狭いハコにはすぐに音や熱気で埋め尽くされるから好きだ。
広いとこでやんのも勿論さいっこーに楽しいけど!
そんなハコも無事に満員御礼、対バンでもないから俺等のファンでいっぱいだ。
音に対する反応も、煽りに対する反応も楽しくてしょうがない。
あー、すっげー気持ちいい。
でもまぁだ、足んねーんだよね。
マイク代わりに愛用している拡声器を口許から降ろして横を見れば、すぐにカラ松と目があった。
何も言わなくてもすぐに意味なく薔薇のついたマイクスタンドの位置を直し始める。
次に反対側のチョロ松。
飽きれたように溜息をつかれたけどいつものことだから気にしない。
それでも確認するように音を出し始めたチョロ松に合わせて十四松やトド松が音を重ねていく。
うんうん、いきなりの事態にも慌てず対応してくれるおまえらがお兄ちゃんだいすきだよ!
そんな弟達の中でも一番の特別に最後に目をやればいろんな熱の入り混じった瞳と目が合った。
「いち」
外向けの呼び方と同じ、でも違う呼び方。
それに気が付いてるのは本人くらいだ、そもそも他の奴には生声は聞こえていないはず。
次の曲のイントロはもう始まっている。
音を無視して一松との距離を詰めれば沸いていた声の色が少しだけ変わった。
ほぼ毎回してるし、俺等のファンならもうとっくに見慣れてるだろーに。
カラ松が歌い出したのと俺と一松の唇がくっついたのはほぼ同時。
どっちが先に噛みついたのかもわかんないようなキス。
うなじに手をやって長く伸ばされた紫色の髪を緩く掴めばぴくりと反応がひとつ。
それに気をよくして上顎を舐めれば曲に合っていない見当違いのベースの音が小さく鳴った。
かわいい、ほんと、めちゃくちゃかわいい。
できる限り深く絡めて吸って吸われて。
こんなに人がいるのに、どんなに激しくしても俺達のたてる音は俺達にしか聞こえない。
他のやつらは俺達のことなんて気にしないで気持ちよく歌ってるし、気持ちよく弾いてるし気持ちよく叩いてる。
当然ファンはそれに気持ちよくノってるわけで。
だから俺達もキスで気持ちよくなってるだけ、ってね。
とはいえ俺はボーカルで一松はベース、ちゃんと、自分の役割も果たさないと。
キスもいいけど、そっちも格別にイイからバンドなんてしてるんだし?
ラスサビ前のイントロに入ってから唇を離して、二人で息を整える。
その間も視線はあったまま、もう互いの瞳はどろっどろで、ライブの後どうするかなんて決まり切っていた。
「なあ」
「なに」
鳴り響く音楽で、声は客にまでは届かない。
ステージ上の他の兄弟にだって届いているか怪しい。
まあ聞かせるものでもないしそれでいいかなと思う、思うけど、曲に合わせて使えるなら聞かせるのもアリだよな?
いつのまにか落ちていた帽子を被りなおした一松がわらう。
その笑みを見て俺も釣られてわらって、ああ、めちゃくちゃ楽しい。
急遽選ばれた曲はラスサビの直前で毎回適当に、曲に合ってればいいくらいノリで台詞を入れているやつだった。
だから、合っていればなにを言ったって問題はない。
拡声器を持ち上げて、一松にはもちろんファンにだって好評な声が出せるように意識する。
一松はおれ以外の奴に聞かせるなんて、あんまいい気分じゃねーかもだけど本気じゃないし、結局おまえにしか向けてないから許してよ。
一指し指に力を籠めれば慣れた感触、オンになったのがすぐにわかる。
『−…あとでセックスしよっか』
露骨すぎる内容にか、俺の声色にか今日イチの歓声が湧いた。
びりびり身体にぶつかるそれを受け止めつつも一松からは目を離さない。
音にはされなかったけれどいいよ、と確かに唇が動いた。
うん知ってる、こんなやりとりなんてなくたってライブの後はいっつもそうだもんな?
もうお互いそれが癖になってる、とにかく一回やんないと落ち着かない。
一松はしっかり立ち位置に戻って鳴っている音に自分のベースの音を混ぜ始めた。
さて俺もお仕事しますかね、ってことで!
ガン、っと邪魔な痛々しいマイクスタンドを蹴り飛ばせばスピーカーからは嫌な音が響いた。
だって俺がメインボーカルだし、仕方ねーじゃん?
カラ松のギターが咎めるように鳴らされたけど無視だ無視。
おまえがメイン張るのはまた今度ってね。
『あと数曲、もっと俺等のこと興奮させてよ』
再び湧いた声と熱にくらくらする。
狭いハコならではの勢いと質量に自然口角が上がる、とっくに笑ってたけど!
あー、やっぱライブ最高だわ!
そんないろんな音が混じる中での歌い出し、当然のように一番耳が拾っていた音は低いベースの音だった。


「お疲れー、ちょっと俺と壱抜ける!」
「またぁ?!あんたらどんだけ元気なの…」
「すげー元気 一発で戻るからすぐ打ち上げ合流する」
「下品!もー、早くしてよね!リーダーが遅すぎるとか洒落になんないんだから!」
トド松に二人分の帽子押し付けてからライブの終わった直後でばたつく裏、そんなスタッフの隙間を二人で抜けていく。
目指すは一番奥のトイレ、最近他のトイレが改装されてあっちはあんまり使われていなかったはず。
まあ使われてるとこでも構わねーけど、一松が声我慢できればいける。
すれ違うスタッフには適当だと思われない程度に挨拶をしつつ、しれっと目的地に向かう。
一応ね、そのくらいはしないと!
印象って大事だからね。
案の定空っぽだったトイレの一番奥の個室に一松を押し込んで、狭い空間に二人で入る。
鍵をしっかりしめて、はいおっけー。
「この服脱がすの面倒だから自分で下脱いで」
「ん、ちょっと待って…」
一松がベルトを外してる間にうなじにかかる髪の毛を指でどかして、白いそこに歯を立てた。
髪で人目につかないのをいいことにそこは歯形やキスマークがそれはもうたっぷり残されていて。
全部犯人は俺だけどね。
今付けた痕も昨日付けた痕も全部まとめて舐め上げて新しく痕を付けていく。
時間もないし上はこのまんまでいいかな、あっついけど。
汗だくなのは今更だ。
トイレの床とか気にせずに落とされたパンツと下着、うんうんいーこだね一松。
口で褒めるかわりに強めに噛んでやったら嬉しそうに鳴くんだもん可愛すぎ。
「んっあ、ね、はやくちょーだい…」
「待てって、慣らすとこからなんだからさあ」
「大丈夫…もうひろがってる、から…」
「は?」
慣らすためにそこへ指を這わせればちょうど指が入るくらいの穴があいたフックが飛び出していた。
ああ、確かにこれは慣らす必要ねーわな。
「…いちくんたらこんなん突っ込んでライブしてたわけ?やーらしい」
「ふ、気が付かなかったっしょ…?」
「うん、全然気が付かなかったわー」
フックのあなにつっこまれていたプラグをずるりと引き抜けば一松が耐えるような声を上げる。
あなとプラグを繋ぐ糸もえろければ、わざわざ探したんだろうローションで濡れたプラグが赤いのもえろい。
うん、えろいんだけど、えっろいんだけどさあ。
念のため適当に唾液で濡らしただけの指を二本突っ込んで広げたら当たり前のようにローションが垂れていった。
「や、だから慣らさなくても」
「わかってるんだけど、うーん」
「ひっ、あ! あ、」
「俺さあ、おまえのこと慣らすの嫌いじゃないの。むしろ楽しいっていうかね?」
「あ、っや、ァ…ッ!」
膨らみはじめた前立腺をこれでもかってくらい刺激してやれば膝ががくがく震えはじめる。
タンクに手ェついてるから崩れ落ちはしないけど、時間の問題かな。
片腕で身体支えてやってるから完全に崩れ落ちはしないだろうけど。
そんな余裕のない状態でも声を必死に殺そうとするんだから健気だよなあ、多分、トイレの前には清掃中の看板が立てられてるのに。
ステージ上でのキスはノリで済ませられるけど、さすがに裏でセックスしてんのがばれたら言い逃れができない。
ばれたらばれたでいいかな、と思わなくはない。
でもめんどうなことになるのはごめんだし、ちゃんと俺は他の兄弟にそういうことお願いしてんだよ?
それを教えてやるつもりはないけどね、こうやって我慢してる一松かっわいいし。
「なあ、なんて言えばいいかわかってるだろ?」
三本目も挿れて、二本の指で挟んだそれをもう一本でゆるく押してみたりひっかいてみたり。
一松からしたら俺がはやく突っ込めるように、自分がはやく受け入れられるように。
つまり互いがはやく気持ちよくなれるためにしたことでこんな、感謝さえされてもこんなこと言わされるなんて思ってもいなかっただろう。
「~~~ッ、ごめ、なさ…っひあ、」
「うん、いーよ。じゃあお待ちかねのお兄ちゃんをあげよーなー?」
指を抜いてすぐ、とっくに勃ちあがってた俺のを押し当てればやわくなったそこは待ってたみたいに先端を飲み込んでいく。
いくら一松が慣らしていたとはいえそれはライブの前だし、俺が今指でしたのはひろげるためというよりはヨくするためだ。
やっぱりいつもしっかり慣らすときと比べたらきつい。
それでもちゃんとはいっていくのは日頃の経験の賜物かな、ライブツアー中なんかほぼ毎日だし。
ぐ、っと根元まで押し込んでから一息。
まだまだライブの余韻で互いにあっつくて、気を緩めたらいきそうだ。
この後は打ち上げが控えてるしさくっといってもいいんだけど。
どうせそれが終わったあとはまたセックスになだれ込むのは目に見えてる。
「ほんとはじっくりたっぷり楽しみてーけど、時間ないからはやめに終わらせような?」
「ぅ、ん…ッとりあえず、一発、でしょ」
「そうそう、出さないと打ち上げどころじゃないからなー」
少しじっとしていたおかげで馴染んだそこからぎりぎりまで抜いて、一気に最奥まで穿つ。
しなった黒い背中に、ベッドだったら白い背中が剥き出しでそこに張り付く紫色がえろくていいんだけどなあとまさに昨晩の光景を思い出す。
ああ、そっか明日は移動でライブないから夜限界までやってもいいのか。
一応翌日にもライブがあるときはセーブしてたし、思いっきりやれんのは久々かもしれない。
打ち上げで酒呑んで騒ぐのもいいけどやっぱりその後こいつといちゃつくほうが楽しみだ。
「あっ、あ、おそ、まつ、ッにいさ、あ」
「ん、そーだね。もう出しちゃおっか」
衣装が汚れるとチョロ松がうるせーから一松の先端を掌で覆うようにしてからそのまま擦って、今度は耳朶に唇を寄せた。
俺と同じくらい穴だらけでピアスが邪魔だけれど、そのうちの一つを食んで軽く引っ張ってやるとなかがきゅうと締まる。
千切られるわけない、ってわかってるくせに。
しまるなかを堪能しつつ腰を動かせば身体がびくびく震えて、手の中にどろりとした精が触れた。
いつもなら処理面倒だからちゃんと抜くんだけど、今回は玩具もあるってことで。
促されるままに吐き出すことにした。
できるだけぴったりくっついて、できるだけ奥に届くように。
「うそ、なか…?」
「ヨすぎて抜けなかった、ごめーん
「ごめんじゃ、ねーよ…! このあと打ち上げなのに」
「折角だからこれ、もっかいくらい使っとく?」
「…? どれ、っ?!」
自分のを抜いたそこに指にひっかけたままだったプラグを挿しこめばなかから精液が流れ出てくることはない。
長時間はともかく、打ち上げの短時間なら大丈夫だろ。
そういう商品だから当たり前なんだろうけど軽く引っ張ってみても抜けそうにない。
「俺の精液、腹にいれたまんま打ち上げ出てよいちくん」
「…本気? 悪趣味すぎでしょ…」
「本気の本気。大丈夫だって、漏れることなんてねーっしょ? それにおまえも楽しそうな目してるよ」
一松の身体をくるりと反転させて、向かい合う形にしてからステージぶりに唇を重ねる。
ステージでしたのと違って勢いだけじゃない、しっかりと絡み合うようなキス。
本当はもう時間もないし、煽りあってる場合じゃねーんだけど。
だからっておざなりにしたくはないし?
たっぷり唾液と舌を絡ませて、最後にリップ音をひとつ。
うん、だいぶ落ち着いた。
「…動けそ?」
「…違和感はあるけど、なんとか」
「じゃそろそろ合流しますかー、これ以上遅くなるとあいつらうるさいだろ」
一松が動きやすいように先に個室から出て洗面台で手を洗う。
白濁はあっと言う間に排水溝へと落ちていった。
身なりを整えた一松と二人並んで人前に出れる程度に髪をいじったのものの結局メイクはがったがたになってるからどうしようもない。
打ち上げスッピンでもいーんじゃねえの、と思ったけれどそういうわけにもいかないからめんどくさい。
絶対トド松とか写メ上げるだろ…。
「おっけー?」
「ん、崩れてんのはライブの後だから、って押し通せるでしょ」
「確かに! セックスしてたなんて思わねえよなあ、多分」
トイレのドアを開ければやっぱりそこには清掃中の看板が置かれていて。
それを一松にばれないように足で端へと寄せた。


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