clap thanks


七松小平太に誰か手加減というものを教えてやってくれ。意識を失う間際におれが考えたことは今も昔も大差ない内容だった。

体育の授業中にペアを組んだ小平太の放ったバレーボールは最短経路を猛スピードでおれの頭蓋骨に衝撃を伝えた。一体何の恨みがあるのかと思ったが、避ける時間も余裕もなかったので脳内で呪いの言葉だけを吐いておれは直撃を受けた。野球部のホームラン量産器だかバレーボール部のアタッカーだかサッカー部のストライカーだかは知らないが、運動部の連中がエースと仰ぐ馬鹿力の持ち主よ、今の授業で学び実践すべきはアタックじゃない。トスだ。

「死ぬな!死んだらゆるさないぞ!」
「その場合加害者が小平太であることを証言してくれるよう長次に頼んでおこうと思うんだが、どう思う」
「どうしてわたしじゃなくて長次に言うんだ!お前のお願いならわたしに言うべきだと思う!」
「よし判った、じゃあきちんと自首しろよ」

毎度のことながら保健室で意識を取り戻したおれに縋り付いてわんわんと騒ぐ小平太にも慣れたもので、毎度のことながら長次が持って来てくれたと思われるおれの鞄から携帯を取り出して時間を確認する。ああ、もう放課後じゃないか。

「と言う訳だから小平太がちゃんと自首したかの確認は伊作に任せようと思う。よろしく伊作」
「はいはい、判ったから君の死亡をベースにした話は止めようね。縁起でもないから」
「大丈夫だぞ、お前のことはわたしが何としてでも守ってやるからな!」

高らかに宣言してくれる幼馴染みは頼もしくもあり、恐ろしくもある。

「そう遠くない未来には現実のものになりそうな気がするんだ。主に小平太の愛で」
「重たいねえ」
「そろそろ限界を迎えそうです」
「頑張って、負けないで、挫けないで。小平太、あんまり強く抱きしめてると内臓出ちゃうから止めてあげて」
「あ、ごめん」

きっと魂は半分くらい出てたと思うが、まあその程度なら慣れたものだ。誰か七松小平太に手加減というものを教えてやってくれ。



前世の記憶は何の役にも立ちそうにない






home
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -