賭の代償

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「初めて………?」

「ち、違うのそうじゃなくて…!」

「………だったのか?」

「………………………」



 答えられず無言で白状してしまい、もはや恥ずかしさは頂点に達した。
 沸騰した頭ではもう何も考えられなくなり、目の前で呆然とするロックに向かって喚いた。
 恥ずかしさを打ち消すように。



「そうよ!悪い!?この歳になって初めてなんて有り得ないと思ってるんでしょ!?
あんな程度のキスで動揺するなんて馬鹿だと思ってるんでしょ!?
なによ!そんなに驚く事ないじゃない!
ええそうよ!どうせ初めてよ!でもどうだっていいじゃない!
もう済んだ事なんだからいいじゃないどうだって!」



 開き直って自棄になったように全てを言い放つセリス。
 けれど、目の前のロックはセリスの言葉を聞いていたのかいないのか、途端に不機嫌を露にしてぎりっと歯噛みしながら足元の一点を睨みつけていた。



「…ふざけやがってアイツ…」
「…え…?」
「こんな事ならとっとと奪っときゃよかった…」



 先程まで自分に向けられていた筈の怒りの矛先が、突然別の相手へと変わっていて、しかもセリスへ向けた怒り以上の苛立ちをその表情に表して呟くロックに、セリスは訳もわからず首を傾げた。



「……忘れたい?」



 そんなセリスに憮然とした表情のままロックは尋ねた。



「え??そ、そりゃあ…忘れたいわよ、忘れられるものなら……」
「……じゃあさ、」



 言葉を止めて、突然真摯な眼差しを向けて見つめたと思うと、彼はそっとセリスの手を引く。




「嫌なら殴っていいから」




 言い終わるなり、ロックに顎を掬われて。










 そのままキスされてしまった。





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