誕生日だから、って別に言う程特別なことはない。
晩飯には毎年定番中の定番、苺のショートケーキがワンホール現れるくらいだ。
ケーキの上に鎮座するプレートにハッピーバースディニート達、と書かれるようになったのもいつのまにか当たり前になっていた。
しょうがない、事実だし。
ただ六つ子達でもいいんじゃねえの、と思わなくはない。
市販品のケーキの上で唯一松代の手書きのそれに口を出すつもりはさらさらないけど。
今年もあのプレートは争奪戦が起きるな、俺達には割って分けるという考えはない。
通称松代の愛争奪戦、松代自身もそれを楽しんでいるんだろうプレートを増やせば一発で解決なのにそれが実行されたことはなかった。
そもそもプレートが六つも乗っているケーキはシュールだからそれが正しい気もする。
そんなわけで日中はいつもどうり、ニートが過ごす平和な平日だ。
することもないしこども部屋でだらだら、寝落ちるか寝落ちないかの瀬戸際をぐらぐらしている。
金があればパチンコ行くんだけどなあ、流石に四桁いってないのに行っても結果は簡単に想像できてしまう。
「おそ松兄さん」
「んー?」
今松野家には俺と一松、それと屋根の上でギターを弾いているカラ松しかいない。
いつのまにかいなかったから誰がどこに行ったかは知らないけど、どうせ夜には帰ってくるだろ。
あのベタな誕生日ケーキはなんだかんだ全員楽しみにしているし、一緒に過ごすような相手は相変わらずいない。
いや俺はいるけどね!つっても相手は一松だし、なにかしなくても自然と一緒に過ごすことになるからなあ。
今だってもう既にこども部屋で二人一緒にいるわけだし。
「あの、お願いがあるんだけど」
「おねがい」
睡魔でぐらついていた頭が一気に覚醒した。
だってあの一松の、滅多にそういう事を言ってこない、一松のお願いだ。
そんなの恋人としては勿論、お兄ちゃんとしてだって応えてやりたくなるに決まってる。
寝転ぶ俺の隣でいつもと同じように膝を抱えて座っている一松はそのお願いとやらが口にし辛いのか口許を膝に埋めたり上げたりと忙しない。
別に急ぎの用事があるわけじゃないから構わないし、まずこうやって待つ事が嫌いじゃないから全然いいけど。
他の奴だといらついたりすんだけどなあ、一松だと一生懸命でかわいーなーって、そういうののほうが圧倒的に強い。
「…だけど」
「え?ごめん聞いてなかった」
ちょっとそんな一松の様子を楽しみすぎていたらしい。
声そのものが小さかったっていうのもあるけど、全然耳に入ってきてなかった。
悪気はない、強いて言うならかわいすぎるおまえが悪いんじゃん?
多分わかってくれないから言わねえけども。
「っだから、二人で過ごしたいって言ってんの!」
「…今も二人じゃね?」
「そうじゃなくて、夜は松代が用意したケーキみんなで食べたいから、それまで?なんか…それっぽい事してみたい、っていうか、」
ああ、そういう。
恋人って関係になってからも特になにかしてこなかったから全然思い浮かばなかった。
もしかして前からそういうのしたかったのか、とちょっとだけ思ったけどそれはねえな。
多分トド松あたりとそういう話題になっただけだろ。
「別にそれはいいけど、俺金ねえよ?」
誕生日、デート。
二つ合わせて思い浮かぶのはドラマやらで定番っぽい高級レストランで食事してプレゼント、みたいなあれだ。
ん?これプロポーズと混ざってるか?まあいいや。
前々から言っててくれたらワンチャンあったかもしれないけど、いきなりそんなのに対応なんてできるわけがない。
それかキスとかセックスなわけだけど、キスはともかくセックスは厳しい。
家でしようにもカラ松がいるし、ラブホに行くには金がない。
「ああ、別にドラマみたいなのとかは気にしてないから安心して」
「散歩くらいなら行けるけど」
「おれは全然それでもいいよ、この間産まれた子猫、見せたいと思ってたし」
「…その言い方だとちょっとおまえが産んだみたいだね」
となると親は俺になるわけだけど。
猫になれる一松との子が猫でもおかしくは、ない、気がする。
けど産まれるまで知らないのは大問題だな。
「ばかじゃないの。この時間なら公園にいると思うから行こ」
くっ、と俺のパーカーの裾を引っ張ってくるのは反則だと思う。
早く子猫に会いたいんだろうきらきらした目もずるい。
寝転んでた身体を起こしてはやく、と目だけで訴えてくる一松に顔を寄せてみる。
避けない、うん、かわいい。
くっつく直前で瞼が降りてきらきらが消えた。
触れた唇の弾力はいつも通りやらかくてつい堪能したくなってしまう。
かわいーお願いを叶えてあげなきゃだから勿論我慢するけどね!
「…行こ、ねこ、待ってる」
「え、待たせてんの?」
「多分…昨日、明日も来るって言ったし」
ああ、昨日帰りがちょっと遅かったんだっけ。
成程、子猫に夢中になってたわけだ。
よくわかんないけど、やっぱり子猫に触れる機会なんてなかなかないのかな。
そういえば前に一松に子猫を紹介されたのって結構前な気がする。
カラ松に留守番を任せて向った公園は平日昼間だからか人が少ない。
いるのは本当ちっちゃい、幼稚園前後のこどもを連れた母親くらいだ。
関わりがないから当たり前だけどそっちの砂場やらには目もくれず一松はまっすぐ公園の端っこのほうを目指していく。
植木の向こう側から確かにちいさく猫の鳴き声がしている。
「おまえこうゆうのどうやって見つけてくんの?」
「見つける、っていうか…なんかわかるんだよね、昔から」
「へー、猫になれっからかなあ」
向こう側にいたのは母親と思われる猫と、ちいさい猫が数匹。
ちいさいのはどれも白くてやわらかそうでふわふわだ。
姿が見えただけで隣から幸せそうなオーラが飛んでくる、確かにこれはかわいい。
「ねえ、おまえのこども、ちょっとだけ触ってもいい?」
「野良猫の子猫って触んないほうがいいんじゃなかったっけ」
「…よく覚えてたね、それ。この子は元飼い猫だから大丈夫」
問いかけと共に差し出された一松の指先を母猫が舌で舐める。
触ってもいい、ってことらしい。
真似て俺も指を向けて見たらじっと見定めるように数秒見つめられて、それからやっとざらりとした舌が触れた。
どうやら俺にも許可が下りたようだ。
初対面相手にそれで大丈夫なのか、と思ったけど多分一松がいるからだよなあ。
母猫の頭を撫でたら目が細められてねだるように頭が手の平へ押し付けられた。
それの仕草が一松そっくりというか、一松が猫にそっくりというべきか。
「おそ松兄さんって猫たらしだよね。おれそいつに懐かれるまで結構かかったのに…」
「毎日猫撫でまわしてるからかもな?」
「…ばか」
俺の猫は人型だけど、反応は似たようなものだ。
照れてるのがめちゃくちゃかわいいから撫でてやろうと思ったのにもう俺の両手は母猫に触れてしまっている。
残念だけど暫く我慢するしかなさそうだ。
母猫を満足させてからやっと、ちいさな白色へ手を伸ばす。
見た目通りやわらかくて、ふわふわでそれでいてあたたかい。
「おお…やっぱ子猫ってすげーな」
「だよね、すごいかわいい」
野良だけどまだ毛並もそんなに悪くない。
早速懐いてくれたのかするする指先に擦りついてくるのもぺろぺろと舐めてくんのもかわいい。
別に猫好き、って程じゃないおれですらこんななんだから猫好きな一松はもう、完全に骨抜きだ。
闇ゼロどころか光しかねえよ。
めっろめろじゃん、かわいいけど、ちょっとおもしろくない。
満足するまで付き合ってやるつもりだったけど、うーん、やっぱり長時間は次第に飽きてくる。
一松は全然相手してくんないし。
「一松」
「なに?」
子猫からこっちへ無防備に上げられた顔、すかさず口付けてやれば一松の動きが止まる。
手はつかってない、からセーフだよな?
「おまえが連れ出したのに俺のこと放置すんのはどうかと思うよ?」
「だからって、ここ、外、」
「人がこないからこいつらここにいんでしょ?平気だって」
それに一応、周り気にしてからやったし。
ちびっこの声は離れた遊具のあたりから動いていない。
つまり母親だっておんなじだ。
「万が一があるかもしんないじゃん…」
「だっておまえの意識こっちに向けたかったんだもん」
「…子猫に妬いたの」
「俺はなんにだって妬くけど?」
猫相手に妬かないわけねえじゃん、寧ろなに言ってんの。
だって猫は猫ってだけで一松にかわいがってもらえるんだぞ?
猫の為なら雨だろうが雪だろうが路地裏にだって通うし。
だからっていざ猫扱いされても複雑だけども。
「…行こ、おそ松兄さん」
「…もーいいの?」
子猫を最後に撫でると一松が腰をあげる。
あれだけ楽しそうにしていたのにも表情はほぼほぼいつも通りだ。
違うのは、俺に対する甘さが含まれていることくらい。
子猫に向いてたのが、全部俺に向けられてるのがわかる。
「うん、子猫の内から人に慣れすぎるのもよくないから。あとこれ以上拗ねられてもめんどくさい」
「ええ、めんどくさいって酷くない?」
「ほんとの事でしょ。ほら、はい」
「…繋いでいいんだ?外なのに」
「…人が来たら離すに決まってるでしょ、あと手も洗わないと」
捕まえた手は温かくも冷たくもない、どちらかといえば温かい寄り。
手洗い場は砂場の近くと、公園の隅のほうにあるトイレの側にある。
どちらを選ぶかなんて、考えるまでもなかった。
あんまり人が増えた気配のない公園で人目につかないよう移動するのはかんたんで、手洗い場まではなんの問題もなく手を繋いだまま到達することに成功した。
手を離すのが勿体ないと思ったけど、このままじゃ好き勝手触ることもできない。
仕方がないから繋いでいた手をほどいていつのまにか一松が蛇口を捻ってくれていたお陰で流れ始めていた水の中へ両手ともつっこむ。
「ところで兄さん、ハンカチ持ってる?」
「持ってると思う?」
「だよね……多分おれのジャージのポケットにあるから使っていいよ」
へえ、こんな、公共の場で。
いーの、俺そんな事言われたらそれなりに触っちゃうよ?
当たり前じゃん、ポケットなんてそんな、際どい位置。
適当に、でも一応できるだけ手から水気を飛ばす。
一松は自分の発言のあれさに気がついていないのか無防備に手を洗っている。
ん、まあこんなもんかな。
じゃあ、
「おっ邪魔します
「ひゃっ?!なんで両手、っどこさわって」
「だぁって右と左、どっちかおまえ言わなかったじゃん?」
背後からポケットに突っ込んだ手、左手側にそれらしい感触があったけど気がつかないフリをしてポケットの大きさが許す限りの範囲で太ももを撫で回す。
逃げたそうに身を捩りはしたものの勿論逃げられるわけはない。
「ま、って…!ひだり、に、や、あるから…ッ」
「ええ〜?どこ?なくない?」
ひだり、と言われたから右手は突っ込むだけ、いや太ももにはばっちり添えてるけど、左手をメインに動かす。
手の甲側に追いやったハンカチはそのままにゆっくりと。
身体に中心のほうへ這わせれば身体がびくりと跳ねて、際どいそこを指先で何回も往復すればそれに合わせて一松が声をもらす。
「っも、あ…っまだ…っ?」
ばっちり色が乗った涙声。
正直、めちゃくちゃ興奮した。
「…なあ一松ぅ」
「ふぁ、ちょっと…!」
「丁度よく目の前トイレなんだけど、どーする?」
もう熱くなってきちゃってるの、おにーちゃん知ってるよ。
耐えられるの?耐えられないよなあ。
だっておまえ、えろい事大好きだもん。
耳の裏に唇をくっつけて形をなぞるように舐めあげて、いちまつ、と名前を呼ぶ。
それで充分、だもんな?
「…っは、おそ松兄さん、はやく、」
「ん、行こ」
掴んだ一松の手は濡れていて冷たい筈なのに、熱かった。

「信じられない…なんでハンカチは持ってないのにゴムとローションのパックは持ってんの…」
「いや〜何があるかわかんねえじゃん?」
実際今、役に立ったしね!
公園のトイレで美味しく一松をいただいて、また緩く手を繋ぎながら人気の少ない道を並んで歩く。
人が来たら離す、ならそうなるのは必然だ。
誕生日で運気でも上昇してんのか驚くくらい人に会わない。
あてもなくふらふらと指を絡めて歩くのは案外悪くない、誕生日デートらしいかといえばそうでもないけど。
「あ、コンビニ寄ってい?」
「うん」
たまたま目に入ったとこは家からそう遠くないとこで、ふらふらしてたつもりが自然と家方面へと帰って来てしまっていたらしい。
帰巣本能ってやつか。
俺と一松はニートしてるくらいだから家大好きだし。
さすがにコンビニの中で手を繋いでいるわけにはいかないので絡めていた指をほどく。
時間はめちゃくちゃあるから目的以外の棚を冷やかしで物色して、最後に辿り着いたのはケーキやらなにやらが並んでいる所だった。
誕生日、ケーキ。
いや、まあ松代が用意してるから買う必要はないってわかってるんだけど。
「…買う?」
「…買っちゃう?」
二個一セットのチョコレートケーキ。
これなら松代のケーキと味が被ることはないだろう、松代が気まぐれを発揮しなければ。
紫色に包まれた紫色がパックを手に取る。
あ、値段見てねえや。
まあ割り勘すればいっか。
俺の目当てのものはレジの奥で並んでいるからこれで売り場にはもう用はない。
二人で向かったレジ、案の定ケーキと煙草代を払う余裕なんて俺の財布には存在していなかった。

一松がケーキ代を半分出してくれたお陰でケーキも煙草も手に入った。
それが入ったビニール袋を手に、家の屋根へ登る。
まだ一応春だっていうのに太陽の陽射しは強い。
それでも風があるから全然ましだ。
これならそれなりの時間ここにいても平気そう。
二人腰を落ち着けたとこでかさかさとビニール袋からケーキを取り出した。
んん、フォークはいらないか。
下の紙ごと持てば素手でいける。
「ねえ下からの音どうにかならないの」
「突っ込むのもめんどくさい」
階下、こども部屋からは延々とカラ松が弾き出したギターの音が聞こえてくる。
さすがにおれ等が帰ってきた時にはやめてたのに。
もしかして雰囲気作りでもしてるつもりなんだろうか。
「ほっとけば?」
「いや…無理でしょ…」
「じゃあそんなの気にできなくなるくらいとろとろにしたげよーか」
れ、と舌を出してみたらあいた口にフォークで掬われたチョコレートケーキが突っ込まれた。
慣れないケーキの甘ったるさが口いっぱいに広がっていく。
大きすぎない、食べやすいサイズにしてくれるんだから優しいよなあ。
意図的だろう、クリームとスポンジだけのそれを食べきって自分のケーキを持ち直す。
長方形三角形、だっけ、その細い方を一松方へと向ける。
貰ったら返さないと、な?
「はい、あーん」
「……あー、ん、っむ!」
開かれた唇も、少し覗いた舌も全部が全部えろくって。
つい、ケーキの先が咥えられたタイミングで口へとケーキを少し押し付けた。
一松の想定していたよりも多いだろうケーキはなんとか食べきれたみたいだけど口のまわりはチョコクリームでべったべただ。
「…さいあく」
「ちゃんと綺麗にしてやるから許してよ」
顎に親指と人差し指を添えても手は払い除けられなかった。
どうやって綺麗にされるか察してるくせに。
コンビニのビニール袋の中にお手拭きは入れられていない。
ハンカチを持ち歩いてないのにティッシュがポケットに入ってるわけもない。
となると、俺がそのクリーム達をどうにかする方法は一つだけだ。
顔を寄せて肌に乗るクリームを掬い上げるように舌を動して、甘さを自分の体内へと取り入れていく。
口の右側も左側も、少し溶けて溶けたクリームが滑る顎も。
なにからなにまで、全部。
最後に唇にくっついてたのを舐めとればまあ一応元通りだ。
「はい、綺麗になったんじゃね?」
「べたべたしてるのは変わらないんだけど…」
「それは後でどーにかして」
ケーキを一気に半分くらい口へと運ぶ。
うん、やっぱあっめえ。
そこまで好きな味、ってわけじゃないのに美味く感じるのはなんでだろ。
滅多に食わねえからかな。
どちらかといえば雰囲気というか、わりとノリだったからたいして味わう事もなく食べきってしまう。
すぐに袋から煙草を取り出したら一松が顔をしかめた。
「甘さの次に苦味とか…」
「俺はこっちのほうが好き〜」
煙草とかビールとか、そっちのほうが向いてる。
ポケットに突っ込んである安いライターと、いつしかに煙草を買った時についてきた携帯灰皿。
ここら辺はいつでも、それこそ銭湯に行くときですら持ってる。
煙草へ火をつけて毒を身体に取り込んで息を吐けば白い煙が流れていった。
あ、一松風上にいんじゃん、らっきー。
「この後さあ、早いけど銭湯いかね?」
「…いーよ、そしたらあいつらが銭湯行ってる時間二人きりだね」
「確かに!」
もそもそとケーキを食べ続ける一松の額にてを伸ばして髪をちょっとだけかきあげてみる。
うっすら汗かいてる、かわい。
日差しあっついもんな、俺も腕捲りしたくらいじゃちょっとしんどい。
さっき運動もした名残も完全には片付けきれてないしね。
「なに」
「うん?銭湯一番風呂だったりしないかなって」
「それは多分無理でしょ、ここらの爺さんすげー元気だよ」
「そっかぁ」
まあなんでもいいけどね。
そんなことより今すごいちゅーしたいんだけど、怒るかな。
でもさっき舐めた時は怒られなかったしいけるか?
なんて、一松がケーキを食べ終わるのを見守っていたら目があった。
じっと紫色ががった黒が俺を捉えて、伸びてきた手が俺の胸ぐらを掴む。
ええ、そういう、おまえからしてくれるの。
引き寄せられた上半身、唇は一松のそれにしっかり受け止められた。
「…めずらしーね?」
「…誕生日プレゼント、みたいな」
「誕生日とかそうゆう記念日にしかしてくんないの?お兄ちゃんそれはやだな〜」
「そういうのは誕生日プレゼント渡してから言ってくれない?」
「…知っての通り所持金二桁ですけど」
「…おれがあげたの、お金かかるものじゃなかったでしょ」
それはそうだけど。
おまえからはレアだけど俺からはしょっちゅうじゃん、レアさなんて一欠片もない。
それともなに、それで、いつも通りのでいいの。
とんでもなく安上がりだし、とんでもなくかわいい。
「ほんとにそれでいいの」
「それがいいの」
「っも〜!いーよ、あいつらが銭湯行ってる時にあげる」
「じゃあ早く、下降りよ 」
手早くビニール袋にケーキのパッケージやらフォークやらを突っ込むと一松が立ち上がった。
でも先に降りていったりはしない、俺が立つのを待ってくれてる。
だからさ、そーゆうとこがさあ。
ちょっと長さの残る煙草を携帯灰皿に押し付けて、逆行になってる一松を見上げた。
顔見にくいけど、わかるよ。
そわそわしてんでしょ、知ってる。
手を差し出せば当たり前のように引っ張ってくれて、予想通りの表情をしてる一松の顔が見やすくなった。
「はー…おまえほんと、かわいーね」
つい抱き寄せちゃったのも、仕方がないと思うんだよね!
下からはまだよくわからないギターの音が聞こえていた。




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