部屋に入って最初に目に入ったのは、窓際に座る赤だった。
赤。黒。服の色で言えば浅黄色。
割合としては赤よりも他の色のほうが大きいのに、それでも脳は赤と判断した。
それはきっと赤といえば真っ先に浮かぶ長男と同じ顔をしていたからだ。
けど、ちがう。これは別物だ。
散々見てきた兄には尻尾だって角だって生えていない。
まるであの尻尾は、
「あ、もしかして家主?どーもお邪魔してまーっす」
軽いふざけた口調も声も全部同じ。
ただ、表情の作り方に兄よりも歪さを感じるくらいで。
ああ、おそ松兄さんにはあんな尖った歯もないな。
あったらおれの身体は穴だらけになってる。
「…あんた、誰」
「誰、って言われると困るんだよなあ、一応ほいほい名乗るわけにはいかねえし。まあ、そうだな」
一瞬だった。
気が付いた時には背中は畳に叩きつけられていて、目の前では赤い瞳がゆるく弧を描いていた。
頭上で一纏めにされた腕はびくともしない。
身体だってしっかり押さえ込まれてしまっているし、抵抗は一切できそうにない。
これは、まずい。
「悪魔ってだけじゃ、だめ?」
「駄目、とかそういう問題じゃ…そもそも悪魔って」
「そんなことよりさあ、さっきからおまえすごい美味そうに見えんだよね。なんでだろ」
あ、やばいこれ、食われる。
ぞくり、と悪寒を感じたのとほぼ同時。
自称悪魔の頭があった辺りを思い切り何かが通過した。
数cmずれていたらおれが直撃していたであろう、それ。
昔やたらと喧嘩をしていた時に散々見た、本気の蹴りだ。
「ッチ外したか」
「おそ松兄さん…」
「なああれ何松?まさかおまえに手ェ出そうとする馬鹿な弟がいると思わなかったからお兄ちゃん油断してたわー」
「いや、何松って言うか…」
そうか、覆いかぶさってる状態だから顔とか見えてないのか。
髪型とスーツだけなら兄弟の誰かだと判断してしまうのは仕方ないかもしれない。
角と尻尾を見落としてるなら、だけど。
にしてもさっきの蹴りは身内にやるもんじゃないと思う。
「…なーるほど、どうりで美味そうに見えるわけだ、この世界のオレのだったわけね」
「この世界のオレ?」
そこでやっと顔が見えて、兄さんが少し驚いた顔をした。
珍しい、滅多なことじゃ驚いたりしないのに。
同じ顔なんて見慣れてるんだから、きっとなにか感じるものがあったんだろう。
あれは、自分だって。
「…おまえ、なに?」
「オレは悪魔だよ。そして別世界のおまえでもある」
「電波、っつーわけでもないか…悪魔って言われると今の避けたのも納得」
「さっすがオレ理解がはやい」
そんな簡単に受け入れていいのか、と思わなくもないけれど。
事実目の前に悪魔はいるわけで。
手首を掴んでいた手がやけに冷たかったから、やっぱり人ではないのかもしれない。
寝転がったままでいるのもなんなので起き上がって座りなおす。
自然とおれの隣におそ松兄さんが腰を下ろして、三人、人でいいのだろうか。
とにかく三人で話す体制になった。
さっきの事があるのでさりげなく兄さんのほうに寄っておく。
「で?悪魔の俺はこんなとこになんの用があるんだよ」
「いや、暇だったから違う世界うろついてただけ。で、ふらっと」
「あー、まあわかんなくはねえけど。こいつ襲った理由にはならねえだろ」
「だってすげえ美味そうに見えるんだもん。いーじゃんちょっとくらい」
どうやらまだ諦められていなかったらしい。
とはいえさっきまでと違って今はおそ松兄さんがいるので気持ち的にだいぶ楽だ。
このひとの独占欲の強さは独占されているおれが一番よく知っている。
「ちょっともなにもない、俺は俺以外のやつにこいつ触らせんのがいやなんですぅ」
「ほら、問題ないじゃん。オレはおまえ、おまえはオレ。な?楽しく3Pしよーぜ」
いや問題しかないし。
確かに同じなのかもしれないけど、やっぱりどこか違う。
少しだけ違う、なんてまったく違うのよりもよっぽどタチが悪い。
一瞬の判断で拒否できない、ぱっと見じゃ悪魔はおそ松兄さんだ。
あれに手をのばされたら跳ね除ける間もなくきっと掴まれてしまう。
掴まれた後に違うことに気が付いても、遅い。
あとは振り回されるだけ。
特に最中だったらなにを求められても、きっと。
だからおれとしては嫌だ。
けれど、いま確実に兄さんは3Pという言葉に反応した。
おれのことを自分以外に触らせたくない、と言う以上叶うことのないそれ。
「…俺はおまえで、」
「オレはおまえ」
「だったらまあ、いっか。ちょっと興味もあるし。一松ぅ」
どろりとした甘い声に、嫌な予感しかしない。
流されるのが早すぎる、ある意味兄さんらしいけど!
目の前にいるのが別の兄弟の悪魔だったらこんなことにはならなかったのに。
最悪だ、もうおれに残された道はひとつだけ。
右手をおそ松兄さんに、左手をいつのまにか移動してきた悪魔に掴まれる。
逃げ道なんてとうにない、きっと、ふたりが揃ってしまったときから。
「「おれ達と、遊びましょー?」」
両耳に口を寄せてそう、囁かれてしまえば、もう。
「うん…」
あとは、墜ちるだけだ。


両耳の穴に舌がつっこまれて出し入れされる。
おそ松兄さんとしか寝たことがないんだから当たり前だけどこんなの経験したことがない。
揃わない水音に頭がどうにかなりそうだ。
息を吐く音もずるい、僅かに混ざる声は左右どちらも紛れもなくおそ松兄さんのもので反応せずにはいられない。
「あは、かっわいー、耳弱えーんだ?」
「舌つっこまれるのも、舐められるのも噛まれるのもすきだもんな?あと、囁かれんのも」
「ひぅ、あ!」
低い声に身体が跳ねた。
それはその声に弱いと認めてしまうようなもの。
しっかり悪魔はそれを身につけて、わざとらしく囁きだす。
左右で違う言葉を囁かれて、弄られて。
おかしく、なりそう。
涙はぽろぽろ止まらないし、息だってどんどん乱れてく一方だ。
「ほら、一松」
「いっちゃえば?」
「ひ、っあ、んんッ!」
両側で囁かれて、あっけなく吐精してまった。
耳だけしか攻められてないのに。
倦怠感に身を任せておそ松兄さんへ凭れ掛かる。
混乱しかけている頭が、慣れ親しんだ匂いで多少落ち着いてきた。
非日常すぎるけれど、紛れもなく片方はおそ松兄さんだ。
「一松、口開けて」
声に従って口を開ければすぐに唇が重なった。
兄さんとのキスは単純にきもちがいい。
もっと、と強請るように身を寄せる。
きもちよすぎて、兄さんしか見えてなくて一瞬悪魔の存在が飛んだ。
「っふ?!」
後ろからパーカーの中に冷たい手が入りこんできて、身体中を撫でていく。
わざとさけているんだろう、強い刺激がくるわけじゃない、けれど確実に煽られる。
刺激が、たりない。
もっとよくして欲しい。
いつのまにかおそ松兄さんの手も入りこんで、こっちは背中を撫で始めた。
手があつい。
同じはずなのに同じじゃない。悪魔とは違う。
「んッ…これ、やだ…」
「物足りない?」
「全然、足りない…」
「しょーがないなー、一松は。じゃ乳首は触ってもらいな?俺はこっち触るから、体勢変えような」
背中を悪魔に預けて足を兄さんのほうへ投げ出す形にされた。
すぐにジャージと下着が脱がされて、下半身が二人分の視線に晒される。
隠そうにも当たり前のように足は広げたままの状態で固定されているしどうしようもない。
「どうせなら上も脱いじゃえばあ?」
冷たい手に促されるままパーカーを脱いでいく。
パーカーにジーンズの兄さんと、見覚えのあるスーツを身に着けている悪魔。
二人ともどこも乱れていない格好の間に、全裸でしかも一回下着のなかでいかされたせいで下半身がどろどろなおれ。
これは、ひどい。
でもきっとこれからもっとひどくなる。
少しだけ先の尖った黒い爪の乗る指が乳首に触れたのと、とろとろしたローションに塗れた指があなに触れたのはほぼ同時。
「なんだもうたってるじゃん、もしかして期待してるー?」
潰されて、弾かれて。
おそ松兄さんの指と違って刺激がいつもと違う。
それに耐えてるうちになかに兄さんの指がはいりこんできた。
ローションにまみれた指が奥へ奥へとすすんで、内側を拡げていく感覚。
みっつの手に振り回されてる。
ひとつひとつの動きに喘いでいるけど、やっぱり断然おそ松兄さんからの刺激がやばい。
的確にいいとこに触れられて腰が跳ねる。
「あー、なんかしっくりこねえなー…。なあどうやって弄られるのがいいの?」
「っふ、あ、そんなこと言われても、」
「おまえが下手なんじゃん?ってなんか自分のこと下手とか言うのやだな…片方貸して」
つっこまれてないほうの指が、乳首へと触れた。
人差し指がそこを撫でて親指が添えられる、その動きから目が離せない。
強めに摘まれるだけで声が漏れる、痛いけど痛すぎない、ちょうどいい強さ。
「ほぉんと一松は痛いの好きだなー?変態
「ぅあ、ごめ、なさ…ひあッ!」
「ああ、そういうこと?痛いのが好きなわけね」
「痛ければいいってわけじゃないから加減はしろよな。怪我させたらおれおまえのことどうするかわかんねーよ?」
「やだこわぁい。まあオレはおまえだし、大丈夫だって」
力の入っていなかった指先に力が入って、乳首がひっぱられる。
力加減は絶妙で、ああくそ、やっぱりこいつもおそ松兄さんなんだな。
さっきまでの手つきよりずっと気持ちいい。
「や、あっ、ぃっ、たい、ア!」
「まったまたぁ、さっきより全然声に色ノってんじゃん」
いつのまにか両方とも悪魔の指で転がされていた。
爪がいたい、けど、きもちいい。
そちらの快楽に流されていると、引き戻すかのようになかのいいところを思い切り刺激されて今度は下に意識を持っていかれる。
暫くすると今度は上。
しまいには交互どころかほぼ同時。
上下合わせての快楽に翻弄されっぱなしだ。
喘ぐのがやめられない、けど、兄さんが楽しそうだからまあいいかと思ってしまうおれも大概だと思う。
指がなかから抜かれて、熱が宛がわれた。
いつもよりはやい、この状況に浮ついているのはおれだけじゃないらしい。
「一松、挿れる」
「ん、ッあ!あっく、うん…ッ!」
悪魔の身体に背を預けながら、兄さんを受け入れていく。
その間ずっと顎を固定されて顔は悪魔に見られたままだった。
だった、というか、今も見られている。
おそ松兄さん以外に見せたくなんかないのに、逸らすことは許されない。
視線は外すことだってできるし、目を閉じてしまうことはできる。
なのに赤い瞳から目がはなせなかった。
「…はは、えっろいかお」
「は、あ…や、あッ」
「俺以外に見られんの、どんな気持ち?イイとか言ったら怒るぞ」
「よくない、けど、いい…っはう!」
「なにそれ、どういうこと?」
「あっ、だって、ちがうけど、んっ、同じ、顔、だから、」
頭がはっきり区別できないんだとおもう。
通常の状態でも怪しいのに、こんな快楽漬けになっている最中じゃ余計にむりだ。
さっき散々上も下もいじられて、今はこうしておそ松兄さんに揺さぶられて。
正常な思考回路なんてとっくにない。
ああでも、どうせならやっぱりおそ松兄さんの顔が見たいな。
そう思っていたら冷たい手と顎の隙間に指が入ってきて手が引き剥がされた。
そのまま顎の角度を変えられて、唇が重なる。
折られた身体はちょっと痛いし、奥を突かれた感覚はどうしようもなく気持ちがいい。
咥内もなかもあつい、畳に落としていた手を持ち上げて、近づいた身体に抱きついた。
悪魔と少し距離があいたことにより背中は寒くなったけどそんなことはどうでもいい。
どうせ服越しに感じる体温は低かった。
対面座位の深さは、きらいじゃない。
「は、あん、ん、っふ」
「えー、ちょっとオレだけ仲間外れ?それはひどくない?」
剥き出しの背中に舌が触れる。
何度か背を這うと、ちゅ、と音を立てて吸い付かれた。
一度や二度じゃない、何回も。
吸われる度になかをしめてしまっているせいで兄さんも気が付いている。
だって、少し機嫌がわるくなった。
おそ松兄さん以外に触れられたことはない、だから兄さん以外のキスマークなんて当然付けられたことなんてないのだ。
それに対するはじめての反応が、たまらない。
ぞくぞくする。
「…なに、キスマーク付けられて喜んでんの?」
ぐ、と力を込めて奥をおされて声にならない音が喉からもれた。
ああ、こんな兄さんが見れただけで3Pを受け入れた意味があったかもしれない。
余裕が少しだけなくなってるのがたのしくておもしろくて、つい口角があがった。
「は、おそ松兄さん、かわいーね?っあん!や、あ、あ!」
「かわいーとか、どの口が言うんだか…おまえには負ける、よっ」
「〜〜ッ、あ!ぁ、あっ、あ」
「一回ドライでいっとく?そしたらそんな余裕なんてなくなるよな?」
「まっ、ひっあ!あぅ、あ、」
あっやばい、本気だ。
奥のいいところを重点的に突かれて背が仰け反る。
できたらドライでいくのは避けたい、兄さんの前ではとっくに曝したことのある醜態だから今更かもしれないけど、今はふたりきりじゃないのだ。
「んん、あ、まって、」
「えー?どうしよっか、な」
「やだ、あっおそ松にいさ、以外に、見られたく、なあッ!」
「…ほら、やっぱおまえのほうがかわいいよ。思い切り俺に抱きついてればいいじゃんそしたら見えねーよ。ついでにパーカー噛んでれば声も聞かせないで済む」
言葉のままに抱きついて、パーカーに歯を立てる。
多少息苦しさはあるけれど、どうにかなりそうだ。
「ええ、なにまたオレ除け者?」
「はは、見たら殺す
「こっわ…悪魔に対して殺すとか言っちゃうあたりさすがオレ。そんでほんとに殺れそうだから我ながらすげーわ…」
話してる間もぐちぐちといいところを擦るのはやめてくれない。
腰をゆるく撫でられるだけで、やばい。
宣言通りの腰の動きは容赦がないのに合わさってほんともう、無理。
こんな簡単に、と思う反面おれの身体を知り尽くしているんだから当たり前だとも思う。
一際強くしこりを潰されながら奥へねじ込まれる強烈な快感に後ろでいくことに慣れ切ってる身体が耐えられるわけもなかった。
「っン、んん~~~ッ!」
「あっは、相変わらずいい反応すんね…ッ」
奥のほうで吐き出された精液の感触と熱さ、いつものセックスならそれの余韻に浸る余裕があるのに早々に抜かれたせいでふわふわしていた意識が引き戻される。
自然とおそ松兄さんの身体に絡めていた足が解かれてまた体勢が変えられた。
今日はやたらと変わるな、相手が一人じゃないから仕方がないのかもしれないけど。
おそ松兄さんにしがみ付いたまま、腰だけが高く上げられ尻たぶが両手で左右に開かれる。
つまり、ついいさっきまでおそ松兄さんのを咥えてたそこが悪魔の眼前に晒されたというわけで。
え、さすがにこれは恥ずかしい。
「すげーね、一回じゃ足んないってひくついてる」
「や、待ってこれめちゃくちゃ恥ずかし、」
「すぐ突っ込まれるから見られるのなんて一瞬だって。ほら、次はおまえの番。満足はさせられないかもだけど気持ちよくはしてやってな?」
「いや満足だってさせてやるけど?!」
宛がわれた熱は手と違って、おそ松兄さんのものと同じだった。

「あっ、あ、あッ、んん、あ」
前におそ松兄さんがいるのに、後ろから突かれている。
動きは全然違うけれどなかにあるのは同じもので、頭がぐるぐるしてきた。
兄さんじゃないひとに抱かれてるのを兄さんに見られてる、おれはどういう反応をするのが正解なんだろう。
後ろにいるのが完全に兄さんとは違うならやめろと言えるけど後ろにいるのは別の世界のおそ松兄さんで。
一応おれは兄さんに抱かれていることになるわけだ。
「どお、気持ちいい?」
「ん、っあ、わか、んな、い」
「ええー?そんだけあんあん喘いでんだからいいんじゃないの?」
いいけどよくない。
さっきと感覚が似てる。
兄さんと悪魔、なにかが違う。
さっきはもっと気持ちよかった。
正面から顎を掬われて、おそ松兄さんと目が合うように固定される。
おれの好きな、あかいろ。
「こうやって、気持ちよさそうなおまえの事余裕持って見れんのはいいなあ…。ん、いつもの俺の時よりどろっどろじゃない。俺とこいつは同じだけどやっぱり違うってことだ、なあ一松」
額にかかっていた髪が払われて、直接額に兄さんの唇が触れる。
たったそれだけのことが気持ちいい。
目を細めれば、それに応えるように撫でられて。
うん、やっぱり気持ちいい。
「なぁるほど、確かに違うみたいだな。いますごい締まったわ」
「っ?!や、だって、そんなの」
「顔真っ赤だぞ一松、ほんとにおまえは俺のことがすきだなー」
顔中にキスを降らされて、赤い顔が更に熱くなっていく。
一応人前なのでかなり恥ずかしい、けどおそ松兄さんが楽しそうで咎めることはできない。
しかもおれ自身嫌じゃないときた。
暫くされるがままになっていると、腰が改めて掴まれる。
少しだけ爪が肌に食い込んで痛いのにそれすらもいい。
「いちゃいちゃしてるとこ悪いけど、いま突っ込んでんのはオレだから。オレがいくまで付き合ってよ、イチマツくん
「ひっあ、あッああ!あ、や」
がつがつと突かれて、目の前の赤いパーカーを握り締める。
痛くはないし、きもちいいとは思う。
ただなんとなくこわい、これが本当におそ松兄さんならなんとも思わないどころか乱暴さに興奮するんだろうけど。
「大丈夫だよ一松、こいつも俺ならおまえに本当に酷いことはできねーから」
「あー、そうかも。ふつうに可愛いもん、ぐっちゃぐちゃにしたい」
「どろどろでぐっちゃぐちゃになってる一松はさいっこーに可愛いぞー?それは見せてやんねーけどなあ」
「なにそれすげえ見たい」
頭上で交わされてる会話がとおくなる、あ、いきそう、かも。
悪魔はそれに気が付いていないのか、わざとなのか追い込むような動きにはならない。
いきたいのになかでいくには刺激が足りない。
「おそ、まつにーさんっあ、おねが、いかせて、」
「お、りょーかい」
「えっ今つっこんでんのオレなんだけど?!オレにはおねだりしてくんねーの?!」
「いいからおまえは身構えてたほうがいいぞー、いった時の締め付けまじ最高だから」
おそ松兄さんの手が前に触れてゆるく握りこまれてそのまま扱かれる。
元々限界が近かった身体がそれに耐えられるわけもなく、あっという間に吐精した。
なんだかんだ兄さんの手淫に合わせて奥へねじ込んだ悪魔が、なかで出したのを感じる。
しっかりなかで出すあたり、こいつほんと兄さんだな…。
ところで悪魔の精液っておれ達と同じなのかな、確認するのもめんどくさい。
さっきまで兄さんに揺さぶられて、そのときはドライだったせいか出したことによるだるさが強い。
ふたりを相手にするの、思ってたよりもずっとつらい。
AV女優ってすげーな…。
もうこのまま全部丸投げて寝落ちしたい。
「ほらもういいだろ、さっさと抜けよ」
「えー…余韻くらい楽しませてくれたってよくない…?」
不満を漏らしつつもおそ松兄さんに言われるがままなかから悪魔のものが抜かれて自然と身体が震える。
抜かれたものを追うように二回分の精液がそこから零れる感触に目の前のパーカーを握った。
整い切らないおれを宥めるようにおそ松兄さんの手が背中を撫でるのが熱くて心地いい。
本当にこのまま寝てもいいかな、いつも通り全部後片付けはしてくれるでしょ。
とろりとした睡魔に身を委ねてしまおうとしていたせいか後ろから冷たい手に顎を掬われるのに抵抗できなかった。
のけぞらされるような首の角度に辛さを訴える間もなく唇が重なった。
手と同じく冷たいそれは疑うまでもなく悪魔のものだ。
「へへ、奪っちゃっ、た?!」
悪魔の顔が離れていった、と思ったら今度は視界から消えた。
わかったのは、おそ松兄さんが悪魔の胸ぐらを掴んでひっぱったことくらい。
その方向を見れば、まさかの兄さんと悪魔のキスシーン。
六つ子同士でキスだのセックスだのしといて言うことじゃないかもしれないけど、これは完全に同じ顔同士だ。
環境の違いで多少の差ができたおれ達とは違う。
「んんんん?!」
おお、まさかのディープ。
おそ兄さんの舌が入り込んでいくのが見えてしまった。
テンパってるのか悪魔はされるがままだ、うるさいけど。
それが一分足らず続いて、ようやく唇が離れた。
「奪っちゃったあ」
「は、そうだよな、オレならそうやって奪い返すよな…くっそ油断した」
「もう帰ればーか!どうせおまえんとこにもこいついんだろ?!そっちの一松といちゃいちゃしとけよ!!」
「はいはい帰りますー!お邪魔しました!気が向いたらまた遊ぼーな
頭をわしゃりと撫でられたのを最後に悪魔の気配が消えて、部屋の空気がよく知ったものになった、気がする。
余計なものないいつものこども部屋。
あまりにも空気が違いすぎてさっきまでの悪魔を含んだやり取りが嘘みたいだ。
まあ、当然嘘でもなんでもないんだけど。
背を撫でてた流れのまま置かれていたおそ松兄さんの手。
その手の指が悪魔の口付けてたあたりをひっかいた。
「一松、こっちに背中向けて座って。上書きするから」
「ん、待って…」
だるい身体を起こして、胡坐をかくおそ松兄さんの足の上に座る。
相変わらず殆ど服の乱れてない兄さんのジーンズに精液が垂れただろうけれど気にするのはやめた。
だって兄さんが言い出したことだし。
背中に押し付けられた唇の感触に、悪魔の時はなかった舌の感触。
ついでにそこへと歯がたてられた。
「ふ、あ…っあいつは、歯なんてたててなか、った、けど」
「あいつとおんなじじゃ意味ねーじゃん」
「…するの?」
「するよお、いつも一回で終わってないだろ?それにこっちも上書きしないとな~?」
二人分の精液が零れるそこに指が二本突っ込まれてぐちゅりと粘着質な音と共に開かれた。
素の状態でもとろとろ零れていた精液がおそ松兄さんの手を伝って落ちていくのがわかる。
「…おれ、もう疲れてるんだけど…いつもの二回とは違うし…」
「へーきへーき、一回で済ませてやるから。早く仰向けになって足開こうな?」
「……あんたもあいつに負けず劣らず、充分悪魔なんじゃない」
「好きなくせに
肩口に顎を乗せたおそ松兄さんが笑う。
好きじゃなかったら最初っから3Pなんて受け入れてねーよ、ばか。


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