■■■■ Candy*POP 「見て。きれいでしょう?」 そう言って、セリスはにっこり笑って手のひらに乗せたそれを自慢げに見せた。「………?」 珍しく無邪気な彼女の笑顔への驚き半分、「俺の知らない未知なる宝だったりしてな…」などと面白半分に、彼女の手の中のものを覗き込む。 彼女の瞳と同じくらいの大きさの、硝子玉のような、丸くて赤い珠。 まるで光をその中に閉じ込めたかのように、陽に透けてとてもきれいに光る。 確かにきれいだけども。 見るからにそれはたいしたお宝には見えない。 似たようなものの存在を思い起こし、「なんだ、飴玉か」 妙に期待してしまった事に少しだけ落胆しながら苦笑を返す。 「うん」と彼女は嬉しそうに頷いて、それを口に入れた。「買ったのか?それ」「ううん、ひぃなはくへはのひょ」「……は?」「ひぃなはくへはの」「……ああ、ティナにもらったのか」 口の中でモゴモゴと語られる意味不明な内容を、なんとか解読して理解する。「ロックにもあげるわ」 飴玉を右頬に落ち着かせて、ようやく理解できる言葉を話したセリスは、もう片方の手に握っていたものを差し出した。 透明のフィルムに包まれたそれは、あざやかな青の光の珠。 彼女が口に入れたものとはまた違った色だった。「俺はいいよ」「どうして?」「甘いものは苦手なんだ」「そうなの?せっかくティナがロックの分もくれたのに」 不服そうに小首を傾げ、差し出した手を引っ込めながら、彼女はまた飴玉を口の中で転がした。 カランと、乾いた音が零れる。 そんな彼女をそのままじっと見つめていると、今度は飴玉を左頬に落ち着かせてからセリスもようやく視線に気づいて、どうしたの?と言うように数回瞬きをしてこちらを見つめ返した。 その様が、まるでエサを頬に蓄えた小動物のようで。 可愛いというか間が抜けてるというか何というか。 普段あまり見ることのできない彼女のその表情に、思わず頬が緩んだ。「そんなにうまい?」「美味しいわよ。甘くて」「じゃあ…、やっぱり俺も貰う」「??いいわよ。はいどうぞ」 どっちなのよ、と少し怪訝な表情を見せながらも、セリスはもう一度手の中に籠めていた包みを差し出した。「サンキュ」 短く礼を告げて。 俺は差し出されたものを受け取る。 …フリをして、セリスの腕を掴んだ。 そのまま引き寄せて、唇を合わせる。 不意を突かれたセリスの少し開かれた唇の間を割って、侵入したその奥から絡め取ったのは、いつもとは違う、甘い甘い感触のもの。「なっ…!!」「…甘いな」 文字通り彼女から奪い盗った飴玉が甘いのか。 それとも隙を見せた彼女の甘さに対してのものか。 どちらとも取れる発言をして、してやったりと目を細めながらニヤリと笑うと、セリスは怒りと恥じらいの混じったような表情で、白い頬を真っ赤に染めて口元を覆った。「馬鹿っ…!」end.(2008.10.26)――― after word ―――バカは私です。スミマセン(笑)
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