ライブTシャツもそのまま、勿論汗も流してない。
そんな状態で、ホテルのベッドの上でひたすらキスを繰り返している。
貪るようなそれのせいで口許はお互いべたべただし、息継ぎもなんにも考えてないせいですげー苦しい。
でも、全然やめる気にならない。
壱だって拒むどころか首に回された腕も舌も俺の腰に絡められた足も、とにかくもっととねだってきてるからこれでいい。
履いたままのブーツはいってえけど、脱がす余裕は今の俺にない。
はじめて立ったステージは画面越しや客席で見てきたよりもずっとデカくて広くて、そして想像よりもずっと、とんでもなく気持ちがよかった。
前から、それこそ普通のバンドとして活動してた頃からの、俺の、俺達の夢の場所。
最初そこでライブが決まったって言われた時にはさすがに手が震えた。
そこから今日、実際にライブをするまではなんかもう、殆ど覚えてない。
新しくシングルやアルバムを出して、全員で音を揃えてライブ用にアレンジを加えたり、とにかくいろいろやった。
勿論合間にいつもどおりライブだってやってたし、今までで一番忙しかった時期なんじゃねえかな。
マネージャーがつっこんだ宣伝用のスケジュールも中々だったし。
今までだってデカいとこに立ったことはあるけど、それは歌番組の特番だったから今回とは全然、圧が違った。
うん、今日、すごかったわ。
だって俺の歌とあいつらの音を聞きに来てる人間しかいない空間だ。
まあ付き添いもいるかもしんないけど、それはそれってことで。
声も熱も今まで経験したどれとも違う、多分一生忘れらんねえだろうな、これ。
次にまたあそこに立ったとしても、この感覚はもう二度と味わえないってわかる。
そんな特別な場所だったからかマネージャーが昨日今日と連泊で会場そばのホテルを押さえてくれた。
随分ウチの事務所も太っ腹になったもんだ、馬鹿みたいにイイとこじゃねえけど安くはないホテルなのに。
おかげでライブが終わって即壱とベッドの上でこうしてられるから感謝しかない。
これ、トイレでヤる程度じゃ絶対治まんねえもん。
心身の負担を減らすために用意しただろうホテルがこんな風に使われるとはー…思ってっかな、なんせうちのマネは俺と壱の関係を知ってる。
それにそもそもライブが終わってすぐここまで車出してくれたのもマネージャーだ。
きっと俺と壱が打ち上げに参加しない理由を説明してる頃だ。
こんな場所でのライブの打ち上げにリーダーがいないとか、突っ込まれまくるんだろうな。がんばってほしい。
「ん、おそ、」
「あ? なぁに」
「集中して、っむ」
うっわ、すげーおねだりきた。
身体で示されんのもイイけど、やっぱ言葉で求められんのには劣る。
しかも散々キスして、とろっとろになった声。
最高にソソられるしめちゃくちゃうれしーけど正直ちょっとつらい。
もうちんこいてえっつーの。
服脱がなきゃどうしようもないけど如何せんめんどくさい。
まだまだキスをやめる気にはなりそうにねえし。
かわいーおねだりに応えるために噛み付くように口付けて、もうどっちの味とかわかんない咥内に舌で触れてく。
もう散々舐めつくしたのに上顎の裏を舌先で撫でればちゃんと毎回俺の身体の下で壱の身体がびくびく跳ねる。
エロいしかわいーし、なんなのこいつ。
壱から漏れる声も息も全部俺のものにするみたいに何回も何回も繰り返す。
まじで終わりが見えない、キスだけじゃ足んないのに。
「っは、も、キスだけで、ん、イけそ」
「ふ、まじ、で? 試していい?」
「やだ、OSOので、イきたい」
ご丁寧に声に合わせて曲げられた膝が俺のを刺激してきたから咄嗟に腰を引いた。
ざけんなマジで限界なんだっつーの、俺だってイくならおまえん中でイきたいわ。
どうしよっかな、やっぱ脱ぐしかないよな。
いつもなら気にならない細身のパンツがしんどすぎる、あとなによりもブーツ。
それがなきゃ全然楽だったのに。
「ふひ、かわいー、反応すんね」
「うっせ。はー、全然満足できないんだけど、なに、おまえ麻薬かなにか?」
喋ってる最中だってくっつけるのとか、あわよくば舌を絡めるのがやめられない。でもまあ、うん、頑張れば上はいけっかな。
捲れてたTシャツの裾から手を突っ込んで身体に這わせながら更に捲り上げてく。
もう充分敏感になってるのか、別に触ってる場所が特別な箇所ってわけじゃないのに口が離れるタイミングで壱から零れる音は紛れもなく嬌声だ。
ぞくぞくする。
でもどうせならそんなぎりぎり零れるようなのじゃなくて、もっと、恥とか全部わかんなくなってるくらいの声が聞きたい。
くっそ、脱がすのなんて慣れてるはずなのにキスしっぱなしだからとか、汗でくっついてるからとかでうまくいかない。
がっついてるみたいじゃん、実際がっついてるけど!
壱が協力してくれたおかげで袖から腕は抜けた、あとは首だけだ。
つまりキスすんのをやめるしかない。
しょーがないから一旦やめて、ちょっと雑に、でもピアスに引っかかったりしないように。
やっと完全に露わになった白い胸元の上に乗ったネックレスと、適当に脱がしたのもあってシーツに散らばった紫色の髪の毛がエロい。
暗いのが残念だ、ちゃんと電気点ければよかった。
部屋に戻った時全然余裕なかったもんな。
とりあえず後でベッドサイドテーブルの上に今朝から用意しといたローションとかとるときに枕元だけでも点けよ。
「おそ、もっかい」
「ん」
くっつけて離して、もう一度くっつけて舌をいれる。
あれこれもう一回じゃねえや、まいっか。
激しいのは散々したからねっとりしたのを仕掛けてたらするする俺の背中を服の下に潜り込んだ壱の右手が直接上へと撫で始めた。
くすぐったいそれに耐えつつ続けてるうちに左手も増えて、そこでやっと脱がせようとしてる事に気が付いた。珍し。
さっきしてもらったように腕を動かして、なんとか抜いて。
首許に残ったのは面倒だから自分で脱いだ。
壱のと一緒にまとめて床に落として、うん、身体に直で空気が触れるようになったからかな、ほんの少しだけ落ち着いた気がする。
今ならブーツもいけそう。
ちょっとだけ身体の位置を変えればブーツのファスナーをまえるのは簡単だった。
「…今日さあ、なんかもう、すごかったじゃん?」
「語彙力。あんた本当にウチの歌詞書いてる人? うん、でもわかる、すごかったよね。それに尽きる」
「すごすぎてJUISYととど、泣いてたじゃん。おまえも泣くかと思ったのに」
右足のブーツを適当に落としたら思いの外重めの音がした。
下まで響いたかな、さすがにそんなことはねえか。
泣いてた、って言っても大したことなかったそれを宥めるように二人の背に触れたのは架羅とJADEだった。
となると俺の担当はやっぱ壱かな、と思って定位置へ振り向いたらばっちり目が合った。
泣くなんてそんな素振り全く見せない紫色ははじめて見るような色合いで俺を射抜いて、先、次の曲を待ってた。
「泣かねーよ、時間の無駄。そんなことよりあんたの歌であそこを埋めたかったから」
「…おまえ俺の歌、ほんと好きだね?」
「…世界で一番あんたの歌の事を愛してるのはおれだよ?」
左足のブーツが落ちた音はさっきよりも大きかった。
強引に脱がして、しかも放り投げてしまったからしょうがない。
でも右足の時と違って音が全然気にならなかった、そんなの壱のが優先に決まってる。
折角少しだけ落ち着いた熱は壱の一言で簡単にぶり返してしまった。
また唇が恋しくてどうしようもない感じ。
俺がこうなるのがわかってたように開かれた唇に齧り付いて整ったばかりの呼吸を乱していく。
首に絡んだ腕が熱くて気持ちいい、あまりにも熱くてエアコンが効いてるのか疑いたくなる。
一応効いてるんだろうけど、ライブの熱とここに戻ってきてからの熱が入り混じってだめだ。
「っは、俺の歌しか愛してくんねえの?」
「あんたの事愛してなかったら歌も愛してない」
「知ってる 壱くんは俺にめっろめろだもんね」
「……おれだけは、ずるくない?」
暗い中でも不思議と壱の目がどんな風になってるかわかる。
とろとろに溶けてて、でもたまりにたまった熱でぎらぎらしてて、どうしようもないくらい俺の事を煽る、俺しか知らない色。
俺の目も壱しか知らない色になってるのかな、今度聞いてみよ。
今はどうでもいいや。
首に回されていた右手を解いて、ベースを弾いている故に俺とは違う硬さの指先に唇を寄せた。
髪の毛だって好きだし、首筋だって耳だって、どこだって好きだけどやっぱりここは特別だ。
俺の好きな、身体の奥を揺さぶるような音をかき鳴らす場所。
「俺だっておまえの音も、勿論おまえの事も愛してるよ」
「…知ってる。ね、もう本当無理。なんにも出なくなるくらい、からっぽになるまで、めちゃくちゃにして」
「そのかわりおまえの腹ん中はいっぱいになるけどね」
「ひひ、さいこーじゃん。後でちゃんとかき出してよ」
「勿論、後処理までがセックスだろ?」
右手を解放してやればすぐにまた俺の首へと絡んで頭が引き寄せられた。
キスはじゃなくて唇がやわく食まれたのは多分、パンツを脱がすのに邪魔にならない程度に済ますためだろう。
これはこれでじゃれつかれてるみたいでかわいくてしょうがないんだけど。
さすがにもう俺も限界だ。
誘われるままに壱のパンツの前を寛がせたら脱がせやすくするためだろう、腰が浮いた。
あーもうほんと、えっろい。
やっぱり食まれるだけじゃ物足りなかったから俺から唇を捕まえたらゼロ距離で笑われた。
いーよいーよ、今の内に余裕ぶってればいい。全部食ってやる。
細身とはいえ慣れたそれを脱がすのは簡単で、下着ごと纏めて自分の足を使いつつ壱の足から抜いてやった。
これでもう壱の身体を隠すものはなんにもない。
唇と唇を繋いでた糸を舌で切ったついでにどっちのか区別のつかない唾液で濡れた唇を舐めあげる。
甘いような苦いような、無味のような。
壱のだけだったら恐らく脳は甘いと判断していただろう。
ローションを手にとるついでに枕元のライトを点けるのは忘れない。
急に照らされたせいか眩しそうに顔を顰められたけど消してとは言われなかった。
普段から点けてヤってることが多いからかもしれない。
オレンジ色のライトが濡れた瞳でゆらゆらすんのはきれーだけど、余計な色だよなあと思ってしまう。仕方がない。
「壱、指挿れる」
「ん…どーぞ」
ひくついてるのが外からでもわかるそこに指を挿れると中が露骨に俺を求めてるって感じに動く。
あついし、絡みつき方もとんでもないし。
わかってたけど壱も相当興奮してる。
そんな中を指でとはいえ味わってしまったのもあって正直すぐにでも突っ込みたい。
でもそれじゃ駄目な事はわかってるから理性をフルに使ってどうにか耐えつつ急くことのないように丁寧にやわらかくしていく。
お互いヤりたくてしょうがないつっても怪我させんのは、よくない。
顔見たら我慢できなくなりそうだから下を見てたわけだけど、これはこれで失敗だった気がする。
ローションでてらてら光ってんのも、俺の指を咥えこんで拡がってんのも生唾ものだ。
閉じてた指を開けば中のピンク色も見えて更にエッロい。
デカイ場所でやるから、ってちょっとの期間禁欲してたのも大きい。
つっても先週はヤってんだけどね。
俺達にしては我慢したほうだと思う。
「も、いーから、はやく」
「ん…多分ちょっとキツいかも、わり」
「は、何回あんたとヤってると思ってんの…大丈夫だよ」
はは、頼もしい。
右手はローションで汚れたから左手でベルトを外して前を寛げていく。
いろんなものに耐え抜いた俺のは触るまでもなくギンギンになってるし改めて扱く必要はねえなこれ。
壱はともかく、俺がこんな下着汚すのってあんまないのに。
自分の足を動かして思い出したけど、俺ブーツ脱いでねえや、いっかもう。
寝るときはもいっこのベッドで寝ればいいや。
今日はホテルだしゴムはいらないよな、つーか寧ろつけたら怒られそうだ。
壱の言葉どおり俺のを受け入れ慣れたそこは宛がうだけで吸い付いてくるし少し押し込んだだけでもっとと奥へ誘うようへ蠢く。
そんなお誘いを断る理由なんてないので誘われるままどんどん奥へと進んでいけば壱の口から小さく声が零れはじめた。
ぎゅっと枕を掴んで耐えてる姿にぞくぞくする、無防備に晒されてる白い首筋にかぶりつきたい。
でもそうするにはまだ早い、変に動くと出そうだ。
「ッ、あ…! あ、ん、」
「はー…やっぱちょっと、足んなかった、んじゃね…っきつ」
「いた、くないから、へいき、もっと、」
「も〜…じゃ、残り、一気にいくな?」
「ん、ちょうだい」
瞼で隠されていた紫色が現れて溜まった水分でゆらゆらと揺れた。
すっげ、どこもかしこも俺の事を容赦なく誘ってくる。
宣言通り納まっていなかった残りの部分を一気に押し込めば壱の白い肌の上に白濁が飛んだ。
ところてん、いつもならやらしー身体してんねとか、そういう事言ってやるとこだけど残念ながら今回は俺にも全然余裕がないのでやめておいた。
我慢したとこでどうせたいして持たないし、俺も一発目はさっさと体内へと吐き出させてもらおう。
イったばっかできゅうきゅう絡んでくるし耐えようと思わなければすぐ出せる。
ちょっとしんどいかもだけど腰の抽送は止めないまんま、壱のイイとこを刺激していく。
「んっあ、あ、」
「ふ、待ってとか、言わねえんだ?」
「あ、ッだって、あんたそんな余裕、ないでしょ、っひあ、あ!」
思い切り突いたらばちゅりと下品な音が鳴って、それに応えるように壱の中がおれのに絡みつく。
あー、さいっこう、中もだけど、俺の下でびくびく身体震わせてるのがやばい。
首裏、襟足でぎりぎり見えるかどうかのあたりに立てられた爪の痛みすらきもちいい。
いろんなものに促されるまま、今現在で一番深いところで精液を吐き出した。
それに対する中の動きがまるで搾り取ろうとしてるみたいで油断すると声が出そうなくらいいい、ぞわぞわする。
「あ、んん…ッ、」
「ッは、ヨさそーな、声、」
「ぅあ、あ、だって、きもち、あ、っ」
ヌいたりとかも全然してなかったからかな、いつもより長い、気がする。
しっかり全部出した後、お互いもう少し落ち着いたほうがいいかな、と思ったけど腰の動きをうまく止められない。
動き自体はゆっくりだけど、ぎりぎりまで抜いて、また奥へ。
中全体を擦るようなそれは、俺はともかく壱にとっては落ち着くどころじゃないだろーな、これ。
現に声は零れっぱなしだ。
「あ、あ、っ、あ」
「えっろ…」
奥から、手前まで。
そんな抽送を繰り返しているせいで結合部からは出したばかりの俺の精液がとろとろと零れて壱の肌やシーツを汚していく。
ついでにぐちゃぐちゃと音が鳴りやすくなって、それに壱の声が混ざって部屋に響く。
零れてくる精液が泡立つくらいすんのもアリかな、とちょっと思ったけど、やめた。
それよりも、もっと奥に行きたい。
「なあ、壱」
「んっ、な、に、あ、」
「奥、挿れてい?」
引いていた腰をゆっくり奥へ戻してそのまま一番奥、硬く閉じたそこにぐりぐりと先端を押し付ける。
たまにこつこつと小刻みに突いて少しでも柔らかくなるように刺激を繰り返していく。
返事がない中強引に進めるつもりはないから、今はそれだけ。
声が聴きたいから口は避けて顔中にキスを落しながらひたすら何回も。
「なあ、だめ?」
「あ、っ、おれも、おくに、ほし、っんん」
ずっと避けていた唇に噛み付いて言葉や吐息を飲みこんでいく。
舌を絡めながら壱の足を抱え直して奥に届くように腰を固定すれば準備万端だ。
あとは、押し込む、だけ。
その前にたっぷり口の中を味わって、離した頃には唾液でできた糸が俺達を繋いでいた。
それが途切れるよりも早く、ぐ、っと腰を奥へ少しだけ進める。
「あ、っ…!」
「ん、ちょっと、我慢して、な…ッ」
大丈夫だ、なんせここを越えるのは初めてじゃないし。
頻繁にやってるわけじゃないけど多少は慣れてきているはず。
その証拠に、更に強く押し付ければ先が、そこを越えた。
単なる中とは違う絡み方は半端じゃなく気持ちよくて、一瞬これだけで出るかと思った、あっぶねえ…!
さっき早かった分今回はもーちょい我慢したい、一応ね、よゆーぶりたいじゃん。今今更だけど。
「ッ、あ…! は、あ、っ」
「はい、った、はー…」
「ん、ね、足、離して、」
「あ? でも俺が持ってたほうがおまえ楽じゃね、いーの」
頷きが返ってきたからそっと足から手を離せば、自由になった壱の足が俺の腰に絡みついた。
部屋に戻ってきたばかりの時みたいに引き寄せられてぐっと距離が縮まった感じ。
思ってたようにできたのか壱は満足気だ。
「これなら、抜けにくい、でしょ、」
「なにそれ、激しくしてってこと?」
「…全部足りない。キスもこっちも、もっとちょうだい」
こっち、で締め付けてくんのはずるくない?
そんな風に言われたらもう、答えないわけにはいかないよな。
もっかい唇を重ねて腰の動きも再開する。
上も下も気持ちがよすぎて頭ん中がぐらぐらする、けどどっちもやめる気にはならない。
足が痛いくらい絡んでるおかげで確かに多少激しくしても結腸から先が抜けたりしなくてやりやすい。
ほんと、腰止まんねーわ。
息継ぎの関係もあるからたまにキスはちょこちょこやめざるを得ないけどその合間にだって壱の声が鼓膜を揺らしてくるから興奮は増すばっかりだ。
中で吐き出して、それでもまだ足りない。
「っあー、これ、終わり見えなくね?」
「だめ、なの? は、っあ、あした、休み、でしょ、」
壱の言うとおり、確かに明日は一日休み。
まあ夜は今日の打ち上げとは別に改めて呑み会があるけど、まあ夜だし、どうにかなるか。
チェックアウトの時間までに身支度が整えられればいい、それだって同じホテルには他のメンバーがいるしマネージャーの迎えだってあるはず。うん、いけるなこれ。
「ん、っも、腰、とまってる、」
「あ、ごめん明日の事考えてた。もおいけるってわかったからだいじょーぶ、安心してヨがってよ」
「ひゃ、いきなり、あ、あっあ、ア、っ~!」
物足りなかった分も、いっぱい。
激しめに揺さぶってやれば壱がイくのはあっという間だった。
明らかにイってる、けど壱のから精液は出ていない。
「はは、メスイキ? かぁわいい」
「ま、や、あっ、いま、あっらめ、」
「待たなくていーっつったのは、おまえ、じゃん、っ?」
「あ、あ、ッ、あ、っ!」
蠢く中の良さに身を任せて、もっかい、一番奥に。
もーいいや、我慢すんのはやめだ。
今の中出しで壱はまたイってるし、どうせどんなに俺が早くイってても明日には覚えてない。
覚えてたとしても念願の場所でのライブ後、そんな特殊さがあるから言い訳だってできる。
「っは、あ、だから、まだ、あ、や、っ」
「ま、ったまたあ、もっとって、声じゃん、それ。いーっぱい、気持ちよく、なろーな、」
水の膜の向こう側、紫色が期待に揺れたのはきっと勘違いじゃない。
ほら、もっとって、こっちでも言ってる。
突いた拍子にはくりと開いた口に噛み付くように口付けたら背中に鋭い痛みが走った。
視界いっぱいに広がっている紫色に、一瞬思考回路が止まった。
すぐに壱の後頭部だってわかったけど、はー、びっくりした。
基本的に前から抱き締めてることのが多いから珍しい、なんで後ろからなんだっけ。
なんかもう、最後の方覚えてねえし、殆どトんでたなあれ。
結局ぐちゃぐちゃにしてしまったほうのベッドにいるし、後処理だってなんにもしてない。
俺はともかく、壱のはどうにかしねーと…。
起き上る前に抱きしめて、ついでにオレンジ色に照らされた白い肌、肩口の辺りに口を寄せた。
薄暗い中でもわかるくらいキスマークやら歯型やらが散らばってるそこに新しく痕を一つ。
そこで、下半身に違和感、つーか、快感が走る。
んん、ちょっと待て、これ、もしかしてもしかするのでは?
「あ、っ…」
恐る恐る、腰を揺すってみれば案の定、寝ているだろう壱の口からは喘ぎ声。
中もゆるやかに俺のを締め上げた。
抜く余裕もなかったとか、ほんっとどうしようもねえな…!
どっちが先にオチたんだろ、いや多分壱だよな、そうであってほしい。
とにかく抜かねえと後処理もなにもない。
ず、っと腰を引いても勿論壱は小さく喘ぐ、それが、なんともいえなくて。
ついまた奥へと収め直してしまった。
仕方ない、だって完全にそういう声だったもん、誘われたら応えるしかない。
このままでもいいけど、もーちょい動きやすいほうがいいかな。
挿れたまま壱の身体をうつぶせにすれば自然と俺がその上に乗っかるような形になる。
所謂寝バック、うん、こっちのがいいな。
流石に寝てるのを起こすのはあれだし、ってことで、ゆっくりと抽送をはじめたら壱の中でぐちゃりと精液が混ざる音がした。
この音と感触、そんなに長い間オチてたわけじゃないらしい。
よかった、このくらいなら後処理はそんなに難しくない。
「ん、っ…んっ…あ…っ」
「っ、寝てても、ちゃんときもちーんだ…」
そういや寝てるのを抱くのって初めてだ。
同棲してるのもあって、そんな切羽詰るほどたまるような事もねえし。
いや今も別にたまってるわけじゃないけど。
寧ろ散々だして空っぽに近い、と、思う。
でも。
腰を動かす度に小さな声が、シーツを握り締める手には力が篭る。
横顔に髪がかかって邪魔だったからどかして表情を窺えば殆ど最中と同じ、赤くなった頬や悩ましげに寄った眉。
「今更やめらんねえよなあ…」
やりにくさはあるけど、後処理は壱が寝ててもできる。
だから、起こさないように。
そう気を付けて動かしていたつもりだったのに、つい壱、と名前を呼んだ途端、中の締め付けが強くなった。
「んっ、え、あ…っ? なに、」
「ええー…おまえそんな、俺に名前呼ばれんの好きなの…」
「あ、っ、はいって…? ん、は、あっ」
「ちょっと待って、もお、終わる、から」
壱が起きた事によって遠慮しなくてよくなったから少し動きを早めればもうイイとこまでいってたからすぐだ。
無意識に零れていた声と違って意識のある壱の声はやらしさを増しててさいこーだし。
触ってないけど、多分壱も勃ってる。
意識あんならちゃんとイかせてやったほうがいいよな、中途半端はしんどいだろ。
「あ、っ、も、」
「ん、一緒にイこーな、」
「あ、ん、んんっ、」
数秒後、俺が出したのと、壱が出したのは大体同じくらいだったはずだ。
出るとこ見なくてもイったことくらい締め付けやら身体が弛緩したタイミングでわかる。
余韻を感じる間もなく抜いたら途端にそこから堰を切ったように精液が零れだした。
「うわ、どろっどろじゃん…女だったら絶対妊娠してるってこれ」
「ふ…、生憎、男なもので…」
「おまえならなんでもいいけどねえ。動ける?」
「むり、ねむい、し、力はいんない…」
だよなあ、本当はちゃんとシャワーで綺麗にしてやりたかったけど無理か。
できるだけかき出して改めて朝やるしかねえな。
俺ももうだるいし、シャワーとかは全部朝でいいや。
とりあえずティッシュとタオルで一応なんとかなるか。
ティッシュは部屋に備え付けのがあったはず、タオルはバスルームだよな。
面倒だけど仕方なく取りに行って、ついでにドアの前に放置されっぱなしだった鞄の中からスマホを回収する。
ちかちか光っているライトはなにかしらの通知が来ている証拠だけど全部無視。
焼け石に水な気もするけど一応アラームをセットしてベッドサイドのランプの傍に置いておく。
「おそ…」
「んー? なぁに」
戻ってきたベッドの上、かんたんに壱の身体を拭ってから最後にどろどろのそこへ指を挿れる。
これ以外がないように作業的、且つ丁寧に。
かき出した精液は予め敷いておいたタオルへとぱたぱたと落ちていく。
「ん…っ、今日、最高だったね、」
「なー。でもまだ足んねえわ、俺もう既にライブしたい気分」
「わかる…、けど次、狭いハコがいい…」
「普通のライブハウスみたいな?」
広いハコには広いハコ、狭いハコには狭いハコのいいところがある。
跳ね返ってくる音も違うし感じる熱量も観客との距離もまるで違う。
どっちがいいとか選べない、どっちだって最高に楽しい。
六人でステージに立てるなら俺はどっちでも喜んで立つ。
「そう…とにかくハコんなかOSOの音と、おれ達の音でいっぱいにして揺らして、なにも考えられないくらいになりたい」
「あー…考えてたら歌いたくなってきた」
「歌え、ば、っ」
「やだよ絶対苦情くんじゃん。思いっきり歌えないなら意味ねえし」
ホテルで大声なんてだしたら絶対アウトだ、しかも夜中。
余計な事して安定してきた足場を崩すよ のはよくない。
このまま進めればまたあのステージに立てる可能性だってあるのに勿体ない。
一回じゃ足らない、何回だってあそこに立ちたい。
「はい、おーわり。あとは朝やろ。粗方出したけど腹痛くなったらごめんな」
「ん…シャワーめんどくさがった、おれがわるい、から、」
「んん、まあどっちも盛ってたし、お互い様、ってことで!」
大丈夫大丈夫、なんとかなるって多分!
朝って言ってもアラームをセットしたのはそんな先の時間じゃない。
起きれるかは別だけど。
壱の横に寝転がればもそもそと、ゆっくり壱が身体の向きを変える。
迎えるように腕を広げればこれまたゆっくり腕の中へと収まった。
はー、かわいい。
さっきまであんなエロかったのに。
「…つかれた」
「そーだなあ、いっぱい体力使ったもんなあ」
「うん…でも一仕事終わって一安心、って感じ」
「まだまだ立ち止まってらんないけどね」
「知ってる、まだ、もっと、あんたの歌、いろ、んな、ひと…」
辿々しくなった声は寝息に切り替わってそのまま落ち着いたようだ。
元々そんな体力もないのに慣れないステージ、ライブ、その後にあれだけセックス。
限界なのは当然か。
起こさないように抱き直して、俺も目を閉じた。
倦怠感に身を任せてしまえば瞼が一気に重く感じるようになる。
この汚れたシーツやら布団やらタオルってどーすんだろ、金で解決できたらいーな。
できなかったら、んん、今はいいや、明日考えよ。
早々に考えるのをやめてから目を閉じて、深呼吸。
汗混じりの壱の匂いをいっぱいに吸い込めば、意識がとろりと溶けるのはすぐだった。