「助けて下さい…ベル教授!!!」
















何だって。
ベル。アレクサンダー・グラハム・ベル。

それは、僕じゃない。
もう、僕じゃない。




「僕はトーマスだ」


トーマス・オーガスタス・ワトソンそれが僕の新しい名前。




「ベルは私だよ」


背後から低いトーンの、だけれどあやしく優しい声がした。

白い手が肩越しに僕の顔の輪郭をなぞりながら、そっと体を預ける様に絡み付いて来る。


アレクサンダー・グラハム・ベル、僕の″理想″的な男、僕の理想の具現化した男。

僕の愛しい人。

今日化成した、青い瞳のグラハム。




ほう・・・、と思わず溢れた充実感が溜息となって零れた。


僕は首を回して愛しい人に口付ける。

彼はフフ・・・と笑って、僕の黒い髪を掻き上げた。

黒い瞳の留学生は、言葉も出ないと言った様子で事の成り行きをただ呆然と見守っている。


「・・・狂ってる」


彼が震える唇で呟いた。

貴方達は狂ってる、まるで意味が分からない。

まるで・・まるで・・・、いや、そんなことがあるはずない。

しかしこれでは、或は・・・!


「ベル教授とワトソンさん、入れ代わった様だ」

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