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ようこそ"もしもの"世界の三日月堂へ!


「名前には青でさァ。」
「これだからお子チャマは、名前には赤だろ、赤。」



今日は三日月堂定休日で久しぶりに自分の買い物をしようと町へ出た。そろそろ新しい髪留めが欲しいと思い、いつも寄るお店に向かっている道中、非番で暇をしているという総悟に出会った。これからの行き先を伝えると、俺も行きやすといって二人で歩いていると、これもまた暇そうな銀さんに出会い、なぜか三人でお店に行くことになったのだ。



「(ひとりでゆっくりこれば良かった。)」



店員さんも思わず苦笑してしまうほど、二人の騒がしい声。私は小さく溜息をつきながら、自分が可愛いと思ったものを買おうと、店内を見て回る。



「(これ、シンプルでいいな。ワンポイントが可愛いし、それにゴールドアクセあまり持ってないし…。)」

「それにすんのか?」

「え?あ、はい、まだ悩んでますけど、これ可愛いですよね。」

「どれですかィ?」

「これ。こうしてお団子にして、留める時に…ほら、大きなワンポイント。」

「…いいんじゃねーの?」

「…似合ってまさァ。」


素直に褒めてくれた二人に驚きつつも、褒めてくれたことでいいなぁと思っていたものが、途端にいいものになり、買う決心がついた。じゃあこれと、あとヘアゴムもひとつ…と思っていると、銀さんがこれは?といって、差し出してきたのはさきほど総悟と揉めていたネックレスだった。



「ネックレスは別に、欲しくは…」

「あんま持ってねーよな?」

「持ってはいますけど、特別なときくらいしか…仕事中は邪魔ですし。」



ヘアゴムやピン留めは毎日仕事のとき、髪を結ぶのに使うので、少しでもおしゃれがしたいといいものを選びに買いに来るが、ネックレスはあまりつけない。つけるとしたら、こういう休みの日にどこか行くときだが、それでもあまりデコルテラインをだす服装をしないので、つけない。というか、あまりつけることが好きではないのだと説明すると、なにを思ったのか二人は、なおさらと言って、さきほどのものを薦めてきた。



「この青の透き通った宝石がいいんでさァ、赤ってなんでィ、どこにでもあるじゃねーですかィ。」

「いーや、赤はな、似合う女と似合わねぇ女がいんだよ。こいつは似合う女。似合う女の赤はな、映えるんだよ、すげぇ色っぽく!」

「意味わかんねェでさァ。」



確かに銀さんの言い分は意味がわからない。それに比べ、総悟が選んでくれたものは、確かにいうように透明感が綺麗だ。青か…あまり自分では選ばない色だなあ。いや、赤もだけど。



「自分だったらせめてこの…イエロー…。」

「赤だ、そうだろ名前?おまえに似合う色、俺が外すと思う?」

「いや、思う?って言われても、あなた私のなんなんですか…」

「青でさァ。名前、青だろ?青っていえ。」

「脅し!?まさかの脅し!?」



私は自分ではこの色の濃い黄色が綺麗だと思うのだが、二人はなぜかこの二択だと言わんばかりにどっちだ!?と聞いてくる。え、それ本当に私に似合うと思って選んでますか?自分の選んだ色を、私に選んで欲しいわけではなくて?



「いいからつけてみろって、ほら、名前後ろ向け。つけてやっから。あ、髪もちょっとあげてろよ?」

「は?!いやいやいいですよいいです!お店の人に悪いですし!」



そういえば店員さんは構いませんよーといって、にこやかに笑った。絶対あの笑みは早く選んで早く帰れっていう意味の笑みだ。



「そりゃあいい。名前、こっちもつけてやりまさァ。それで鏡みて、自分で選びなせぇ。」

「待って、ちょ…」



待ってといったところで待ってもらえるわけもなく、銀さんは無理やり私の背後に周り、ネックレスをつけようとするので、私もしぶしぶ髪を持ち上げた。



「ん、どうよ?」

「…まあ、持っていない色ですし、」

「似合うぜ、名前。これにしとけって。な?」



いや、そんなどストレートにしかも柔らかい笑みで言われたら、照れる。照れて、そ、そうですか?なら買っちゃいましょうか、となる。ていうかなった。あれ、可笑しい。銀さん如きに可笑しい!



「待ってくだせェ、比較してねーのにそれはねーや。ほら、名前、それ外してこれつけなせェ。」

「あ、…えっと…どうですか?」

「…名前には青でさァ。すげぇ似合ってますぜ。綺麗でさァ」

「あー…あー…」



そういって総悟も嬉しそうに笑う。綺麗!?綺麗ってなにが!?あ、このアクセが!?いいやもう、なに二人とも。なんなのその笑み。そんな顔されたら、もうどっちかなんて無理だ。せっかく選んでくれたのだ、こうなったら



「あの、これ二つとも、」

「「名前。」」

「はい?」

「どっちかだ、どっち。二つもいらねーだろ?普段つけねーんだ。選べ。」

「え、」

「たまにつけるもんだからこそ、どっちかでさァ。俺の選びなせェ。」

「ちょ、」

「名前、俺のだよな?」

「名前、俺にしなせェ。」

「待って、ちょっとまって、」



じりじりと近寄ってくる二人に押され気味の私。どうしようどうしよう、選べって無理でしょ!無理だ!完全に半泣きになりながら、えっと、としどろもどろになっていると、店員さんと目があった。助けて下さい店員さん!



「…。」



頑張ってくださいと言わんばかりの笑みィィィィイィ!!!店員さんのバカ!!というかもう店内でこんなに騒いでごめんなさい!!謝るから!謝るから助けてくださいいいい!!!



「「名前?」」

「そ、その…あの、ふたつ…ふたつ買おうかな、って…」

「名前俺のこと選べねーの?」

「名前、俺より旦那を選ぶんですかィ?」

「誤解を招く言い方やめてェェェェ!?!?!」



次からは絶対町中で二人に出会っても、買い物はひとりで行こう。そうしようと心に誓ながら、このあとも二人の「どっち」攻撃は続き、最終的には痺れを切らした店員さんに「あの、そろそろ。」と声をかけられて店を追い出された。

最悪、もうあのお店には行けないです。



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