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ようこそ"もしもの"世界の三日月堂へ!

嫉妬で女を泣かせるなんざ、いい歳した男がやることじゃねーし、そもそも鬼の副長とまで言われてる俺がそんなんでどうする。…とまぁ、前に名前を泣かせてからはちゃんと反省した、はずだった。そう、はずだったのだが。



「〜っ!泣くなっ!!」

「泣きたくもなるわっ!!どう説明したら理解納得してくれますかっ!!」

「理解はしてる!!納得はしねぇ!!」

「なんで!?!?!」



仕事を早めに切り終え、名前の家に行き、夕飯をご馳走になったまではよかった。相変わらず料理の腕は確かだし、食事中も尽きることなく話が弾み、いい気分でほろ酔いになり、さぁ夜はこれからだってところで、名前が突然相談があると言い出した。



「そもそもだ、万事屋の依頼は万事屋のだ。お前は関係ねぇだろ!」

「だから!その万事屋にきた依頼が、古書捜索の依頼で、古書について詳しくない万事屋さんたちがわたしを頼ってくれたんですってば!」

「ならその依頼はいっそのこと三日月堂が受け持ったらいいだろ!」

「もちろんそれも提案しましたっ!でも、そうなると万事屋の報酬がなくなるから嫌だって、あくまでも依頼人は万事屋の客人だってみんなが!」

「んな都合のいい言い訳なんか知るかっ!お前だって店があんだろ!」

「だから!!休みの日に、ここから三つほど離れた町に行きたいっていってるんです!そこに住まわれてる方がその古書を持っているらしく、それが本物かどうか見に、」

「万事屋だけでいきゃいいだろ。」

「だから!!!」

「だからだからうるせェェェ!!」

「土方さんのばかァァァ!!!!」



ば、ばかってなんだとゴラァ!!と怒鳴ったところで、名前はまた目を潤ませて唇を噛んだ。泣くのを我慢しているときにでる癖だ。



「神楽ちゃんも新八くんもいますし…」

「ったりめーだ、二人でなんか絶対ゆるさねーぞ。」

「三人でも許してくれてないじゃないですか!!」

「…。」

「これはあくまでも仕事ですよ!たとえばですよ?!土方さんが、攘夷志士たちを捕らえるために、吉原に乗り込まなきゃいけなくなった!そんな時に!わたしが、行かないでって言ったらどうするんですかっ!!」



…行くだろうな。んなこと言ったて仕方がないだろって宥めるだろう。そう考えて、やっと自分がバカみたいなことを言っていたことに気が付いた。



「あー…悪かった。…仕事、だもんな。わかった、行ってきていい。だが、…連絡はいれろ。」

「ひ、土方さんっ!!」

「ただし、あいつの隣を歩くな。あと、指一本触れさすな。」

「…土方さんって銀さんが心底嫌いなのか、わたしのこと心底好きなのかどっちですかね。」

「どっちもだな。」



もしこれがあいつじゃなかったら、きっとここまで束縛はしない。…と思う。いや、どうだろうか。この前も店の客(男)と話してるのを見ただけで、顔が引きつって、隣にいた総悟に笑われたのは記憶に新しい。



「(こいつのことになると自信も余裕もなくなるわ…)」

「土方さん?」

「お前…ほんと罪だよな。」

「えっ゛?!罪?!逮捕ですか?!」



逮捕ってなんだよ、なに勘違いしてんだと、笑って頭をこつけば、名前はやっといつもの笑顔を見せてくれた。



「手錠して欲しかったらしてやるぞ?」

「いいです、結構です!!」

「遠慮すんな。」



そういって名前の頭の後ろに手をやり、無理やり引き寄せ口付けた。苦しそうにする名前すらも愛しいだなんて、



「……俺って異常か?」

「へ?な、なんですか急に?」

「…学習能力がねーっていうか、…日に日に名前に対して独占欲がひどくなってやがる。」

「(自覚あったんだ!!)」

「あー…ったく、自分で言うのも嫌だが、多分これ何度も繰り返すぞ。」

「つまり何度もわたしを困らして泣かすと?」

「いや、泣かせてぇわけじゃねーが…。」

「…ふふっ、じゃあその度にわたしは言いますよ。わたしが好きなのは土方さんだけですし、土方さんのことばかり考えてます!」



どうだ!と言わんばかりに胸を張る名前に、自然と口角が上がる。そうか、そうだな。いいことを思いついた。いや、思いついたというよりか、ずっと考えていたことだ。けど、タイミングがあるだろうと思ってきたが、きっとそれは今かもしれない。



「名前。」

「ん?」

「俺のそばにいてくれるか?」

「もちろんですよ?いまもいますよ?」

「これからもずっとか?」

「ずっとです!離れません!」

「…なら、土方になるか?」

「…はい?」

「苗字、土方になる気はあるかって、聞いてんだ。」



そう言うと名前はみるみる顔を真っ赤にして、そしてやっと泣き止んだと思ったのに、また目一杯に涙を溜めて、震える声で、それって…と言った。



「結婚、してくれるか?」



名前の頬に手を添えて親指で涙をすくってやると、名前は何度も何度も小さく頷いた。



「嬉しいですっ…とっても…っ!」

「返事は?」

「はいっ…わたしこそ、結婚してくださいっ…!」



そのまま名前を抱き寄せ、泣きじゃくる名前の背中を撫でてやる。こんな嫉妬と独占欲にまみれた男なのに、それでも俺の手をとり隣にいてくれるという名前。



「ありがとうな。」

「こちらっ…こそっ…」



絶対に俺が幸せにしてやるよと誓いを立てて、俺は名前に口付けを落とした。



「結婚したら少しは独占欲が治りますか?」

「…精進する。」



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