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それは、とある日の竹寿司での出来事。
「なー、ちっといいか?」
「…んぁ?」
「スクアー…」
「あーっ…王子いま寿司に夢中だからあとにしてくんね?ちなみにアイツは一緒じゃねーから」
「…ってことは一人で日本に来たのか?珍しいのな」
「王子にだってそーいう時もあるんだっつーの」
「…んー?」
「……な、なんだよっ…!」
「イイコト教えてやろうか!」
「一般庶民から教わるコトとかねーし」
「スクアーロが喜びそうな事でもか?」
「なら直接言えよ、スクアーロに」
「いやー、それじゃ意味がないっつーか…なんつーか…スクアーロに言っちまったら面白味半減っつーかさ…」
「は?よくわかんねーし。ハッキリ言えよ」
「だって今、寿司に夢中なんだろ?」
「っ!!!」
「まーまー怒んなって!なんせ一度きりしか教えてやれないことなんでな」
「一度きり?なんだよそれ…ってかホントにアイツが喜びそうなコトなわけ…?」
「はははっ!聞きたいか?」
と…好物の寿司はそっちのけ…興味津々で山本の話に耳を貸すベル…。
そして数分後…。
「…ってことな!」
「はぁっ?!!…ってことな…って」
「あぁ、オレが教えてやれることは以上だぜ!」
「ちょっ…待てよ山本武!以上って…そんな擬音ばっかの大雑把な説明一回聞かされただけでオレにどうしろって!!」
「和装誘受流は和装という括りゆえマニア向けなもんでな…気と才ある者途絶えた時に世から消えることも仕方なしとした滅びの誘い技だ…まぁ簡単に言っちまえば『和装であればどんなシチュエーションでもオッケー』ってことなんだけどな!」
「…今までの説明は何だったんだよ!」
「ちなみに攻式 一の型『着乱れ』は並盛花火大会の帰り道、些細な事でケンカして馴れない下駄で走っていった恋人が石に躓いて派手に転んだ姿にぐぐっときた型らしいぜ。それはもう、ありえないくらい着乱れてたって話だ…」
「お前さぁ…口元…にやけ過ぎ」
「んで続きがあってな」
「スルーかよ!」
「そんなハプニングのおかげで何だかんだあって二人は仲直りできたんだとさ」
「ふーん…よかったじゃん」
「だろ!」
「…なーんか、王子もう満腹…それに、お前の話聞いてたら…ジェラート食いたくなったから…帰る」
「はははっ!満腹なのにデザートなのな!ならスクアーロにヨロシクな!」
「なっ…別に…イタリアに帰るとは言ってないだろっ!」
そして後日、スクアーロから『山本ぉぉぉっ!!!ベルに何を教えやがったぁぁっ!!!』と、なんだか怒ってるんだか満更でもないんだか…な勢いの国際電話がかかってきたそうです。
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