結局同じセーラー服は見つからなくて、おそ松兄さんは一人だけ少し色もデザインも違うセーラーを着て文化祭に出た。
長男もとい長女だから、という言い訳はすんなりと通ったらしい。
元々のものを駄目にした理由をどう見繕ったのかは知らないけれど、とりあえず3人でセーラーが揃っていればそれでよかったのかもしれない。
ちなみにそのセーラーは文化祭中にひっかけて駄目にしていた。
いくら非日常だからといってもはしゃぎすぎだ。
と、そんなことはどうでもいい。
今は手の中にある紙袋だ。
中には最初の、兄さんが着た状態でセックスした時のセーラーが入っている。
ちなみにコインランドリーで洗濯済み、さすがに家で洗って干す度胸はなかった。
それを押しつけられてホテルのバスルームに押し込まれたのは少し前。
別に目の前で着替えたってよかったのに。
とりあえず着ていた私服を脱ぎ捨てて、上からセーラー服を身に着けていく。
自分で着ると布のちゃちさがよくわかる。
安っぽいそれはむしろ最初からこういう目的に使うとなれば相応しい気がした。
次にスカート、これ思ってたよりも丈短いな…。
穿いてみたものの、ひらひらして落ち着かない。
紙袋の底に転がっていた丸まったふつうの黒い靴下を履いて、最後にいつも学ランの下に着てるカーディガンを羽織って完成。
着ろって言われたから着るけど、カーディガンは本当に必要あるんだろうか。
一応洗面台の鏡で見てみたものの、うん、ないな。
あの時の兄さんと違っておれはウィッグもつけてないし、メイクだってネイルだってしてない。
したいわけじゃないけど、そのままセーラー服を着た自分なのは居た堪れない。
私服を紙袋につっこんで深呼吸をひとつ。
本当ならここから出たくない。
けれどずっとここにいたら多分乱入されるし、なんならこの場ではじまる。
普段ならともかく、この格好で鏡の前でなんてまっぴらごめんだ。
意を決して部屋に戻ればおそ松兄さんはソファで寛いで煙草を吸っているところだった。
大体大画面でAVを流して遊んでるのに、珍しい。
「かわいーじゃん」
「そういうのいいから…」
「ほんとのことだしィ」
ぎゅ、と煙草を灰皿に押し付けると兄さんはベッドへ上がってベッドヘッドへ枕を立てかけてクッション代わりにした。
その周りに備え付けのローションやら本当に使うのか怪しいゴムやらを転がしていく。
おれが着替えている間に買ったらしいローターは見ないふりをした、えー、まじか…。
立てかけた枕に寄りかかった兄さんは、すぐにおれに手を伸ばした。
「準備できたからほら、おいで?」
「…なんの雑誌参考にしたの、それ」
「トド松が持ってたやつ。おいでって言われると女子はときめくって言うからさあ。どお?」
「いやおれ女子じゃねーし…」
「あー、そっか、ちょっと待って。んん゛」
わざとらしい咳払いの後に、あー、と発声練習もどきまで。
ばっちりあった目がおれにも準備を促している。
こないだと同じように、瞼をおろして、耳を澄ませた。
耳許じゃないけど聞こえるのは空調の音くらいだからきっと大丈夫だ。
距離があるからさすがに兄さんの息遣いをしっかりと拾うことはできないけれど。
「ん、よし。 おいで、いちまつ」
鼓膜を揺らしたのは多分、甘いまほうのことばだった。

甘いことばに引き寄せられるままにおそ松兄さんの膝の上に腰を下ろして、数分。
さっきからずっと兄さんに足をゆるやかに撫でられている。
なにも言葉にすることなく繰り返される行為の意味はよくわからない。
何度も何度も、膝から徐々に上がってスカートへ潜り込み太腿の半ばぐらいまで。
触れ方はその都度違って、しっかりと掌が触れていることもあれば爪先が辛うじて触れているだけのときもある。
たった、それだけ。
それなのにおれの息は僅かに跳ねはじめていた。
ぎゅっと胸元を握ってみても落ち着く気配はない。
「ね、エロ親父みたいなことするの、やめてよ」
「エロは否定しねーけど、親父はまだやだな」
「そんなにこれ、楽しいの」
「うん、すげー楽しい」
右手だけがスカートの奥へと潜り込む。
今度は太腿を撫でるだけじゃなくて、足の付け根まで。
親指がそこを強めに押して与えられた刺激に、声がもれた。
「…一松くんはさあ、なんでこれだけで勃ってんの?」
「う、あ、わかんな、」
「俺、撫でてただけだよ?」
下着を持ちあげる形を意識させるように親指が撫でていく。
もどかしい刺激に腰が揺れそうになるのをこらえた、いや、まあ揺らしたところでおそ松兄さんは楽し気に笑うだけだろうけど。
「一松、すげーえろい顔してる…」
左手が頬に触れたのに合わせて目を閉じれば唇が重なった。
啄むようなそれが深いものに変わるタイミングで首へと手をまわして、咥内の刺激と未だに続く下半身への刺激に身体を跳ねさせて。
大したことはされていないのに、それだけで気持ちよくて仕方ない。
唇が解放される頃には身体にうまく力がいれられなくてくたりと兄さんの身体へと凭れ掛かってしまう。
左腕が抱き込むように背中にまわって、掌がカーディガンとセーラーを捲って腰を撫ぜる。
ぞわぞわ甘い痺れが身体中に広がっておそ松兄さんの服を強く握った。
「一松、立てる?」
「…? ここで…?」
「うん、ここで。俺の見てる前で、パンツ脱いでよ」
「……わか、った」
力の入らない身体をなんとか起こして、兄さんに支えられながらゆっくりとその場に立ち上がる。
ふかふかとした慣れない足場はとにかく不安定で油断したらすぐに倒れてしまいそうだ。
前は兄さんとベッドヘッドがあるからまずいけど、後ろならまだまだ余裕があるし大丈夫なはず。
倒れるときは後ろになるよう努力しよう、その前に支えてくれるのだろうけど。
ぐらつきつつもスカートの中へ両手を忍ばせて、パンツのゴムへと指をかける。
少し手が震えてるのも、息が乱れ始めたのも気のせいじゃない。
だって、視線が、あつい。
「あんまり見ないでよ…」
「やだあ、見たいからこうしてんじゃん」
射貫くような視線は変わらずおれの顔へ向けられたまま。
それに視線を合わせる余裕はなくて、下を向く。
ゆっくりパンツをおろして、どうにか右足を抜いて、次いで左。
ああ、なんか、やだ、すげー恥ずかしい。
さっきまではパンツで抑えられていたからそうでもなかったけど、それがなくなったせいで薄っぺらいスカートの布地がわかりやすく持ち上がっていた。
「見られて興奮した?さっきよりもぎんぎんじゃん、えっち」
スカートごとぎゅうと握られて先端を指先がぐりぐりと刺激する。
薄っぺらいとはいえ隔たりがあるのには変わらない。
直接触られる刺激を覚えてしまっている身体にはそれじゃ全然足りない。
「も、それやだ、」
「直がいい?」
「当たり前でしょ、っあ?!ちょ、なにして」
「直のほうがいいっていうから、リクエストにお応えして?」
あろうことか兄さんはスカートの中へと頭を突っ込んだ。
生暖かい息が濡れているそこに触れたと思えばすぐに舌が舐め上げる。
今度は刺激が強すぎる、普段口でなんてあんまりしてこないから、余計に。
震える足は抱えこまれるように支えられたけれど上半身はどうしようもない。
なんとか壁に手をついたものの、ひっかかりがあるわけじゃないからあまり支えになってくれなかった。
そんなに長くない爪はかりかりと壁をひっかいただけで結局両手はいつの間にかベッドヘッドへ、自然と兄さんから離れた下半身は追いかけられて舌は変わらずおれのを舐め続ける。
それどころか腰の位置が下がったせいでぱくりと咥内へと招き入れられてしまった。
あたたかい咥内は、おれの唯一知っている人間の体内で。
じゅるじゅる音を立ててるのは絶対わざとだ、くっそ。
「あ、ッん、や」
「んん、は、これ顔見えないのつっまんねえなあ…」
「そこから見えたら、こえーよ…」
「…捲ってい?」
「っざけ、い、やだ…ッ!」
視界の拾う画が、ひどい。
捲られたスカートの下では兄さんが股間に顔を埋めてて、当然おれのは勃ってて。
そんな状態で視線が合わせられただけで、もう。
「あ、っ」
「嫌がったわりにはおっくきなったけど?」
「うるさい…ッ」
「かーわいい。ね、自分でスカート持って」
嫌なはずなのに自然と片手がスカートへと伸びていた。
右手は壁についたまま、左手では持ち上げられたスカートの裾を自分の腹に押し付けるように。
楽しそうに笑んだ兄さんの唇がおれのを再度含むのも全部見える。
やりやすくなったからかさっきよりも多少丁寧に、それでもおれが普段兄さんにしているのよりかは荒っぽいけど。
強めに裏筋を舌でなぞられて早々にいきそう、だいたい特殊すぎるシチュエーションが悪い。
「ね、も、いきそう、あ、なんだけど…ッ」
いきそう、だからなんなんだろう。
口から出してほしい?そんなことない、だって、気持ちいい。
おそ松兄さんがおれのを咥えることなんて滅多にないし。
おれ、このまま出していいのかな。
窺うように兄さんの目を見れば視線が絡んで、小さく頷かれる。
舌の動きが変わったわけでも、手の動きが達するのを促すようになったわけでもない。
なのにおれにとっては充分だった。
「ッあ!ん、あ…っは、あ」
いく時の顔を一部始終見られるのは珍しくないけど、この角度は初めてだ。
ああもう、せめて視線くらい外せばよかった。
太腿を軽くタップされたからどうにか腰を引いて、そのままベッドに腰を下ろす。
やっと落ち着けた、と思えば肩を押されて寝転ぶ形にされた。
おそ松兄さんはといえば明らかにまだ咥内におれの精液を含んだままなのがわかるような状態で。
まさかそれ、おれに飲ませるつもりじゃないよね…。
あんたのを飲むのならともかく、自分のはさすがに嫌なんだけど。
そんなおれの心配を他所に兄さんはおれの両膝を掴んで開脚させると顔を再び股間へ寄せた。
生温かい精液が緩く開かれたおそ松兄さんの口から零れ落ちておれのに垂れていく。
相変わらず、ひっどい、絵面。
「あ゛−…っまっずい」
「なら、なんで口に出していいなんて言ったの…」
「一松くんが出したそうだったから!あと俺の夢ひとつ叶ったし?」
「夢、って、なに…」
「好きな子のスカートの中に頭突っ込むのは男のロマンじゃん?」
いや、おれにそんな願望はないけど。
いつのまにか憧れになったトト子ちゃんのスカートに頭を突っ込むとか、そんなの恐れ多くて考えたこともない。
本格的に好きだと理解した誰かさんは男だからスカートなんて履かないし。
この間履いていた時も特にそういうことは思わなかった。
「じゃあ次、折角買ったしローターいこっか一松
「…拒否権」
「ないでっす」
ローションにまみれた指がなかを解していく。
とりあえずローターをいれるためだけだからかかんたんに慣らすだけですぐに抜かれていったものの気持ちいいことに変わりない。
正直物足りない、はやく欲しいとさえ思うのに次にはいってくるのがおそ松兄さんじゃないのは確定している。
そのピンク色の楕円を舌で舐めてから宛がわれて、ゆっくりとなかへと押し込まれていく。
ローションのぬめりを借りて一気に奥まで押し込まれたものの大きさのおかげかそこまで苦痛は感じない。
「へーき?余裕?」
「まあ、あんたのと比べたら余裕、かな…」
「んじゃこれは?」
かちりと軽い音が響いて、体内で小さな塊が震えはじめる。
開発されたそこはしっかりと快楽を拾うけれど声を我慢できないほどじゃない。
はじめてのローターに拍子抜けしたのもつかの間、ゆっくりとコードが引かれて塊が動いた。
「え、なに」
「だーいじょうぶ、おにーちゃんに任せなって」
「…すげーふあ、んあっ?!」
「あは、やっぱここらへんだよなあ前立腺」
「ま、ってそこ、やだ、あ」
やだって言ったところでやめてくれるとは思ってなかったけれど口に出さずにはいられない。
案の定やめるどころか再びかちかち音が響いて震えが一気に強くなる。
本当ならぬめりで奥へと戻るはずのそれはしっかりコードが掴まれてるせいで完全ではないけれど固定されてしまって常に前立腺を刺激し続けた。
「や、だあ、それ…っああ、やら、ってば…ッうあ」
「えー?ヨさそうな顔、してるけどぉ?」
く、と軽く引かれたと思えば掴んでいる力が緩められて塊が少しだけ奥へと戻っていく。
振動だけじゃない、そのしこりを撫ぜるような動きは、ずるい。
自然と締め付けてしまうせいでさらに強く塊がしこりを押して、悪循環すぎる。
「は、っあや、まって、おねが、」
「…うん、いーよ、やめたげる。ほんとに限界っぽいじゃん、そんなイイのこれ」
「…自分で試してみた、ら…?」
「お断りしまぁす。あ、一松スカート離して」
「…?」
思い切り握りしめてたせいでひどい皺になっているだろうスカートを引っ張られて股間が隠された。
とはいえしっかり勃ちあがってるせいで大分際どいことになっている。
なにが良いのかわからないけどおそ松兄さんは口許を緩めて、変態くさい笑みを浮かべた。
「やっぱさあ、スカートからローターのコードが出てるのってえろくね?内太腿もうどっろどろだし、さいこー」
「…勃つ?」
「勃つ勃つ。そうでなくても一松くんがえっちにヨがってくれたおかげでちょー元気だけど」
「ふひ、それはよかった」
「あと俺、もいっこやりたい事あんだよね」
なかに入ったローターはそのまま、ころりと転がされて俯せに。
その状態で腰を掴まれて尻だけ高くあげられた。
あんまりしないけどまるでバックでするような体制。
抜けはしなかったものの支えられていなかったリモコン部分の重さのせいでまた塊が少し手前に動いた。
スカートが捲られてそのままそこに添えられた手から伝わる体温があつい。
「これ、引っ張って抜くの楽しそうだなぁって」
「ん…ッ」
コードがひかれてじわじわと塊が外へと向かって動く。
振動していない分それがよくわかって、シーツに爪を立てた。
ゆったりと引かれ続ければ当然それは外へと姿を現す、見えないけれど、感覚でわかる。
あなの入口がローターの形に拡がって、楕円の一番太い部分が通り抜けて。
あとは細くなるだけ、あっという間にそこから塊が抜け落ちた。
「は、すっご…ローションで糸引いてるし、こっちはさみしーってひくひくしてるし…なあ、もうほしい?」
兄さんの親指の先がなかに入って、そこを拡げるように力がこめられる。
全部、ぜんぶ見られていると思うともうどうしようもなくて。
されていることなんてそれしかないのに息が上がった。
おれにできることなんて、ひとつだけだ。
「ほしい、はやく…ちょうだい」
そう浅ましくねだって、ついでに腰を揺らす。
背後でおそ松兄さんが笑った、気がした。

「ん、んんっあ、あ、あー…っ」
「ローターのおかげかな、一発目なのに、すげー絡んでくる…」
乱暴にひっくり返されて両足を抱えられて。
性急に入ってきたおそ松兄さんはやっぱりゴムなんて纏っていなかった。
仰向けになったり俯せになったり忙しい、なんて思う間もなく思いっきり突かれてシーツを握りしめる。
残念ながらおそ松兄さんの身体には届きそうにないから、仕方なく。
どうせ一発じゃ終わらないだろうしあとでしがみつかせてもらおう、動きにくいだろうけどそれでも近いほうがおれは気持ちいいと思う。
揺さぶられているのと体制のせいでセーラーの裾が捲れて腹が出ているのがわかるけどそれを直す余裕なんてない。
「あ、ッあ、ン」
「これ積極的に使ってく?おまえもヨかったみたいだし、こーやって、ほぐれるし?」
「そ、っれは、あ、やだあ…ッにーさんの、ゆびが、いっああ!」
「そーやって、すーぐかわいいこと言うんだもんなあ…っと」
出し入れされる度にぐぷぐぷ音が鳴る。
その音がただただやらしくて、卑猥で、耳からも犯されてるみたいで。
なんかもう、おかしく、なりそう。
的確にイイとこを擦られつつ突かれてるんだから当たり前かもしれないけど。
「あー、ほんっと、これ、やっべ…とりあえず一回、出してい?」
「ん、おそ松兄さんの、すきに、して…ぅあ!」
「お言葉に甘えて、そーさせてもらうわ、ッ」
しこりを一際強く押されて奥へと押し込まれて視界がちかちかした。
自分のでスカートの内側を汚してそれに合わせるようになかが収縮して兄さんを締め付けたのがわかる。
わかるけれど自分じゃどうしようもない。
おそ松兄さんが耐えるように息を呑んで、それから上半身を倒した。
折り曲げられた身体は少し痛みを訴えたけれど、それよりも強引に広げられた襟から鳴った鈍い音に意識が持っていかれる。
本格的に、もう駄目だなこれ。
露出した首と肩の境目に歯が立てられてそこにあつい息が触れた。
噛まれた痛みの後になかにあついのが広がる感覚がして、気持ちよさが身体中に気持ちよさが広がっていく。
次いで襲ってきた倦怠感をふたりで息を整えつつやりすごす。
重いけどその重さとくっついた身体のあつさが気持ちいい。
おれしか知らない、おそ松兄さんの体温。
「っふ…あー…やっぱこれ、着てもらって正解だったわ…」
「…かー、でぃがん…?」
「そ。普段から使ってるじゃん、おまえの匂いすっごいすんの。たまんない」
「…だからまたでかくなったの」
「そーいうこと」
肘をベッドについたおそ松兄さんに軽く口づけられて、その次は深く。
ああ、これ二発どころじゃないな、きっと。
辛うじて確認できたベッドヘッドの時計、まだ退室の時間には余裕がある。
「なあ、いちまつ、もーっと気持ちよくなろ?」
頬に口づけられながらの問いに答えることはしない。
代わりに腕を持ち上げて、おそ松兄さんの首に絡めた。



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