今夜も、惨劇の幕が上がる。
闇夜にまぎれて僕は、ある家族を皆殺しにした。
実際に必要なのは、中央へ反抗的な高官である父親の命だけであった。
しかし俺は、静かに広い屋敷を回って、彼の築いた幸せの全てを、闇へと葬った。
意味などなかった。
ただ、閻魔が、その後どうなるの。また、不穏の芽が出るんでしょ、とすねた様に言ったからだ。
幼い兄妹の前に立って、そのあどけない寝顔にふと、現実が帰って来そうになった。
何度繰り返しても、もう慣れた事と思っても、本当にふとした瞬間、以前の僕が戻ってくることがある。
「それは許されるのですか」と、畏れを含んだ瞳で尋ねた、僕が。
けれどもう、逃れられぬこと。
どこへ走っても、どこかで死が僕に絡み付いて来る。
眠る、罪のない子ども達へ向けて、彼らの両親の血に濡れた爪を振り下ろした。
ほら、僕がやったんだ。
見ろ、これが幸せの残骸だ。
そう、思っていた。
意味などなかった。
ただ、早く閻魔に会いたいと思った。
ただ、こんな事が出来るようになった僕を、迎えて、認めて、微笑んでほしい。
ただ、それだけだった。