僕とベル教授は儘に絡んでいた唇を離し、一瞬後、ふふ、と笑った。

笑い出す、段々と声高に、留学生の怯えた表情が深く濃くなる。

ははは、と声を上げて笑い、チラリと目の端で彼を捕える。

それが合図だったかの様に、僕も教授もぴたり、と笑うのを止めた。

びくり、と拘束された男の体が震えた。


「私が悪かったよ、ワトソンくん。君に要らない心配を掛けてしまったね。」

「良いんですよ、教授。僕の独占欲の強さも問題だ。反省します」

「ありがとう、ワトソンくん。それじゃ、今回の件に・・・落とし前を付けよう」


そう言うと彼は、僕の頬に触れている方とは逆の、後ろ手に持っていた火掻き棒を持ち上げる。


「・・・やめろ、何を、何をするんだ!ワトソンさん!」

「私はベルだよ」

「は・・・おかしい。この、妄想狂!このっ・・」


気狂い共め!と、彼が言い終わらぬ内に、赤い血飛沫が壁に、3人の服に床に壁に、彼の顔に、私の顔に斑点となって付着した。

留学生にはもう、顔、頭と呼ばれる物は無かった。




「ワトソンくん、さっきまるでダンシング・ドールの様だったよ」

「嫌だな…見ていたんですか」

「格好良かったよ、まるで役者みたいだった、ただ…」




ダンスは一人では踊れない。

だから、私が君と…

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