カウントダウンの三秒前に握られた掌が少しだけ汗ばんでいたのでわたしは咄嗟に笑ってしまいました。
一瞬怪訝そうな表情を浮かべた彼は直ぐに気付いたようで、慌てて繋いだ手を離そうとしました。あら、そんなこと許しませんよ。

「手…っ!」
「離したら逸れてしまうのでしょう?なら繋いでいて下さいな。この人混みで逸れたら探し出せる自信がありませんもの」
「でも!」
「数馬はわたしと手を繋いでいるのがお嫌?」
「そんなこと!ない、けど…」

知っていますか。わたしたちがこうして同じ空を見上げていられる幸福を。

冬の空へ打ち上げられた花火が花開いて落ちるのを彼の向こう側に眺めていました。吐き出す息が白くて、彼の頬が赤くて、落ちゆく火花の燃え滓は黄色く瞬いて綺麗でした。
周囲の熱気も歓喜の声もそっちのけで、わたしは彼だけに注視していました。わたしの大切なひと。一挙手一投足を見逃すことがありませんように。

「今年も、どうぞよろしくお願い致します」
「あ、こちらこそ!」



そうして今年初めてのキスは恥ずかしがりな恋人の頬へ音を立てて贈りましょう。



a happy new year !


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -