「鬼男のいい所」と題して、他部署の鬼たちから送られてきたメールの内容はこうだった。

・顔がいい
・あたまがいい
・背がたかい
・常識的
・やさしいらしい
・えんま大王の秘書だから(エリート)
・顔がいい(わざともう一回かきました笑)

彼らのメールは誤字脱字やひらがなが多いし、変な所で改行が入ったりする。
文章の頭とお尻が合わない事も良くある(だから〜だけど〜でどんどん続いて、予想と違う結末を迎える)。

ほとんどテンションで書いている事がよくわかる。
けれど意味は分かるし、素直な気持ちで書いているんだろうなあと思って、閻魔はいつも余り気にしない。

思ったのは「なんで閻魔大王の秘書はモテるのに、閻魔大王はモテないの?」という事くらいだった。
国語力は一般の鬼より上だけど、どうやら大切らしい常識力は鬼より下のようだ。
思ったままに返事をすると「笑」とだけ帰ってきた。

そこで閻魔大王は、ふと、鬼男から来るメールを見返してみる。
ほとんどが仕事のメールなんだけれど、なるほど、他部署の鬼と鬼男の違いならすぐに分かった。

鬼男の文章は、一言でいうととても整っている。
ちゃんと挨拶が入って、簡潔に文法上の間違いなく、用件が入る。
最後に、風邪を引かないように。セーラー服は定められた限度枚数内で。など注意が入って、改行「鬼男」で終わる。

遡って、彼のメールを全部見る。
寒い季節には、厚着をするように。暑い季節には、エアコンはタイマーを設定して、ちゃんと布団を着て。寝坊をしないように。夜ふかしをしないように。
最後には必ず「鬼男」。

「りょうか〜い(^o^) えんま」と返した事のある自分が、恥ずかしい。
彼は自分のことをちゃんと気にしてくれていた。
形式張った文章の奥に、彼のこころづかいが、透けて見える。


「・・・鬼男」


思わず末尾を口にした。
口にして、俺まで惚れてどうすると、閻魔は自分につっこむ。
なんだかドキドキしながら、確かに、この男はモテるのかも知れないとはじめて思った。

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -