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ようこそ"もしもの"世界の三日月堂へ!

宇宙に来いと言われたあの日から、仕事に身が入らず、小さなミスが続き、お客さんからも心配される始末。これではいけないと気合を入れなしても、空回り。一体、私はどうすればいいのだろうか。



「(…宇宙、なんてスケールでかすぎて、想像できない。…けど、あの人の側にいられるなら…それが私の幸せなら、)」



私はその手を取るべきなのだろう。だけど、そんな恋愛感情1つで動けるほど私は身軽ではない。このお店はどうするの?そもそもかぶき町のみんなとお別れできるだろうか、この私が。



「…体調悪ぃのか?」

「わっ!!びびびびっくりした!銀さん!」

「声掛けたんだけどな。ボーッとしてらしくねぇの。」

「わ、わたしだってボーッとすることくらい…」



突如目の前に現れたのは、銀さんだった。驚きのあまりついどもる。そして考えていたことがことなだけに、銀さんの目が見れず、パッと顔を背けてしまった。



「…お前さ、」

「名前!!!」



銀さんが何かを言いかけたとき、店内に土方さんが入ってきた。後ろには総悟もいて、さらにその後ろには何人かの隊員がいるのが見えた。

その瞬間、正しくは、珍しく副長ともあろう人が、焦って取り乱している表情を見て、察することができた。

あぁ、その時が来てしまったのか。



「名前っ…!!今からお前を保護する…っ!!」

「おーおー、大串くん珍しく取り乱してんじゃねーの。」

「万事屋っ?!チッ、てめぇは黙ってろ!!」



土方さんは銀さんを遮るように叫び、無理強いに私の手首を掴んだ。



「黙ってられるかよ、こっちだってな、俺もこいつに話があんだよ。…なぁ、名前。俺に、俺らに何か隠してること、あるよな?」



そういって銀さんは土方さんと逆の手首を掴んだ。二人に掴まれた両腕が熱くて痛くて、まるで手錠のようだと、場違いにも思ってしまった。



「土方さん、隊全員配置に着きやしたぜ。」

「…あぁ、行く。」

「名前、さっさと表の車に乗って下せェ。あ、旦那もそのまま一緒にどうぞ。その方が護衛がひとり増えてありがてぇや。」

「さすが総一郎くん、話が分かるねぇ〜。」



私を抜いて勝手に進められる話に割り込む余地はないが、このまま私は前に進むわけにはいかない。…進めないのだ。



「…もう、ご存知なんでしょう…みなさん、すでに…、」



絞り出すように渇いた口を動かす。自分のたったその一言で空気が張り詰めたのが分かった。



「…脅されたんだろ。」

「…え、」

「話は屯所で聞くから、とりあえず乗れ。」



身体は土方さんと総悟に押され、手はしっかりと銀さんに掴まれて、自分の意思で動くのは難しい状態だった。けど、口は動かせれる。…言わなきゃ…ちゃんと、裏切りに違いはない。けど、嘘は嫌だ。ちゃんと本当の事を…!



「脅されて、なんか…わたしは、わたし…!!」



そのとき、店の外で爆音が響いて地面が揺れた。何が起きた?!と、騒がしくなる周辺に、隣で土方さんが舌打ちをしたのが聞こえた。



「…名前、お前の幸せは本当にあいつのとこか?」

「銀さんっ」



爆音で私の言葉がかき消されたと思ったのに、銀さんにはしっかり聞こえていたようだ。そして銀さんの問いかけはしっかり核心をついていた。やっぱり、銀さんは知っていたのか。私の秘密を。



「敵襲ーっ!!敵襲ーぅ!!!」」



知っていてなお、私の手を握ってくれるのか。土方さんたちも知っていてなお、都合のいい解釈で私を護り、刀を握るというのか。



「……(そんなこの人たちを、)」



裏切ってまで私は本当に…と考えたところで、店内に何かが投げ込まれ、それが小さな爆発を起こし、一瞬にして視界が真っ白になった。



「名前」



店内が外同様に騒がしくなり、真選組の怒号が飛び交う。その中で凛として聞こえた、私を呼ぶ声。



「……ごめんなさい。」



一瞬迷った自分が嘘のように、私は当たり前だと言わんばかりに、銀さんの手を無理やり離し、そして見えない真っ白な視界を一歩進んだ。そして手を伸ばせば、ほら、



あなたがいる。



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