LOVE OR LUST

1


 欲しいものがある。


 それはこれまで見つけたどんなきらびやかな宝も霞むような
 美しくて、儚くて、手に入れても掌から零れてすぐに消えてしまいそうな


 俺には到底手に入れられないもの。
 手に入れる権利さえ今の俺にはない。


 それでも俺は




 欲しくて欲しくて欲しくて…




 もしも手に入るのなら、この身がどうなったって構わない。
 それくらい俺は切望してる。










 ―――お前のすべてが欲しい、と。









『LOVE OR LUST』











「―――セリス」

「…っ…ん…」

「俺の事、好き?」

「…ゃ…」

「言って」

「…ック…」

「言えよ」

「───…す…き…、―――っ…!」

「……嘘つき」



 蒼い月明かりが射す部屋の一室で、揺れる二つの影。
 想いの抑制が利かず、引かれる身体を抱き寄せ、強引に繋ぎ止める。
 一方的な、虚しさを呼ぶだけの偽りの行為を俺はもうずっと続けてる。

 いくら彼女を抱いても、心が満たされることはないのに。
 満たされない心の隙間を埋めたくて、何度も何度も求めてしまう。



 …彼女を壊してしまうまで。



 いっそ本当に壊れてしまえばいい。
 そしたら、その欠片を集めてそれさえも愛してあげるのに。
 
 その瞳に映すものが俺だけになって
 俺の事だけを想い焦がれて
 俺の熱だけを求めてくれれば

 この心の翳りは消えるだろうか。






 どうして心が満たされないのか…理由はわかってる。


 彼女の心が、俺にないから。







 どんなに想っても、どんなに愛しても、想いは伝わらない。
 寧ろ想えば想う程、伝えれば伝える程、彼女の心は遠ざかっていく。

 例え身体を繋げられたとしても、例え言葉で好きだと言わせても、俺が無理矢理そうさせた事でどれも彼女の本心じゃない。
 どんなに強引な事をしたって、彼女の心だけは手に入らない。




 判ってる、だけど。




 心が伴わない彼女とこんな事をしたって、かえって虚しさを増幅させるだけだとわかっていても。
 けれど俺はこんな事で一瞬でも、刹那でも、お前を手に入れたと思い込みたくて、終わりのない悪循環を繰り返す。






 なぁ

 お前は今何を思ってる?

 こうして身体を許してくれるだけで、充分すぎる気がするけれど

 でも俺はそんなんじゃ足りない。

 見つけたいのはお前の心。

 手に入れたいのは










 ――――…お前のすべて。





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