Sample.2




「んっ……ふ、ん……」

「……は、」

 ぴちゃ、と生々しい水音が響く。滴る銀糸を舌先で断ち切ると、シオンは最上の甘露を口にしたようにうっとりと目を細めて微笑んだ。

「流石、アンタの魔力は上物ですね。……元々がオレやあいつの、負の感情を取り込んで作ったものだとは思えないくらいに甘い」
「は、あ……しお、んぅっ!?」

 息つく暇もないままに、今度はアルバの両の手首が光る紋様の入った金属の輪のようなもので一つに縛られ、ベッドの縁に繋がれる。足首も同じく金輪で捕縛され、丁度シオンの前で両脚を開くような形に固定された。

「粘膜を介して魔力を少々奪わせてもらいました。オレの編み出したオリジナル魔法、たっぷり堪能して下さいね」

「や……嫌だ、止めろよ、ロスっ!」

「止めませんよ。お仕置きだって言ったでしょう?」

 これから自分の身に起こるだろうことを想像し、必死に脚を閉じようとするが、シオンの使った拘束魔法は本人の申告通り非常に強固で、力任せではどうにもなりそうにない。がたがたとベッドの土台だけが虚しく音を立てていた。

「この魔法は正しい解除式で解かないと外れない上、解除以外の魔力行使を禁じる効果があります。もしどうしても逃れたいんなら、自力で正解の式を組み立てることですね。ま、あんな悲惨な点数取ってるようじゃ今の貴方にそんな高度な真似が出来るとは思えませんけど」

「ひゃあっ!?」

 言いながら、する、とシオンの手が布越しにアルバの局部を撫でた。今アルバの股間を覆っているのは、下着の他はぺらぺらとした安物生地の囚人服だけだ。そのまま幾度も撫で上げられて、否が応にもそこはゆるゆると反応を見せ始めた。

「ろ、ロス……っあ、ホントに、もう止めよ? こんな方法じゃなくても、その……シたいなら、ちゃんと付き合うから……さ」

「嫌です」

 魔力で硬化されて鋏状になった指先が、ふつふつと白黒のボーダー柄をした布地の繊維を裂いていく。露わになった胸元は怖れの為か既に先端がツンと立ち上がっていて、吐息を吹きかけられる度にふるふると震えた。

「あ……っ、た、確かに最近ちょっと控え目だったし、溜まってるのかも知れないけど……、んっ、コレは流石にあんまり、良くない、よ……」

「――さっきから何見当違いなことばっかほざいてんですか」

「え……、」

「言ったでしょう、これはアンタに対する罰なんですよ。……まさかとは思いますけど、単にオレがヤりたいからこんな真似してるとでも考えてんじゃないでしょうね」

「ち、ちが……の?」

 その途端、ぎりりと捻るように乳首を摘まれ、アルバはひぃ、と悲鳴のような声を上げた。先端の少し凹んだ部分に爪を立てられ、鋭い痛みが針のように襲い掛かる。

「や、なんで、急にぃ……!」

「その察しの悪さ、分かっちゃいたけど本気でムカつくな」

「うああっ!?」

 指が離れたのも束の間、今度は鋭く尖った犬歯が容赦なく食らいついてきた。噛み千切らんばかりの力でがじがじと責められ、裂けた皮膚の間からぷっくりと血が浮かび上がる。

「あ、や、痛あっ!」

「は、鉄くさ……」

「はぅ、ん、んむぅ……!」

「ん……、」

 シオンは浮いた血珠ごとアルバの乳首をじゅくじゅくと吸うと、そのまま強引に唇を重ねた。血液独特の腥さが口腔に広がるのも構わずにひたすら舌を絡められ、溢れる唾液を喉奥に流し込まれる。苦しさに耐え兼ねてごくりと嚥下すると、途端に痛みに震えるばかりだったアルバの身体がこれまでとは違う反応を示し始めた。

「っひ、いやぁ、ああ……! なに、っあ!?」

「お、ちゃんと効いたみたいですね。実は今飲ませた唾液に媚薬効果を持たせておいたんです」

「び、や……く?」

「はい。痛み止めの麻酔魔法と魅了魔法とを掛け合わせた、なかなかの高難度魔法ですよ。勇者さんはこういう複数の魔法の組み合わせがほんっとヘタックソですからね、これを機に学習していきましょうねー」

「な……あっ! やだあっそこ、そこ噛まないでぇええ!!」

 シオンが上下の歯でぎりぎりと擦り潰すように噛む所為で、アルバの胸の蕾は血と唾とが混じり合った半透明の赤い液体ですっかり濡れそぼってしまっている。仄かに紅く色付いた乳輪や、薄く筋肉で盛り上がった胸板にもくっきり歯痕がつく程に齧り付かれる度、媚薬に冒された肢体はびくびくと魚のように激しく跳ねた。

「ひぁ、なんれぇ、いたいのに、感じちゃ……!」

「あ、言うの忘れてました。さっきの媚薬魔法、実は勇者さん用に更にアレンジを施してまして。痛覚を覚えるほどに快感も味わえるようにしてるんです。クソビッチドMな貴方にはピッタリな改良でしょう?」

「そんなっ、あ、あー……っ!!」
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