ぷらいべーとれっすん




「ああ部長、今日これから部長の家に寄りますね」

「へ?」


 授業を終え、部活動を終えた、いつも通りの帰り道。

 今日はクレアは数学のプリントを説いてこなかった罰として未だ教室で補習を受けているため、二人だけでの下校となった。

 そんな中でロスからの唐突な宣告を受け、アルバはきょとんと目を瞬いた。普通は「寄ってもいいですか」と尋ねるのが筋じゃないだろうか、こういう場合。そうツッコミを入れるよりも早く、じゃあそういうことで、と勝手に決定されてしまった。


「え、ちょ、待って待って! なんでいきなりボクん家に?」

「ダメなんですか?」

「いや、ダメってこたないけど。突然すぎるでしょ」

「ならいいじゃないですか。最初から部長に拒否権なんてないんだし」

「いやあるだろ! 誰ん家だと思ってぶべらっ!」

 至極真っ当だと思われる意見はしかし、ロスの右ストレートで黙殺もとい撲殺された。今日も今日とて絶好調の傍若無人ぶりだった。


「アンタこないだ言ったばかりでしょう、部活頑張るって」

「え? ああ、球技大会の日のことか」

 忘れもしない、アルバがサッカー部部長としてのプライドをズタボロのけちょんけちょんにされたあの日。なんだかんだでやる気を取り戻したアルバは、ロスとクレアの前で意気揚々と来年の球技大会へのリベンジを誓い、更なる練習に励むことを宣誓したのだった。それ以来部活への力の入れ具合も変わり、帰宅してからの自主練にも一層気合が入っている。


「あれから部長、けっこう努力してるみたいじゃないですか」

「ま、まあボクはやると言ったらやる男だからね! ああ言った手前、きちんと成し遂げてみせるよ!」

「その割に闇雲にメニュー増やしてるばっかりで何にも技術向上してなくてチョーうけます!」

「チクショー!!」


 ぶは、と盛大に吹き出され、アルバは得意気な顔から一転、涙目になって叫んだ。ロスが素直にアルバを褒めるようなことを言うはずがないのに、それでも毎回ころりと引っかかってしまうのは彼の生来の純粋さ故だろう。世間一般ではそれを単純(ちょろい)と呼ぶが。


「で、部長があんまりにもへっぽこ役立たずのスットコドッコイだから、見兼ねた心優しいオレがもうちょっと効率的な特訓に付き合ってやろうかと思いまして」

「色々余計な部分があるけど、え、ホント!? いいの?! なんか見返りに要求しない!?」

「それはおいおい話しますんで」

「あ、やっぱなんかあるんだ……。へへ、でもいいや、お前が自分からそんなこと言ってくれるなんて珍しいしな。うん、いいよ、ウチおいでよ。今日は母さん出かけてて夜いないから、晩ごはんご馳走することは出来ないけど」

「――ええ。構いませんよ。むしろ丁度いいですし」

「?」


 最後の言葉の意味はよく分からなかったが、恐らく騒いでも咎められることがないから、という意味なのだろうと思ってアルバはひとり納得した。別によっぽど大声でも出さないかぎり、うちの母さん気にしないのになあ。


「あれ、でもそれなら、わざわざこれからしなくても今日の部活のときにしてくれれば良かったんじゃ?」

「それはまだ部長には早過ぎるかと思って。そんな大勢の前でなんて、ね」


「??」


 そんな大衆の笑い者になるくらい、自分の練習の様子はひどいのだろうか。アルバは首をひねりながらも、ロスと二人、自分の家へと向かっていった。

 隣に立つ人間が、どんな表情を浮かべているかも気付かずに。




* * *



 家に着き、とりあえず自室に荷物を置いてから、庭へ出ようとしたアルバを引き止め、ロスはばたりと扉を閉じた。丁度背後から手を伸ばされ、扉とロスとの間に挟まれるような形になったアルバは、訳がわからず自分の顔の横に伸びるロスの腕をぱちぱちと瞬きをしながら見ていた。


「あの……ロス? どした?」

「どしたも何も、部長こそどこ行くつもりですか」

「いやだから、特訓付き合ってくれるんだろ? だから庭にでも出ようと思って……」

「そんなとこ行く必要ありませんよ。部長がどうしてもって言うなら考えますけど、流石にリスクが高いので。とりあえずはここで充分です」

「ふうん……?」


 何やらよく分からないが、ロスがそう言うからにはそうなのだろう。ボール捌きも足の速さもゲームメイクもからっきしなアルバと違い、ロスはどれも人より頭三つ分くらいは優れている。……つくづくどうして自分が部長なのか、考える程に虚しくなってくる。最大の理由としてはやる気の有無という、唯一にして決定的な点が挙げられるのだが。

 そんな訳でロスが下す指示になんら疑いを抱いていなかったアルバであったが、次に告げられた言葉には流石に目を剥いた。

「じゃあ部長、早速服を脱いでここに横になって下さい」

「はいぃぃい!?」


 いつの間にかアルバのベッドに腰を下ろしていたロスは、嬉々とした表情でぽん、と自分の傍らを手で叩いた。気が付くといつも枕元に置いているクマっちが床に下ろされている。いつ寄せたんだ。……そうじゃなくて。


「おっおま、何言ってんのいきなり!?」

「部長こそ何言ってんですか。早くしてくださいよ。でないとアドバイスしてやろうにもできないでしょ」

「服を脱ぐこととアドバイスになんの関連が!?」

「部長の身体を見るためですよ。筋肉の付き具合とか体幹とか、ちゃんとチェックしないと適切なアドバイスは出来ませんからね」

「え……、そういうもんなの?」

「そういうものです。ちなみに下着まで全部脱ぐんですよ」

「えええええ!? そこまでする!!?」

「当然でしょう。隅々まで確認しないと駄目ですからね。言っときますけど、変に恥ずかしがるほうがよっぽどおかしいんですからね。これはれっきとしたスポーツ科学なんで」

「う、うう……」


 至極真剣な表情で言われ、アルバは渋々ながらも従うことにした。ロスがこんな風に協力的になることなんて滅多にないし、科学の一環だと言われたら、確かに恥じらっている自分の方がおかしいような気がしてきた。

 それでもシャツを脱ぎ、ベルトをはずし、ズボンまで下ろしたところで手が止まってしまったのは仕方のないことだろう。


「ぶちょ〜?」

「う、うう、だって……」


 じとりと睨むロスの表情を直視できず、アルバは下着の縁に手をかけたまま俯いた。このまま躊躇っていたところで恐らく拳が飛んできて無理やり脱がされるのが関の山だ。それならいっそ痛みが少ないほうがいい。

 アルバはぐっ、と唇を噛むと、勢いのままに下着を一気に下ろした。


「ほら! こ、これでいいんだろ!」

「はい、よくできました。じゃあここに横になって下さいね」


 にんまりと、ロスが紅い両目を細めて笑う。局部を手で隠しながら、アルバは言われた通りにベッドの上に横になった。


「あ、くつした……」

「そこは履いたままでいいです」

「え、そうなの?」

「そうですよ、それより部長、手ぇどけてくださいよ。見えないじゃないですか」

「だだだだだって、おま……」

「サッカー、上達したくないんですか?」

「ううううう〜……」


 いくら男同士で気心の知れた仲とはいえ、股間を晒すなんて羞恥の極みだ。別にそんなにお粗末――いや、短小――いやいや――というわけでもないが、絶対の自信があるわけでもない。オマケに生来体毛が薄い質なので、下生えの量もささやか程度なのだ。

 けれどこのまま覆い隠していると、やっぱり拳の餌食になる。それどころかダイレクトに金的を狙われるかもしれない。そうなったら多分死ぬ、リアルに。

 ひゅん、と身体の中心が縮む心地がして、恐怖にかられたアルバはおずおずとロスの言う通りに股を隠していた手をどけた。


「いい子ですね……部長」


 ゆっくりと、ロスの顔がアルバの身体に近づいてくる。そのまま上から下までを舐めるように見られ、アルバはたまらず顔を覆った。


「ロス、や、やっぱこれ恥ずかしい……」

「だいじょーぶですって。恥ずかしくない恥ずかしくない。これをすれば部長も上手くなれますからね〜」

「っひ!?」


 突然、ひやりとした何かがアルバの身体に触れた。それがロスの掌であることに、一拍遅れてからようやく気付く。


「ろ、ロス、なにして……」

「何って、決まってるでしょう。筋肉の付き具合を確かめてるんですってば。触ってみないと分かりませんからね」

「で、でも……なんか、」

「何です?」

「触り方、なんか、ヘン……っひゃあ!」


 さわさわと、まるで揉み込むように胸を触られたかと思ったら、次の瞬間には片方の乳首を指先できゅ、とつままれた。その刺激に思わず身体が強張り、甲高い声が口から漏れる。


「ヘンじゃないですよ。ほら、胸でボールをトラップさせることもあるでしょう? あれがちゃんと出来そうかどうかチェックしてるんですって」

「そ、そう、なの……? っあんっ」


 それでどうして乳首までいじる必要があるんだろうか。なんだかよく分からないけれど、ロスが言うのならそうなんだろう。アルバは流されるままに、そのチェックを受け入れた。

 それからは許可は得たのだとばかりに、ロスはアルバの身体の様々な部分を触ったり、撫でさすったり、時には舌まで使って触れてきた。なんでも舌で確かめるほうが掌よりも正確らしい。そうなんだろうか。きっとロスが言うからそうなんだ。

 アルバはすっかり正常な判断力をどこかへ置き去りにしてしまい、気づけば乳首を嬲られ吸われ、首筋にいくつもの吸痕や噛み痕を残され、臍周りや内腿に至るまで隅々チェックされてしまっていた。


「あん、あっ、あっ、ロスぅ……」

「どうしました、部長」

「あ、の、まだ終わんないの……? ちぇっく、」

「もう少しですよ。次は……ここ、です」

「っやああっ!?」


 言うが早いが、ロスはアルバの股間にあるモノをぱくりと口の中に咥え込んだ。

 これまでの愛撫――アルバ自身は全く気がついていないが、これはまごうことなき愛撫だった――を受けて、年齢に比べてあまり大きいとは言えないアルバのそこはすっかり立ち上がり、ほろほろと雫を零していた。それがロスの温かく柔らかな咥内に迎えられ、ちゅくちゅくと舌先でくびれや先端部分を刺激されて、アルバの脳裏ではちかちかと星が飛ぶような途方も無い快楽の波がうねっていた。付け根の袋部分までもを指先で巧みに揉み込まれ、更に快感が加速する。


「あっ! あっ! やあ、ろす、ロスうっ! ああぁあっ!!」


 アルバの若い牡は過度の刺激に呆気無く射精し、その迸りは全てロスの口の中で受け止められた。ごくん、と喉がなる音を、どこか遠くの世界のようにアルバは聴いていた。


「ごちそうさまです、部長。次はいよいよ、こっちを調べましょうね」

「ふえ……っ」


 アルバの太腿を支えていたロスの手が、そのままぐい、と持ち上がる。丁度ロスの目の前に秘部を晒すような姿勢になってしまい、蕩けた頭でアルバは必死に首を振った。


「いやあ、やだ、ろす、みないでえ……はずかしいよお、」

「恥ずかしくないですってば。……部長のここ、小さくて、ひくついてて、ピンク色で……すごく、美味そうです」

「ふやっ!? ひゃん、あ、ああああ!」


 生暖かくてぬめるなにかが、アルバの後孔に触れた。ぬるぬるとしたそれはゆっくりと、しかし確実にアルバの胎内に入っていく。それがロスの舌だと気付いたのは、同じように濡れた指先がそこへ侵入した後だった。


「やああああ! ろすっだめ、そこきたな、汚いからぁ! だめえええっ!」

「汚くないですよ、ぜんっぜん。言ったでしょ、ピンク色で美味そうだって」

「あ、あ、ああああ……!!」


 ロスの動きはアルバがどれだけ言っても止まることはなく、いつの間にか舌の代わりに指が二本、三本と増え、内部で好き勝手にバラバラと動き回っていた。その度に室内にはぐぷぐぷといやらしい音が響き、アルバの思考をでろでろの泥のように溶かしていく。


「も、だめ、ろす……」

「……確かに、そろそろ限界、か」


 息も絶え絶えにアルバが懇願すると、ようやくロスの動きが止まった。これでようやくチェックとやらが終わったのかと、アルバが長く息を吐いた、その時。


「それじゃあ部長、最終チェックですよ。……ココの、ね」


 ずぐん、と。

 それまでとは比べ物にならないほどの質量が、アルバの中へと突き立てられた。



「や……あ、ああーっ……!!」

「ン、すっげ、キツ……。なかなか、イイんじゃないですか、ぶちょう」

「や、なん、なんれ、ああっ」

「だから、何度も言った、でしょう? アンタのカラダ、チェックしてんですって」


 締まり具合とか、ね。

 囁くような声を耳に落とされ、思わずぶるりと身が震える。


「あッ! ふあ、あぁんっ! やら、ろしゅ、それ、やああ!」

「っは、成程、ぶちょーはココが弱いんですね。じゃあもっと鍛えないと、ねぇ?」

「ひあっあぁん!」


 かり、と耳朶を囓られて、ぞくぞくと背骨に震えが走る。その間にもロスの肉棒はアルバの奥を抉り、ぎりぎりまで引きぬかれてから、更に奥深く目掛けて突き立てられて、それを幾度も繰り返されていた。じゅくじゅくと卑猥な音と共に辺りには先走りの液が漏れ、限界まで広げられたアルバの股には、ぱんぱんとロスの腰が痕が残るほどに力強く打ち付けられる。


「あ、あーっ、ろす、や、あっ、あっ!」

「ああ、熱さも、狭さも、吸い付きも全部文句ナシですよ、ぶちょう。良かったです……ねっ!」

「ひゃああぁぁん!!」


 一際深いところを突かれ、アルバの下肢がびくんと震える。それを逃がさないとばかりに抱え込み、ロスはますます律動を早めていった。


「それじゃ、最後にオレから、ご褒美ですッ、しっかり受け取って、ください、ね!」

「ふあっ! あっ、ああぁぁぁああー……!!」


 ずん、とアルバの胎内に突き立てられたロスの欲望から、びゅるるるる、と勢い良く子種が放たれる。それと同時にアルバの牡も、びゅくびゅくと耐え切れずに熱を放出した。

 最後の一滴まで注ぐように腰を押し付けてから、ゆっくりとロスが自身を引き抜くと、ごぽ、と気泡と共にアルバの孔からは入りきらなかった精液が清水のように溢れてきた。


「あーあ、部長、最後の最後で減点ですよ。アンタほんとツメが甘いですよね」

「ふえ、あ、う……」

「でもまあ、お疲れ様でした。だいたいの具合は今日で分かったので、明日からはもっと弱点を克服していきましょうね」

「う、うん……? んむ、」


 ぼんやりと虚空を見つめるアルバに微笑むと、ロスはその半開きだった唇を塞ぎ、ちゅく、と舌を絡め取った。

 そのまましばらく口内を隅々まで蹂躙すると、最後にちゅ、と音を立てて唇を離した。


「じゃ、これが授業料ってことで。これからも特訓のたびに支払ってもらいますからね」

「はあ……」


 夏場のチョコよりもぐでぐでのアルバの頭では、一連のロスの行動が果たして本当に特訓だったのか、その思考にすら辿り着けなかった。



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