外はざんざんと、太い雨が隙間なく降っている。
バケツいっぱいの冷水を、一気にひっくり返したようだ。呼気と指先が白い。
鬼男はちらりと、隣で震える上級生を盗み見た。

















火の鳥




















林間学校。
オリエンテーリングと称して、極寒の山道を1000人近い高校生が歩く。
鬼男は体力のない方ではない。
けれど正直、面倒くさくて。
なんやかんやと理由をつけて、入れられた班から離れた。

行列が途切れた所で重たい腰を上げる。
すると、今度はいつまで経っても先を行く集団に追いつかない。
どうやら道を間違えたと気付いたのは、弱い雨がはらはら降り出した頃だ。


「寒いですか?」

「・・・ちょっとね」

「ライターありますよ」


ぽっ、とライターの火が灯る。
近くにあった、多分カーテンだった布に火を移す。
鬼男と良く知らない先輩、二人の顔に赤い光が映る。
先輩は、わぁとやけに嬉しそうに声を上げる。

二人がいるのは、窓もない山間の廃墟。
コンクリートの外壁だけが、がらんどうのように残る。
あとは散らばるガラスと、少しの家具。
雨の中何時の間にか連れ合って、逃げ込む場所はそこしかなかった。


「なんでそんなの持ってるの!」

「・・・煙草」

「うそ!吸って見せて」


不良に会っちゃったと言って、先輩は大喜びだ。
そんなに珍しいだろうか。
自分も、自分のようなのも、学校にはいつも沢山いる。
そういえば、この先輩を見るのははじめてかも知れない。
イケメンかと言えば、そういう系統ではないが。
けれど美人だなあと何となく感じるので、居れば目立ちそうなものだが。
人数が多い学校だし、上級生だからだろうか。

煙草に火を着ける。赤まる。意外にこれが重たいのだと後になって気づくやつ。
鬼男の口から細い煙が出る。
先輩は、チワワを見つけたギャルのように唇に手を当てた。


「すごぉい。ねぇ、君・・・」

「先輩、寒いんだろ」

「え?それはちょっとは・・・」

「身体が震えてんだよ」


そう言って、煙草を持った手を先輩の肩に回す。
先端が煙を引っ張って、二人の間に灰色の線を引く。
服の上からでも分かる。先輩の身体は氷のようだ。
彼は細くて、色の白い少年だ。元々そういうのには弱そう。
けれどそれにしたって・・・


「冷たすぎやしませんか」

「ごめん」

「我慢してたんだろ」


先輩は鬼男の腕の中で俯いて、ごめん、本当はちょっと、すごく寒いと言った。


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