クジラが浮遊する街


涙を拾ってペンダントに


キスしてさよならなんてずるい人


高架下に消え行く影を見つめる


羽ばたいた心臓が振り返る


夜を飲み込む音がする


電線を爪先で渡る


滑らかに頬を転がる涙の拭い方さえ知らない


潜めた哀傷のでしゃばり


寂しい右側、影ひとつ


コンパスは針を失った
(羅針盤はもう動かない)


あなたが残した優しさにすがりつく


足音はもう揃わない


泣いてみせてよカモミール


残り香はなんと残酷で冷酷か






そうやってあなたは去っていくの。わたしはまたひとりぼっち。あなたの背中にすがることも、過去を捨てることもできない。未練がましい女よ。だって過去を捨てるのはあなたを捨てることになるもの。ねぇ、どうかもう一度だけ手を握って欲しいの。



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