2.0 01


ダラーズの初集会から時は流れ、2月中旬ーー。

「今年は、どうしようかなあ…。」

私は、一人でサンシャイン60階通りを歩きながらぽつりと呟いた。

…去年はシンプルなトリュフにしたけど…。去年と同じものをあげるのはちょっと…。レシピがあれば、練習すれば作れるようになるだろうし、本屋に行くべきかな…。

「よし、そうしよう。」

レシピを求めて本屋に行こうとすると、

「だからさー、金払えないなら、他のモン使うしかねーだろ?」

「俺らも別にヤクザじゃねーんだからさ。」

近くの細い路地から不穏な言葉が聞こえてきた。

「…?」

何だか嫌な予感を覚えながら、恐る恐る路地に近付きそこを覗き込むと、路地の真ん中に二人の男と制服姿の女の子が居た。

「…えっと…。」

「謝って済めば警察なんて要らねーって分かるだろ?」

制服姿の女の子は困ったように言葉を詰まらせている。それに対して一人の男が威圧的な言葉を吐き捨てる。

どうしよう…、知ってしまった以上、放っておくなんて出来ない…。でも、ちゃんと助けられるだろうか…?警察に通報するのが一番かな…?

不安でいっぱいになり、すぐに助け出すことを躊躇っていたけれど、以前似たような状況に陥った私を助け出してくれた少年のことを思い出した。あのとき、少年が助けてくれなかったら、私はどうなっていただろう…。

そうだ、今度は私が助ける番なんだ…!

ぐっと拳を握り、息を吸い込んでから、勇気を振り絞って声を出した。

「あ、あの…っ!」

「…あ?何だ?」

細い路地に私の声が響き、三人が一斉に私を見た。その内の二人の視線に怯みそうになったけれど、ここで逃げては声を出した意味が無い。

「…その子、私の知り合いなんですけど…何かあったんですか?」

嘘だとバレませんように、と願いながら、ゆっくりと三人に向かって近付いていく。

「この女の子が俺にぶつかって来て、俺のジュースと服が台無しになったから、弁償しろって言ってるだけだぜ?」

「知り合いなら、アンタが払ってくれんのかよ?」

確かに一人の男の服には染みが出来ていた。女の子は特に否定しないので、事実なのだろう。
それならば、私が出来ることはただ一つ。

「…分かりました。おいくらですか?」

「5万だよ。今すぐ払えるんなら、見逃してやっても良い。」

「…!」

そんなに高額だとは思わなかったので、ぴたりと足を止めてしまった。
財布にいくら入ってたかな…。ぎりぎり1万円くらいかな…。どうしよう、全然足りない。

「お金を下ろすってのは無しだぜ?逃げられちゃあ困るからな。」

私の表情を見て悟ったのだろう、先手を打たれてしまった。これでは飛んで火に入る夏の虫だ…。

「何ならこの女の子は解放してやっても良いぜ?アンタが責任を取るって言うならなぁ…!」

「そんな…!」

それまで黙っていた女の子が驚いたように声を上げた。
ひとまず、女の子だけでも解放してもらおうかな…。私は、いざとなれば…どうにか出来るかもしれないし…。

「…わかりましーー、」

「あ、もしもし、警察っすかぁー?今ちょっとヤバいことになってるんですけどぉー、すぐ来てくださーい。」

覚悟を決めた私が頷こうとすると同時に、この場に不似合いな明るい声が路地に響いた。

「え…?」

声は、背後から聞こえてきた。ゆっくりと振り返ると、茶髪の男の子が携帯を片手に立っていた。

「通報完了ー。」

「てめぇ…!覚えてろよ!」

男の子はにかっと笑って、逃げて行った二人の男にひらひらと手を振った。

「さて、杏里と…えーっと、お姉さんも無事みたいだし、良かった良かった。どう?今の俺、最高に格好良かっただろ?」

「…ありがとう、紀田君…。」

どうやら二人は知り合いらしい。ほっと胸を撫で下ろしてから二人を見ると、二人とも来良学園の制服を着ていることに気付いた。

私もお礼を言わなければと軽く頭を下げると、

「あ、ありがとうございます…。」

「お礼にってことで、お茶しません?」

ーー何故かお茶に誘われた。





◆161005







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