なんやかんやあって通常の一松がマフィア松な世界に飛んでそこのおそいちと遭遇するはなしです。
■区切りでいちいち(マフィア×ニート)からのおそいちいち(マフィアおそいち×ニート)※いちいち・マフィおそ×ニートいちは挿入なし⇒おそいち(マフィア)⇒おそいち(ニート)


何度も何度も、リップ音を立てて口付けられる。
知らない部屋、高級なベッド。
相手は、おそ松兄さんじゃなかった。
「くち、あけて」
離れた唇から落ちた音は、おれと同じもの。
閉じていた目を開ければ目の前にいるのはおれの着ているパーカーやよれたジャージとは違う、
高そうなベストに紫のシャツを身に着けたおれの姿。
うん、やっぱり意味がわからない。
いつもどおり昼寝に耽っていたはずなのに、目が覚めたらこの部屋にいた。
まったく状況を理解できないままいつのまにか傍にいた黒猫を撫でていても全然落ち着けなくて。
混乱しているうちに目の前の、おれ、ともう一人。
今はベッドヘッドに寄りかかって煙草を吸っているおそ松兄さんがやってきたのだった。
ドアが開いて目があった、と思ったら一瞬でベッドに押さえつけられて首元にナイフを押しつけられるとかできたらもう二度と経験したくない。
しかも相手は自分ときた。
おれあんな殺意剥き出しの目できるんだな。
そこからなんやかんやあって開放してもらってわかったのはここがおれの住む世界じゃないことと、
この世界のおれ達はマフィアだということだった。
マフィアってどういうことだよ、と思ったけどさっきの身のこなしや普通に見せられた銃は本物っぽかったので信用することにした。
しなかったところでどうしようもないし。
で、帰る方法を探すとか話していた中、ここの世界の兄さんはいい笑顔で言い放ったのだ。
「かわいいにゃんこが2匹でにゃんにゃんしてるとこ、見たいなあ」
ご丁寧に右手の親指と人差し指で作った輪っかに左手の人差し指を挿しこむジェスチャー付き。
とんでもなく下品なのに、それが下品になりすぎないで似合うからこの人はすごいと思う。
うちの兄さんと違って、ちゃんとスーツ着てるのに。
おれがおそ松兄さんに猫扱いされるのは珍しくない、ということではこの世界でも然り、だ。
言い出したら聞かないのはこちらの兄さんも同じらしい。
もう一人のおれも特に言い返したりはせず、諦めたようにため息をついただけだった。
そして、今に至る。
「ねえ、くち」
「ああ…ん、ぁ」
親指で下にひかれるままゆるめに開ければ唇と唇がまたくっついて、舌が中に入ってきた。
ゆったりと舌が咥内に触れていく。
相手が自分だからか、最初から嫌悪感はそこまでない。
どちらかといえば、こっちのおそ松兄さんとする方が問題な気がした。
それもやっぱり嫌悪感ではないけれど。
結局ヨくなって、それこそいつも通り感じてしまうんだろうなと思う。
それが、よくない。
「お兄ちゃんもっとえっちなの見たいなー?」
「チッうるせー外野だな…」
一度唇が離されて、もう一度。
今度はさっきみたいなゆるやかな舌の動きじゃなかった。
あ、これは、やばいかも。
キスはそのままに横たえられて、手首もゆるやかに抑え込まれてしまう。
きっと力は同じくらいだから、本気を出せば抵抗できる。
ただ積んできた経験が違う、多分、勝てない。
とはいえ今の所抵抗するつもりもなかった、仮におれから離れることができてもおそ松兄さんからは逃げ切れないのは嫌ってほどわかる。
そういうものだ、もうそう決まっているんだから仕方がない。
舌はおれのいいところばっかり触れていく。
自分相手なんだから難しいことじゃない。
「ん、っふ…ぁ…っんん」
「あー、いいよ、うん。えろかわって感じ」
満足気な兄さんの声もどこか遠い。
ぐらぐら、する、もっとほしい。
ねだるように舌を差し出せば舌が絡んだ。
流れてくる唾液は知らない味がする、そもそも自分の味なんてわからないし、兄さんのくらいしか知らないのだけど。
「…一松くんうまくなったね?もーだいぶとろっとろじゃん。どこで覚えてきたの」
「あんた以外にいると思ってんの?」
「まっさかぁ!俺以外とこんなキスしたことないもんな?」
「したら死んじゃうでしょ、相手が」
パーカーの裾から手が入り込んで指先が脇腹を擽って、服を捲りあげながら上へと上がっていく。
そのまま完全に捲られるのかと思えばそれは中途半端な位置で止まった。
高すぎない体温の掌がさっき擽っていた脇腹のあたりに確かめるように触れる。
その体温に冷たさも暖かさも感じない。
たぶんおれと同じ体温なんだろう、ぴったり一緒。
「…ところでこれ、どこまでやればいいの?突っ込むまで?」
「それはだぁめ。万一その一松のとこの俺もきたら殴られるもん。前戯でいちゃいちゃしてくれれば俺としては満足かな」
いちゃいちゃ、ってことはされるがままじゃなくておれからもなにかしたほうがいいんだろうか。
こっちのおれがおれのいいところを知っているんだからおれだってわかる、つまり、仕掛けることも簡単なはず。
ただ、なんといっても童貞なわけで。
どう、手を出せばいいものか。
迷ってるうちに脇腹から手が滑って胸へと触れた。
親指がそこを撫でるだけで慣らされきってる身体は快楽をひろう。
「ん、ッあ」
「…自分の下で自分が喘ぐ、って変な感じ…」
くにくにとこねながら吐かれた言葉は触られてないんだから当然余裕そうで。
同じように触ってやろうかな、と思ったけどきっちり着こまれてるベストが邪魔だった。
シャツだけなら、布越しとはいえそこそこ効果があると思うんだけど。
寧ろその中途半端さだって焦らすって意味でなら使える。
「ひ、あ、んんッ」
舌が首筋を這って、そのまま耳朶をやわく食む。
いつしかの兄さんの動きと似ている、気がした。
普段されてることをトレースしているだけなのかも、それで充分自分自身には効果覿面だし。
ある意味あと少し足りない、を補えてしまうから兄さんよりやばいかもしれない。
まだおそ松兄さんが見つけられてない丁度良さを一発で当ててしまう。
とはいえもう殆ど兄さんにもばれているとは思う、数えきれないくらい寝てきているんだから当然と言えば当然だ。
顔が寄せられたことによって身体も少し近くなったからベストへと手を伸ばす。
ボタンを外してみても、気が付いてるだろうに反応は特にない。
それをいいことにシャツ越しに触れてみればもうたっていて、同じようにこねてやれば耳元で吐かれる息があつくなった。
「ん、ぅ、やっぱ、すきなとこは一緒か…」
「手軽で、いーんじゃない…?あ、そこ、もっと」
同じ顔でお互い乳首をこねくりまわしてるってどういう状況なんだろうと思ったけれど、
そもそもがおれ達は同じ顔同士でセックスしてるんだから普段とそう変わりはない。
どちらからともなくまた唇を重ねて、何回も繰り返す。
いつのまにか下へと伸びた手は下着の中へと入り込んでいた。
やっぱり同じようにしようとしたけれどベルトを外すのもなにもかもおれのゆるいジャージとは違いすぎてうまくいかない。
高そうなのもあって雑にやるわけにもいかないし。
弁償なんて言われても困る。
「兄さん、ローションとって」
「はいはい、おまえは脱がないの?」
「考え中」
「ふうん」
いや脱げよ、と思ったけど声にするより先にあなの表面を指先が撫でて小さく息を詰めた。
乾いたそこが例え指1本でも受け入れにくいのはよく知っているはずだから、そこまで本気で心配はしていないけど。
それでもやっぱり緊張する。
「いじんのに邪魔だから脱いでくれる? 脱がせてあげてもいいけど」
「自分で脱ぐ…からあんたも脱いでよ」
「…あとでね?」
どうやらまた暫くは一方的に触れられなければいけないらしい。
あとで、あとでっていつだ。
それはおれの余裕がまだ残ってる段階なんだろうか。
さっきの言い方だとかなり怪しい気がする。
それがわかっているだろうこっちの兄さんを窺ってみたけれど、やっぱり楽しげな笑みを浮かべたままだった。
ただいつの間にか煙草は消されている。
ジャージもパンツも脱いで、どっちも汚されたら困るから無駄に広いベッドの少し離れた位置に放っておく。
汚れたところで代わりの服なんていくらでもあるか、しっかり比べなくてもなんとなく目の前のおれが同じサイズなのはわかる。
どうせされるなら、と自ら膝を立ててゆるく足を開くとここのおれは上半身をその隙間へとねじ込んできた。
そのまままたキスをされて、どうやら大分気に入っているらしい。
おれもだんだん気持ちよくなってきた、勿論誰かさんのと比べたらかわいいものなんだけど。
気持ちいいけど腰にはこないというか。
宛がわれた指はローションが温められてないのか冷たかった。
入り込んできた指は奥までいくことなく浅いところで動く。
焦らされて、る…?
動きだってゆっくりで、ああ、そうか、確かめられてるのか。
さすがにセックスの頻度まで同じではない、ましてやこっちはニートでいくらでも時間はある。
マフィアの仕事なんて全然思い浮かばないけど、まあ職は職だし、おれ達と比べたら時間の制限はあるはずだ。
きっとそこの柔らかさは同じじゃない。
「…これ、昨日もやってるでしょ」
「ん、は…さすが、よくわかってんね…」
「普段からこれだったらやばいだろ」
ある程度の柔らかさがわかったからかローションの滑りを借りて指が奥へと進んだ。
指以外に挿れる予定はないからか特に広げるわけでもなくゆるやかに内壁が指の腹で撫でられていく。
自分で自分のなかに指をいれるのとは向きが違うせいか探るようなその動きは物足りない。
近くまで触れられてるのはわかる、のに。
「ッん…も、少し、ひだり」
「あー、そっかここらへんね」
「あッ!や、いきなりさわんな、っひあ!」
「触って欲しいから場所自分で言ったんじゃないの」
そうだけど、さっきまでのゆるやかな気持ち良さとの差がありすぎる。
人差し指で容赦なくそこを押されてしまえば余裕がどんどん削られていく。
これ、こっちから触る余裕なんて、全然ないんだけど…っ!
ぎしり、とベッドの軋む音がしたすぐ後。
キスをしていた時と違って離れていた身体がおれの上へと押し付けられた。
肩越しにいたのはまあ、当たり前なんだけどおそ松兄さんで。
「ちょっとなに、邪魔しないでよ」
「そっちのおまえが、自分だけ喘がされるのは不本意だって顔してるからさあ。おまえも沢山、喘ごうな?」
「ッま、あ、っんん!」
上半身を押さえる左手はそのまま、多分右手が下に触れてる。
見えないからなんとも言えないけれど、この喘ぎ方ならきっとそう。
カチャカチャとベルトを外す音がして、音が止んだと思ったら布地がずらされたのかおれとおれの肌が触れあった。
「この体勢じゃ完全には脱げないけどいっか、脱ぎかけもえろくてお兄ちゃんすきだよ
「馬鹿なこと言ってないでやめ、あッ?!」
「いいじゃん、可愛がって貰えば?」
「っくそ、や、あっ」
腰だけは高くあげられた体制のおかげで触りやすい。
きっとこれも兄さんの計算の内なんだろうな。
しっかり硬さを持っているそこを握って扱いてやればなかから指が抜けていく。
2対1、これならおれに触れる余裕はなさそうだ。
たぽたぽと液体がボトルから落ちる音の少しあとに、肌伝いに冷たいローションがおれの肌へと辿り着いた。
手に出すとかじゃなく直接あなにかけてるらしい、多分脱ぎ掛けになってるスーツや下着はどろっどろになってるだろうな。
それはおれの知ったことじゃないから構わないけれど。
この無駄に広い部屋と無駄にでかいベッド、2人の身に着けている衣類。
おれ達と違ってしっかりがっつり稼いでいるんだろう、なんたってマフィアのボスだし?
「ッあ、つめた、いっあ!」
「一松くんも昨日したばっかだからまだちょっと緩いなー?ほら、すぐ2本入った」
「あっや、あっ、あ、」
「何指抜いてんの?あっちの一松も気持ちよくしてやんなきゃ可哀想だろ?俺の指の動き、ちゃんと真似して」
「んっ、わか、ってる」
再度入ってきた指の動きはさっきと全然違った。
挿れられる予定なんてないのにひろげられつつ、しっかりと前立腺やらそうでなくてもヨく感じるところばかり。
その動きには覚えがある。
おれのなかのいじり方が同じなのと同じように、おそ松兄さんのいじり方も同じらしい。
わざと音を立てるように混ぜてこっちの羞恥心を煽ってくるとこも一緒だ。
それが2人分、部屋に響く音はとんでもなくやらしい。
「ひゃ、や、あン、そこばっかり、やだ、あっ!」
「あ、あ、っおそまつにぃさん、あッ…!も、むり、」
「はは、もうさいっこー。なんでこれ録画できないんだろ、動画も音声も全部とっときてーのになー…」
口ぶりからもう撮影は試みた後らしい、いつのまに試したんだ。
ああ、クソニートじゃないからスマホくらい持ってるか。
連絡取れないと困るだろうしね。
なかのしこりがひっかかれて、指が引き抜かれる音がひとつ。
おれのなかにはまだ入ったままだ。
微妙に震えてるからそんな余裕がないんだろう。
とはいえこっちはこっちで散々鳴かされているからおれの余裕もそんなにあるわけじゃないけれど。
でもやっぱり、おれに触れてるのはあの人じゃないから。
削られ方が全然違う。
緩くシーツを握っていた手を持ち上げておれのパーカーに顔を埋めているこっちのおれの耳を指でなぞると緩慢な動作で顔がこちらへ向けられた。
潤んだ瞳に目許は真っ赤に染まっているし、口許は唾液で光ってて、なんかもうどうしようもない顔だなと思う。
でもこれはおれなわけで、つまりおれもこの顔を兄さんに晒しているということだ。
「…? なに」
「ひっどい顔」
「うるさい…は、こんなの耐えられるわけないでしょ」
「知ってるよそんなの…」
もしおそ松兄さんが下手でもおれはこんな風にぐずぐずにされてしまうと思う。
触れる指が兄さんのものなだけで充分気持ちがいい。
実際のところ兄さんって上手いのかな…どうでもいいか、どうせおれはおそ松兄さんしか知らないで終わるんだから。
おれのパーカーで拭われるよりましかな、と口許に指で触れたところでこっちのおれの頭が後ろに少しだけ引かれた。
少しだけ顔が歪んだから多分髪を掴まれてるんだろう。
「ちょっと、痛いんだけどなに?」
「丁度いいかなあって?俺に突っ込まれてきもちよくなってる顔、たっぷり見てもらいな。おまえ相手になら俺も妬かなくて済むし一石二鳥!」
「やだ手ぇ離…ッあ、あ、も、さいあく…っうあ、」
どう腰が進められてるかなんてわからないけど、声で想像は難しくはない。
おれもよく同じように鳴かされてる。
折角拭ったのに閉じることが許されない唇の端からは唾液が零れておれのパーカーに涙と一緒に落ちた。
「すっげー、えろいでしょ、俺の一松。多分おまえも最中はおんなじ顔してるよ、俺に抱かれてんだもん。…一松、また指止まってるだろ」
「んっ、あ、だって、あう、むり…っあ!」
「無理じゃないでしょ、おまえだけヨくなってどーすんの?」
「えっ、ちょ、まっあん!」
無理、と言っていたのになかに入ったままだった指が動きだして、また前立腺へと触れた。
隆起しているだろうそこを撫でられて、たまに押されて。
そんなことされたらもっともっと欲しくなる、もっと、奥まで、あついの。
「っふ、物足んねーってかお、してる…でもおまえは俺のじゃないから、突っ込んでやれないんだよね」
「んぅあ、あっ、こんな、…生殺し、じゃ、」
「俺のは大きさも硬さも熱さも、なんなら味も同じだと思うけどね?それでも嫌でしょ。俺としても男抱くのはこいつけって決めてるしちょっとね」
おれだって、今おれの上で喘いでるここのおれみたくめちゃくちゃにされたいのに。
オモチャでも使う?と言われたけどそれは嫌だった。
それじゃ意味がない。
だからってここの兄さんのも選択肢にあるわけじゃなくて。
「あ、あ、っ、も、おそまつにいさんのが、ほし…ッ」
「あー…それやっばい、おまえの俺に聞かせてやりたい。即突っ込んでくれるよ、多分。 ね、おまえもかわいーくねだってよ」
「は、あっ…?も、突っ込んでる、でしょ、ンあ、なに、ねだれっていうの…」
「なーに、抜いたらねだってくれんの?」
「や、だっあ!抜かないで、」
「あ、いまの声かわいーよ」
構われたりほっとかれたり、なんだこれ。
一応なかで指は動いてるけど、それもむらがすごい。
まあそれは仕方ない気もしてる、あの人になかで好き勝手されておれがまともでいられるわけない。
辛うじて動いてるだけまし、全然足りないけど。
も、ほんとおそ松兄さんがいればいいのに。
泣きそう。
と、とりあえず気持ちよさ以外の涙が流れる前に目を閉じたら唇に柔らかいものが触れた。
さっきまでの感触じゃないくて、いつもの、よく知った弾力。
「あ、やべちゅーしちゃった」
「触らないんじゃなかったの…」
「だって泣きそうな顔すんだもん。俺その顔に泣かれんのに弱いんだよねェ。ま、一回も二回も一緒だろ、目ぇつぶって。一松、ちゃんといかせてやって」
「…ん、わかった」
「もー、拗ねんなって。あとで嫌って言うまでしてやるから」
言われるままにもう一度目を閉じて待っていると唇が舐められて、開くように促される。
かぱりと開けば噛みつくように塞がれて、確かにそれはおそ松兄さんとしているいつものキスだった。
ああほら、やっぱり気持ちいい。
一応兄さんだからそこまでではないけれど、少しだけ罪悪感。
なかから抜かれた指はおれのを握って、上下に擦ったり先端を指先で弄ってみたりと的確に射精を促してくる。
自分の指じゃ物足りないのは同じだ。
なかをいじって指でいくならせめて兄さんのじゃないと無理。
だったら最初からこっちをいじったほうがはやい。
「ん、っんんん、ん゛、んッ…!」
舌を強く吸われたのと、先端を強く擦られたのは示し合わせたかのように同時だった。
手で受け止められなかった分の精液が肌におちてくる。
おれがいったのを確認してから唇が解放されて、足りない酸素を吸い込もうとしたところで再度口が塞がれた。
入り込んできた舌はおれの舌と絡むわけでもなく、丁寧に丁寧に、あますところのないように咥内を舐めあげていく。
相手が自分だからなんとなくわかってしまった。
多分、これは兄さんの名残を回収されてる。
おれだったらそうする、けど、ちょっと待ってほしい。
本当に酸素がたりない。
「あ、こら一松!やりすぎだって!」
兄さんの声がとおい。
あ、これ、おちるな。
逆らっても無駄だと脳が判断して、沈む感覚に身を委ねた。



「あ、おち、た…?」
「…一松どーすんのこれ」
「…死んだわけじゃないし、大丈夫でしょ、たぶん」
まあそうだけどさあ、んん、ちょっとやりすぎたかな。
でも2人分の一松は控えめに言っても最高だった。
本当に動画に残せないのが惜しいくらい。
いくらスマホのカメラを向けても駄目だったんだよね、やっぱりこの世界の人間じゃないからか。
「…ねえ、続き、しないの?」
「あ?するよ。俺もおまえもまだいってないじゃん」
ただ流石に気ィ失ってる一松の上ですんのはちょっとね。
ってことで。ぐったりしてる上から退くために一旦抜いたわけだけど、その時の声がどうしようもないくらい切なげで正直めちゃくちゃ腰にきた。
抜いたばっかりだっていうのに即突っ込みたくなるくらいには。
「兄さん、上、乗りたい」
「騎乗位?対面座位?背面でもいいけど」
「対面。おれが嫌って言うまでキスしてくれるんでしょ」
ああ、確かにキスすんならそれが一番やりやすいか。
体制を整えればすぐに一松が跨ってきて、挿れる前に唇が重なった。
俺からじゃなくてもいいんだ?
かわいいからなんでもいいけど。
必死な感じがほんとにかわいい、けどキスに夢中になりすぎるのはいただけない。
跨ってくる前に一松自ら脱ぎ捨ててくれたおかげでなにも覆うものがなくなった足を腰からゆるやかに撫でてやる。
たったそれだけで身体はびくびく反応するし、キスの合間の息継ぎには喘ぎ声が混じった。
大分敏感になってる、挿れただけでいっちゃうかなこれ。
「一松、とりあえず挿れさせて」
「んっあ、うん、ちょうだい」
あっちの一松のおねだりもかわいかったけどこれもいいな。
切羽詰ってる感じは負けず劣らずだ。
キスしながら挿れるか悩んで、声が聞きたかったからひとまずキスはやめておく。
宛がってからゆっくりと挿しいれてあついなかの壁を堪能する。
まだいってないせいか普段よりも絡みつきがすごい、えっろいなー、もう!
「ン、っあ、なんで、そんな焦らすみたいな…っ」
「だって、一気に挿れたらおまえいっちゃうだろー?もっとじっくり楽しもーよ」
「そ、だけど…んむ」
遮るように唇と唇をくっつけてみてももうお互いの味しかしない。
そもそもあっちの一松の味をしっかり覚えているわけでもない、散々俺の一松がキスしたあとだしね。
いちゃいちゃキスしてたのを真似るように繰り返しているものの、正直終わりが見えないなと思う。
こいつが嫌だって言うところが想像できない。
今だってもうキスに夢中でうっとりしてるのがわかる、となると。
挿ってるのを意識させて、こっちが足りなくてねだるようにすればいいわけだ。
腰の後ろで組んでいた両手を解いて、右手だけ腰へ残す。
多分、このあたりかな。
軽くとん、と叩いてやればさっきと比べものにならないくらい大きく身体が跳ねてなかがきゅうっと締まった。
あー、すっげー気持ちい。
「あっ!や、そこ、だめ、ぅあ!」
「ほぉんと一松はにゃんこだよなあ」
とんとんとリズムよく叩けばそれに合わせて高い声が鼓膜を揺らすし、やっぱりなかは俺のをやわらかくしっかりと締め付ける。
これだけでも相当気持ちがいいけれど、これじゃお互いいけないのはとっくに知っていた。
上に乗ってる一松はもうぐったり俺に凭れかかってるし動けそうにないよなあ、息も絶え絶えって感じだし。
「なあ、俺これじゃ足りないんだけど」
「は、っあ、おれだって、足んない」
「上乗ってんだから動いて欲しいなー?」
「むり、っ…?!」
「じゃあ交代な」
いいベッドだから多少乱暴でも大丈夫だろうけれど、片手は後頭部に当てつつ勢いよく押し倒した。
やっぱりベッドは一松の身体をやわらかく受け止めてくれた、だが同時に襲った快楽は逃がしてはくれない。
首に回されていた腕が滑って爪が思い切り俺の首の後ろをひっかいた、けどいいやそのくらい。
ぴりぴりした痛みだってつけたのが一松だと思えばただの興奮材料にしかならない。
あれ、そういえばあっちの一松いなくね。
落ちるような狭いベッドでもない、なんでだ。
思いつつも、結局すぐに意識は下で喘ぐ俺の一松に戻る。
恋人が可愛く喘いでんだから仕方ない、うん。
「ぅあ、は、あン、いま、すげーヨかった」
「やっぱり?締め付けすごかったからなんとなくわかってたわ。でもいかなかったじゃん、えらいえらい」
「あざーす…さっきの目じゃないくらいヨくしてよ」
「ええー?どうしよっかな」
幸いまだこっちには多少余裕がある。
絶え間なく気持ちいいと思うくらいに、でもゆったりと、いいとこには当たるように抜き差しを繰り返す。
正直めちゃくちゃがっつきたい、でも恨めし気にこっちを見てくるのとか楽しすぎて!
俺、さっきちゃーんと言ったよな?かわいくねだってみろって。
まあもう挿れちゃってるけど。
とりあえず俺が我慢できるぎりぎりまで、と思った矢先にネクタイが思い切り引っ張られた。
そのまま歯がぶつかる勢いでキスされて、あ、多分コレどっか切れたな。
仄かに血の味が混じってるのに、俺の咥内を舐める一松がかわいくて気にならない。
まぁた必死なかおしてる、かぁわい。
最後に柔く唇を吸われて唇が離れた。
一松の唇に多分俺の血であろう赤が少しだけついてて、あー、それずっりぃな。
「…ね、はやく滅茶苦茶にしてよおにいちゃん」
「…かわいいけどかわいくない、痛ぇし」
「好きなくせに」
「うん、すげー好き。でもさあ、血ぃでるほどぶつけるのはどうなの?唇に俺の血ついてるよ」
拭ってやろうかな、と手を伸ばしたらその前に唇を赤い舌が舐めて、付着していた赤を咥内へと連れていった。
わざとらしくその味を確かめるみたいに口元が動いて、ゆったりと唇が開かれる。
誰だよこいつにこんなの教えたの。俺なんだけど。
「あまい」
「…おまえ本当俺のこと煽るのうまくなったね?」
「あんた以外煽る相手いないから、どうしてもそうなるよね。ああ、こんな露骨なの外では使ってないから安心して」
「じゃあそのまま俺専用にしといてよ」
一松の口の端から零れるどちらのものとも言えない唾液を舐めて顎に軽く歯を立てた。
さて、ちゃんとおねだり出来たんだから応えてやんないとね。
顎を最後に一舐めしてから、くっつけていた上半身を離す。
くっついていたとはいえシャツが全開の一松と、ボタンひとつ開けてない俺じゃ肌はくっついていなかったけど。
うーん、汗かくし脱ぐか悩むとこだな。まいっか。
「じゃあ、たっくさん、喘いでな?」
「それはあんた次第で、っああ!」
「俺次第ねえ、それ余裕じゃない?」
俺はもうおまえの弱いとこ全部知ってるよ?
どこをどう突けばいいのかも、どこに擦りつけたらいいのかも、ぜーんぶね。
俺がそうしたんだから。
それをわかってて言うんだもんなー、ま、お兄ちゃんリクエストに応えて頑張っちゃう!
より奥まで届くように一松の片足を肩にかけて、改めて届く範囲のいちばん奥を押す。
それだけで期待に満ちた目になっちゃうえろい一松は最高だ。
腰の律動をさっきよりも早いくらいで再開すれば融けてどろどろだった瞳が瞼で隠れてしまう。
「いちまつ、目、見せてよ」
「あ、っあ、なん、で、」
「気持ちよくてたまんないって色になってるおまえの目、好きなんだよね」
元々紫がかっている黒目の紫がより濃くなる感じとか。
気が高まってるとき、それこそ人を殺した時もそうなっていることがあるけどそれと比較にならない色の濃さ。
他の兄弟もそうなる節があるけど、見てて綺麗だと思うのは一松だけなんだよなあ、さすが俺の特別。
静かに持ち上げられた瞼に合わせて涙がひとつ零れていく。
拭ってやりたい気持ちともっと泣かせたい気持ちがせめぎ合う。
「これで、いい?あ、ンん、あっ」
「そ、そうしてて。俺のこと見て」
蕩けた紫はやらしいのに甘ったるい。
俺しか知らない紫色。
こんな目で見られたら言葉で貰わなくてもめちゃくちゃ愛されてるのがわかる。
ぞくぞくする、最高。
「…そんな見ないで、よっ、うあ、」
「やぁだ、全部覚えときたいの。録画してもいいけど、生とはやっぱり違うし」
「っやだ、ほんと、あっ、見られてるの、あっつい、からッあ?!」
「…あついと、どーなんの?」
足を肩にかけたまま顔を近づけるのは俺はともかく一松は結構キツいとおもう、けれどどうしても近づけたたかった。
キツい反面奥に届いて気持ちよくもあるだろうから許してほしい、それに今の所これに文句を言われたことはない。
「とけそう、だし…それだけで腰にぞくぞくく、ッん、なにおっきくしてんの…」
「や、そんなこと言われたら興奮すんに決まってんじゃん」
「あ、あ、っいきなり、ん、ッア、は」
「は、先いっていーよ。おまえがいってる間に俺もいくようにするから」
まあつまり、一松はいきっぱなしになるんだけど。
それってつまりさっきのが目じゃないくらイイことになるんじゃねえの?
すっかり膨らんだ前立腺を重点的にいじめてやればひたすらぼろぼろと涙を溢しつつ音にならない声をもらす。
それでもさっき言った通り瞼は持ち上がったまま、融けた紫は俺を写し続けていた。
「いちまつ、ほんと、かわい…ッ」
「あ、っ、や、あ、キスすんなら、くち、にしてっんぐ」
耳の傍に唇をくっつけた途端そんなおねだりが飛んできて少しだけ笑う。
かわいいのに開いた口から差し出された舌の赤さはすげーえろくて、遠慮なく舌ごとかぶりついた。
口許は唾液でべったべただし、下半身はローションやら先走りでぐっちゃぐちゃ。
シャワー浴びないとどうしようもねえな、朝入ったのに。
音を立てて舌を吸うとなかがいい感じにしまる、これはそろそろかな。
「んあ、っは、あ、も、ッ…」
「うん、きもちーな?いいよ、そんで俺も、もっとヨくして?」
強めに揺さぶればなかがぎゅっとしまって、俺のシャツをぱたぱたと一松の精液が汚した。
昨晩散々出してるのもあって濃さも量もそうでもない。
今の締め付けをなんとか無事に耐えきれたから遠慮なくいったばかりできゅうきゅう締め付けてくるのを堪能しつつ自分がイイように腰を動かす。
とはいえ一松は俺に好き勝手されるのも無理矢理されてるっぽくていいとか言っちゃうタイプだからこれでも充分きもちよくなれちゃうんだけどね。
「はは、いちまつ、とろっとろしてる…たまんね」
「ッあ、ンあ、は、やく、っ」
顔もなかも、どっちもさいこーだよ。
元々そんなに耐えてまで続ける気はなかったから気持ちよさに身を任せて一番奥へと注ぎこむ。
夜やってんのにこれだもんなあ、猿呼ばわりされてもなんも言い返せないわ。
ぺたりと頬に一松の手が触れてまた唇を重ねる。
今日は完全にキスの日だな。
「…おそ松兄さんの、いく前後の顔すげーすき」
「あら、そーなの」
「ぎりぎりな感じと、おれでヨくなってるんだなって感じと、気ぃ抜けてる感じ」
「えー…なに、なんかそれすげー恥ずかしいんだけ、ど、っと」
「ん、ッ」
抜けた俺のを追うように白濁が零れてきて、その感触でかあなが収縮する。
あー、えっろい。
それを見ながら担いでた足をおろしてやったらそのままその足に蹴られた。
蹴られた、というか押しのけられたというか。
ガン見されるのはさすがに嫌らしい。
「一松、水いる?」
「いる」
寝室に備え付けている小型の冷蔵庫に向いつつ、ベッドのまわりを改めて確認してみる。
うん、やっぱいねーな。
無事自分のとこに帰れたならいいけど、確認のしようはない。
んん、まあ、い、っか?
取り出したボトルを開けて飲みつつベッドへと戻ればいつのまにかシャツは脱ぎ捨てられて一松は全裸になっていた。
隠す素振りもなしに堂々と胡坐、うん、嫌いじゃねーよ?
汗やら精液やらで汚れたシャツのボタンを外しつつ、ベッドに腰をおろして中身の半分になったボトルを渡してやる。
背を向ける形にしたのはなんとなくだ。
別に見てたらもう一発したくなるとかじゃない。
「ありがと。ねえ、あいついついなくなったの?」
「さあ、途中からおまえしか見てなかったからわかんねーんだよね。とりあえず押し倒した時にはもういなかったよ」
「結構すぐじゃない、それ…」
「まあ大丈夫だろ」
ネクタイを抜いたとこで首の後ろにちりっと痛みが走る。
さっきまで完全に快楽にやられてたもんな、おかげで痛いのに痛くなかった。
位置はほぼ真後ろ、とても自分じゃ見えない位置。
小さいとはいえ一応傷、なんとなくいきなり触れるのは憚られた。
「なあ俺の首の後ろどうなってる?」
「あー…これおれいつやった?」
「押し倒したときィ。結構ぴりぴりするんだけど」
ネクタイを床に落としつつそう問えば背後でぎしりと音が鳴った。
流石に加減はしたし動くことは難しくないらしい。
よかったよかった、まだ昼だっつの。
傷には触れないけれど、ぎりぎりのところを指がなぞっていく。
その位置ギリ隠れねえよなあ、まあそもそも隠すつもりもないけど。
「そこまで大きくはないけど、ちょっと深いかもね。おれ最近爪切ってなかったから」
「俺は一松のなか傷つけないために定期的に切ってんのになー」
「…あんたが背中引っかかれるの好きって言ったんでしょ。嫌ならちゃんと切る」
「うそだって、いいよそのままで」
一生残るわけでもない。
残ったとしてもこいつからのなら大歓迎、俺からも同じような傷付け返してやる。
ピアスで充分な気はするけど。
あけてやってから一松の左耳に赤色が光っていなかったことはない。
さて、できたてのそれ消毒しないとやべーかな、と少し考えたところで傷口のあたりに生暖かい空気が触れた。
次いでまだ出来たばかりと言ってもいい傷を舌が這う。
「い゛、っちょっと一松くん、いてーんだけど」
「もっと色っぽい声だしてよ」
「おまえ俺に何を求めてんの」
何が楽しいのかはわからないけれど傷を舐められたり、その付近に口付られたりは続く。
慣れてきて痛みをそこまで感じなくなってきたから構わないけど、これ煽られてんのかな。
止めずにいたら剥き出しの少し白い腕が背後から首に絡んだ。
片手はそのまま肌をすべってまだ下のほうのボタンは残ってるけど、上からみっつくらいは外して開いていたシャツのへと潜り込んでいく。
耳許で吐かれる息は甘い。
「ねえ、まだおれいやって言ってないんだけど」
「…手付きがキスねだってるだけじゃなくない?」
「あんたの首に傷をつけられるのがおれだけだと思ったら興奮してきた」
耳から離れた唇はまた傷へ触れて、口付けるだけじゃなく囲むように噛み付いてくる始末。
噛まれるのはまあいい、ただ甘噛みってレベルじゃないのはいただけない。
おまえがやっても呆れられたりすげえ目で見られるのは俺なんだっつーの。
さて、残っていた書類はなにがあったかな。
多分今日中に目を通したり、承認しなきゃまずいのはなかったはずだ。
そうじゃなかったらチョロ松が部屋から出してくれるわけがない。
残っていたものは明日本気を出せば全部終わるだろ、だって俺だし?
「…一松、わかってると思うけど俺の口そこじゃないんだよね」
「なに、その気になったの?」
「最初からその気だけど?」
ベッドに乗り上げつつ押し倒してそのまま白い胸元へと顔を寄せて歯型をひとつ。
そういえば今日俺が上半身に触るのははじめてだ。
そのせいか過剰に跳ねちゃうのとか、かわいいなほんと。
さっきされていたように付けたばかりの傷口を舐めて、まわりに口付けて。
傷の差はあれどほぼ同じになるように。
「っあ、ねえ、おれの口そこじゃないんだけど。わかってるよね?」
「はいはいごめんなー?お返ししたかったの。 ほら、あーん」
食事時に同じようにすると顔を顰めてくるくせに、こういうときばっかり言うことを聞くんだからずるい。
キスはもう今日何回目とかもう全然わからない、多分まだまだ回数は増える。
それでも唇を重ねるのも舌をくっつけることの気持ちよさも衰えない。
寧ろ、もっと。
そう思っているのは一松だって同じらしい、手が俺の頬に触れてそのまま首の後ろへと滑って濡れている傷口に触れた。
先を促されてるのがわかる、ぴりっとした痛みが走る度に深く、もっと深く。
良いように動かされてるんだろうけど、それはそれで楽しいから今回はノってやる。
ただし嫌、なんて言う余裕も与えてやらないけどね。
俺が笑めば、同じように一松もゆるく笑んだのがわかった。
あーあ、もう、やっぱりこれ、終わる未来が見えねーなあ。



やけにだるい感覚に覆われつつ、重い瞼を開けたら早速赤色が視界に入ってきた。
寝顔見られてたのかな、悪趣味。
「おそ松兄さん…?」
「そーだけど?なんかおまえ魘されてた、っていうか、喘いでたっていうか…?気持ちよさ気だったから起こさなかっけど、大丈夫?」
これは本当に心配されてるな…。
その喘いでたがどのくらいなのかわからないけど、あっちでされていたことを考えたらガチで喘いでいてもおかしくはない。
まだあれが夢だったのか、それともそうじゃなかったのかはわからない、けれど感覚としては残ってるし、パンツは冷たかった。
とりあえずこの部屋にいるのが兄さんだけでよかったと思う、流石に他の兄弟にそういう声を聞かれるのはいただけない。
関係がばれているのと、そういう所を見聞きされるのはまた別の話だ。
「ねえ、今家他に誰かいる?」
「下にチョロ松がいた気がするけど、なに、どーした?」
「声、我慢するからおねがい。おそ松兄さんの、ちょうだい」
縋るように兄さんのシャツを掴んでそう音にすれば、兄さんの空気ががらりと変わる。
スイッチが、入った。
「俺としてもさっきのおまえの喘ぎ声でやられてたから大歓迎だけど、珍しいじゃん。家に他のやついると嫌がるのに」
「…夢のせいで中途半端なんだよね、散々なか弄られたのにそれでおわりとか最悪」
「夢の中でおまえは誰に触らせたの、返答次第では声我慢させてやんなぁい」
「おれ」
ソファに乗り上げた兄さんの首へと腕をまわしてひけば顔が近くなった。
わけわかんないって顔をしてるおそ松兄さんに口付けて腰を擦り付ける。
も、ほんと限界なんだよね。
本人目の前にして耐える余裕なんてないくらい。
少し混乱しているくせにキスにはしっかり応えてくれて、ねだるように口を開けば舌に舌がくっついた。
ああ、うん、これ。
あっちの兄さんも兄さんだけれどやっぱりこっちのほうがしっくりくる。
腰に回った手がそのままジャージの中へと滑っていって、パンツごと下げられていく。
少しでも脱がせやすいように腰を浮かせるとあっという間に片足が抜かれた。
もう片方には引っ掛かってるけど、足を開くのには邪魔にならないからどうでもいい。
「…なあ、もうぐっちゃぐちゃなんだけどなんなの?おまえオナった後にわざわざ服着直して寝たの?」
指が滑る感触は明らかにローションの助けを借りているもので、そのまま指が挿しこまれた。
指がゆったり動くとそれに合わせてなかにも残っているらしいローションがくちゅりと音を立てる。
それはつまり夢じゃなかったということになるわけだけど、あんなの説明できるわけがない。
だからと言って兄さんが言ったのを肯定するのもおかしい。
後処理しないで寝落ちたなら服を着ているのは不自然だ。
もうすっかりほぐれてるだろうそこをわざとぐぷぐぷと音を立ててかき混ぜてるのは答えを求められてるからなんだろう。
途切れない快楽に頭はまわらない、こんなのどうしようもない。
「…なんか隠してる?」
「ん、あッ…!うまく、説明できない」
「ふうん…あとでちゃんと説明しろよ?」
「する、するから、はやく」
あんたは知らないだろうけど、おれはもう散々焦らされた後なんだから。
自分が思っていたよりも切羽詰っていたらしい声は兄さんを動かすには充分だったらしい。
触ってもいないのにしっかりと芯を持っていたそれが性急に宛がわれて、それまでの動きと打って変わってゆったりと入ってくる。
じわじわ圧迫されていって、それに声を漏らしつつ受け入れていく、ずっと欲しかった熱。
根元まで入ったのと同時、ぞくりと背筋に走った気持ちよさ。
すぐにやばいと思った。
兄さんの腰に足を絡めて、後ろで交差する。
あと思い切り抱きついて、なんだっけこれ、なんか恥ずかしい名前だった気がするけど思い出せない。
「なーに、これじゃおれ動けねんだけど」
「ま、って…今動かれたらいっちゃう」
「…そんなこと言われたら動きたくなっちゃうじゃん?」
しっかり絡めていたところで他へと意識を移されてしまえばどうしようもない。
腰に置かれていた手が背中の窪みをなぞりながら上へと移動していく。
敏感になってるおれにとって、それだけのことでもきつい。
「あ…ッ、ん、それ、やだ」
「一松ぅ、もお足、ちょっと緩んでるよ?」
仕上げとばかりに耳を一舐めされて、緩みかけていた力がむしろ戻った。
それは足だけじゃなくて。
おもいきり締め付けて、おそ松兄さんの形や熱をしっかりとなかで感じとってしまった。
いまそんな刺激は、よく、ない。
「ッア、ん、ふ、ぅ…っ!」
「えー…自滅って」
「やっあ!ま、ッ」
「おまえだけ気持ちよくなるのはずるくない?」
いったばかりで弛緩した身体を暴かれていくのはどうしようもないくらい気持ちよくて、必死に兄さんのパーカーを握り締める。
抱きついているおかげで拾いやすいおそ松兄さんの息遣いがどんどん余裕がなくなっていく。
おれで、気持ちよく、なっているということ。
「は、なぁに興奮してんの?きゅんきゅんしてるよ」
「おそ松、にーさん、きもちいい…?ひあッ?!」
「すっごいい、めちゃくちゃ気持ちいいよ、いちまつ」
胸元をひかれて鎖骨の辺りを強めに噛まれて、本当なら服が伸びると文句を言いたいのに口からは嬌声しか出てこない。
下にチョロ松がいるのに、なんとなくわかっていたけれど抑えることなんてできなかった。
兄さんが声を抑えるのに協力してくれないのはいつものことだ、この人はおれの喘ぎ声を好きだという。
出しているおれはなにがいいのかまったくわからないけれど、ただ、おそ松兄さんが好きだというのなら。
それだけで自然と口を開けてしまうくらいの理由になる。
「あっ、あ、も、きちゃ、う…ッ」
「さっきはこっちでいったから今度はメスイキ、ちょーどいい、じゃんっ?」
「はっ、あ!あ、ん、ッ―――!」
すっかり後ろでいくことになれてしまった身体は誘導されるがままにかんたんに達してしまう。
ちょっとしてから奥へと熱が吐き出されて、ああ、もうここホテルじゃないのに。
ふたりきりならともかく、他に兄弟がいて後処理だって面倒なのに、ほんとばか。
ばか、だと思うのに、満足気な顔がさいっこーに甘ったるく笑うから、もうどうでもいいや。
おれは動いたら精液を零してしまうけど、この人は動ける。ならどうとでもなる。
「満足した?」
「…おかげさまで。あんたは?」
「一応おっけー」
とりあえず大まかに後処理をすませて、換気のために窓という窓を開けた。
風呂に入れたわけじゃないから完全にはできていないけれど、ウェットティッシュを発見できたおかげで大体はどうにかなったはず。
窓が開いているにも関わらずベランダでふたり並んで煙草に火をつけてしまえば、行為の匂いが残ってても煙草の匂いと混ざってしまう。
それにきっと、チョロ松なら先に窓を全開にして煙草を吸っているという事実のほうに目が行くはずだ。
苦い味が肺に満ちていく、何回味わってもセックスの後の煙草は最高だと思う。
きっと隣のおそ松兄さんもそう思ってる、大抵終わったあとは二人でこうしてるし。
「でェ?なにがあったわけ」
「……多分つっこみたいところは山ほどあると思うけど、とりあえず聞いて」
起きたら違う世界らしいとこにいたことと、そこの世界にもおれ達がいたことと、職についててそれがまさかのマフィアだったこと。
あっちの兄さんに言われてあっちのおれとキスしたり、まあ性的にいちゃいちゃしたことをおおまかに。
何をどうしたか細かくは言葉にしなかったけれど、これで充分だろう。
「はー…なんかよくわかんねえけど、実際もうケツ出来上がってたしなんも言えねー…」
「あれがなきゃただの夢で済んだのにね」
「まあ慣らしたのがおまえならいいけどさあ。すげーそれ!見たかった!!あっちの俺が羨ましい!!」
「そういや録画できないのめちゃくちゃ残念がってた」
その時の顔と今の兄さんの顔がそっくりで、同一人物なんだなあ、と実感する。
そういえばおれに突っ込んでる時の顔もそっくりだった。
ってことはやっぱりおれもあっちのおれがしていたようなだらしない、ひっどい顔をこの人に晒してるんだろう。
「向こうの俺とは、なんもなかったんだ?自分といちゃついただけで」
「え」
「…一松くーん?俺、素直に吐いたほうがおまえの身のためだと思うよお」
「……キスはしっんん!」
煙草を吸っている最中の苦いばっかりの舌がねじ込まれて、味覚までおかしくなりそうだ。
遠慮のないそれは息苦しくて、空気を求めたいのにゆるく後頭部の髪の毛を掴まれているせいで叶いそうもない。
咥内が苦味で完全に覆い尽くされて、ようやっと唇が離れていった。
「…どっちのがよかった?」
「…おそまつ、にーさんのが、いい、です…」
「よくできましたー、じゃあご褒美にちゅーしたげる」
さっきと変わんねーじゃん、とは言えなかった。
言わなかった、のほうが正しいか。
キスのおかげでそこまで吸われていなかったのに短くなってしまった煙草は2本まとめて携帯灰皿の中へと消えていった。
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