生徒が斬り裂き魔に襲われたんだって。」

「…そうなんだ…可哀想だね…。」

「しかも現場を目撃したのが、えーっと…園原杏里って子らしいんだ。」

その名前を告げると、なまえは驚いた表情をして、次に心配そうな表情に変わった。

「…そ、っか…。見ちゃったんだ…。」

「…知り合いなの?」

「え…っと…ちょっとね。」

なまえが園原杏里と顔見知りなのを知ったうえで敢えて問い掛けると、なまえは困ったように言葉を濁した。何だかその様子が少し気に入らない。

「なまえ、キスして。」

「え?」

はっきりと答えるように言うことも出来たけど、わざと全く関係無い話題へと変えた。

「早く。」

「…う…うん…。」

突然の要求に困惑しながらも、大人しく俺の言うことを聞いて触れるだけのキスをしてきたなまえに、少しだけ機嫌が戻った、気がした。

「なまえもくれぐれも気を付けるんだよ。」

「…うん。臨也もね。」

他人がいくら被害に遭おうと俺には関係無いけど、なまえだけは別。なまえが斬られてしまうくらいなら、俺が斬られる方がマシだ。

斬り裂き魔事件が解決するまで、なまえが無事で居ることを願った。





◆161009







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