1.0 08


「はぁ…。」

なまえが部屋を出た後、俺は溜め息を吐いた。

なまえの様子がおかしいのは、今朝すぐに気が付いた。
聞くか少し迷ったけど、聞いて良かったよ。なまえも悩んでいただろうし。

俺としてはもっと甘えて欲しいのに、なまえは我慢するんだよね。寂しがり屋なのも、俺に甘えるのが好きなのも、泣き虫なのも、全部知ってるんだから、我慢しなくて良いのに。

なまえのバイトが無ければ思う存分に甘やかしたんだけどな。

それにしても…なまえが危険な目に遭っているなんて全く知らずに池袋で時間を潰していた自分を殴りたいよ。…俺何してたんだっけ。公園で人間観察をしていたかな。

それと、なまえに手を出そうとした奴等はただ殴るだけじゃ気が済まない。割り出して、二度となまえに近付かないようにさせないと。

ああ、もしもなまえが俺以外の男に抱かれたらーー、なんて考えるだけで吐き気がする。

「…これは考えるのを止めよう。」

首を横に振り、最悪の想像を打ち消す。

「とにかく、なまえが帰ってきたらダラーズのことを教えないと。」

どこまで教えようかな、なんて呑気なことを考えていたことを思い出して、そんな自分に対して舌打ちをする。

「なまえ、早く帰って来ないかな…。」



♂♀



「なまえ、お疲れ様。」

帰ってくるのをただ待つよりも、俺がなまえを迎えに行けばその分なまえと一緒に居られるということに気付いた俺は、なまえのバイト先の裏口に立っていた。
なまえの勤務終了時間から十分程経ってから、裏口のドアから姿を見せたなまえに声を掛ける。

「…臨也?」

「昨日の今日で危ないから迎えに来たんだ。それに、早く会いたかったしね。」

俺が居るとは思っていなかったらしいなまえは不思議そうな顔をしたが、俺の言葉を聞いて嬉しそうな笑みを浮かべた。
ドアを閉めてから俺の側に来て、右手で持っていた白色の袋を俺に見せてきた。

「ありがとう。これ、臨也と一緒に食べようと思って買ったの。帰って食べよう?」

「そうなんだ、ありがとう。じゃあ、帰ろうか。」

ちょうど紅茶の茶葉を買い足したところだから、タイミングが良かった。

なまえの左手を握り、そっと指を絡めると、なまえも少しだけ力をこめてくれた。それが嬉しくて、つい口元が緩んでしまう。

さあ、早く帰ろう。俺達の家に。



♂♀



「その桜のシフォンケーキは新作なんだよ。美味しい?」

「うん、なまえも食べる?あーん。」

「…あーん。…ん、美味しい。」

新宿のマンションに戻って、二人で少し遅いティータイムを楽しむ。

甘いものを食べているときのなまえも可愛いな。外じゃないからずっと見ていても問題無いし。
…このままずっと見ていたいのは山々だけど、今はそれよりもダラーズについて話さないと。

「…ところで、ダラーズのことなんだけど。」

ガトーショコラを食べているなまえに、俺は静かに切り出した。

「…臨也は、知ってるの?」

「勿論。ダラーズっていうのは、カラーギャングなんだ。」

「…カラーギャング…。」

手にしていたフォークと皿をテーブルに置き、ぽつりと呟くなまえ。あまり明るい話題ではないけど、少し付き合ってもらわなきゃ。

「少し長い話になるけど、大丈夫?」

「平気だよ。」

なまえが頷いたのを確認してから、俺はダラーズについて語り始めたーー。





◆160918







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