最大音量で流されるテレビの音がうるさい。
これは鬼男がひどく抵抗したので、思わぬ騒ぎになり、近所にばれんじゃねぇのと言って男の一人が点けたものだ。

それでも今、眼前で腰を振る男と自分の間で立つぐちゅぐちゅという水音は聞こえる。
耳を塞いでしまいたかったけれどそれも出来なかった。

背中にいる別の男が鬼男の腕の自由を奪うようにして、胸の突起をいじっているからだ。
腰の辺りに不穏な硬さを感じる。


「脚おさえてよ」

「自分でやれよ、逃げられちゃうだろ」


ねぇ、と言われて乳首を強く摘まれたので、高い声が出た。

もう何度味合わされたか分からない、羞恥と悔しさから、鬼男は力なくうつむく。
上がった息が喉でつかえて苦しかった。

はじめは嫌で、男達の慣れない手つきのせいで何をされても痛くて仕方がないだけだった。

それでもしつこく体中を愛撫されていると、次第に、不思議と他人と自分の身体が馴染んでいくのを感じた。

こんなにも沢山の手に弄られるのは勿論、はじめての事だ。

驚きと恐怖とともに、触れてくるのが恋人の指か、それ以外のものなのか段々と分からなくなっていった。

頭の中でそれらが交錯する様に、いつからか覚えてはいけない感覚が、身体を支配しはじめていた。

彼らも要領が分かって来た様で、それからは面白がって身体の随所にいい所を見つけて触れてくる。
上がる声を我慢しようとしても、色々な所から伸びる手にその内追いつけなくなった。

入れ替わり立ち代り、体中を弄られながら中を何度も突かれて、ぐずぐずになった身体は歯止めが効かない。
どんな刺激でも拾って、敏感に反応してしまう様になった。


「あっ・・・あっ・・ん」


気持ち良くなってよかったね、と言って背後の男にキスをされる。

顔を背けようとしたけれど、別の男に首筋へと吸い付かれて、思わず力が抜けた。
ぞくりと背筋が寒くなる。

そのまま身を任せる形になって、生温い舌が遠慮なく口内を這い回る。
飲み込めなかった唾液が、唇の隙間から漏れて顎へと流れて気持ちが悪い。

男はそのまま胸をいじっていた内の片手を下へと降ろし、鬼男の自身を無遠慮に掴んだ。
それはもう主張する事を抑えられなくて、どろりとした透明の先走りが陰茎を流れて腹を汚している。
からかう様に緩く、上下に扱かれる。それも身体も、止めようがなくてびくりと痙攣した。


「下も金髪なんだな」

「ん、いや・・・だって、ば、あぁ・・・」

「嫌じゃない嫌じゃない」


男達は半笑いで言う。

不快で仕方がなかった。
けれど、それ以上嫌だと言う事も出来なくて、なされるがまま、男の胸に顔を押し付けて耐える。
布団を掴む指先は色が白らんでいた。

前の男は、自分で鬼男の両膝を抑えて脚を大きく開かせながら律動を続けている。
晒されて鬼男からも良く見える様になったそこは、前の男達の放ったもので汚されて滑りが良くなって、すでに苦痛もなく性器が出し入れされてる。

動きとともにこぼれ落ちてくる白い液体が、シーツにしみを作っていた。
こんなに沢山出しても、この人たちはまだ足りないのかと思う。


「は・・・あっ、あっ、うぅ」


前と後ろ両方の刺激で、頭がまいってしまうくらいくらくらとする。
それは先程摂取したアルコールのせいだけではないともう、鬼男にも分かっている。

整わなくなった荒い呼吸が自分のものと、男達のもの、鬼男にもちゃんと聞こえていた。

頭上から噛まれないかな、と
言う声が聞こえた。
頼んでみればと誰かが言って、すぐに閉じる事が出来なくなった唇へ熱いものが押し付けられる。
舐めてくれる?と言われて、誰かのそれだと分かっていたが、抵抗しても無駄だと分かっているので大人しく口にくわえた。

まずい、青臭い味がして、おまけに一気に喉まで突き入れられて唇の端が切れてしまいそうだ。
けれど全部我慢をして、手は塞がれているので頭だけを前後に振る。

嫌な水音がまたひとつ増えた。
けれどそれとともに、認めたくはないけれど身体の熱も上がる。

悪い事をされている、だけどそれに痛みではない感覚を覚えている。
その事もなぜだかいつの間にか、うねりをおおきくする快楽の波に呑まれて、その一端へと姿を変えた。


「イキそうなんだけど」

「んん・・・!」


中を蹂躙していた男は鬼男の腰を持ち上げる様にして、動きを早くする。
容赦のない刺激が身体を襲った。頭に血が上って、顔が熱くなる。
耐えられなくて、手探りで誰のだか分からない腕を掴んだ。

動きとともに体が大きく揺さぶられる。
誰かの性器が、口からぽろりと抜けた。


「あっ、んんっ!・・・は、あぁ・・・あっ」


肌と肌がぶつかって音が上がる。ベッドが単調にぎしぎしと軋んだ。
いい眺めだなと誰かが言う。

言葉と音、恥ずかしさ、そして今まで知らなかった快感のどこに集中して良いのか分からず、頭がひどく混乱していく。
もう快楽から逃げるだとか、考えられなかった。目が閉じそうなくらい身体が脱力する。
頭の中でフラッシュが炊かれて、電気が点滅している様に目の前がちかちかとした。

テレビの音、水音と混ざってあられもない自分の声が聞こえる。


「イクんじゃないの?」

「マジ?」


床で煙草を吸っていた男も振り返ってこちらを見た。
この状況そのものが耐え難いくらい嫌だったし、それをまじまじと見られるのももっと嫌だった。

だけど嫌だと思えば思う程、裏腹に麻痺した身体は熱くなっていく。

誰かの手が伸びて、また性器を刺激された。それはもうこれ以上ない位猛って、赤く主張している。
掌と擦れる感覚でぬるぬると湿っているのが自分でもわかった。

硬いよと嬉しげに言う声に、ぎゅっと目をつむる。
眦からついに涙が溢れた。


「あっ、あっ、ぁ・・・ああぁ!」


身体全体が反り返ってびくびくと震える。細かい痙攣を続けながら、自分の腹の上に、白いものが飛び散るのが見えた。
それだけは我慢しようと思っていた。

おぉと言う、歓声に似たどよめきが上がる。
最後に触れた男が掌についた精液を見せながら、イケたじゃんと笑った。

止まらない震えと、大粒の涙を零しながらもうやめてと言おうとしたけれど、なにやら楽しそうに言い合う男達の声に、その言葉はかき消された。

体内にもぬるい温度を感じて、硬さが抜けていくと思ったら、今度は身体を反転させられる。
誰の物だかわからない液体がぼたりとも、ずるりともつかず鬼男の身体からベッドへ落ちる。
一方でそれは、彼の太腿を伝って同じ所を目指してもいた。

すぐにまた視界の外で先程とは別の、熱くて凶暴なものが押し入って来る。
もうそれに辛さも感じなかった。


「やめらんないね」


誰かが言った。だけど意味も分からないくらい、頭が白んで憂鬱だった。

そう言えば閻魔はいつまでも帰って来ない。
最初は助けを求めて呼んでいたけれど、それもその内忘れていた。


「あんときズルしてよかったな」

「う・・・え?」


あいつ気づかねぇんだもん。と前と後ろの二人が笑う。
口もすでに使われていたので、何の事だとも聞けなかった。

今度は手はもう自由にされていたので、四つん這いで片手だけ、男のそれに触れながら彼らの話に耳を傾ける。


「まさかいいって言うとはなぁ」

「儲けたな」


あんなイカサマ麻雀で、こんないい思い出来るなんて。
男はそう言った。

鬼男はやっと、こんな事になった原因を知る。
彼はその恋人より随分賢いので、話の断片だけで全てを理解してしまった。

家を出る時、彼が目をそらした理由が分かった。

それと同時にこれ以上ない位絶望的な気分になった。


「ねぇ、顔にかけてもいい?」

「・・・好きにしてください」


急に従順になった!と騒ぐ声と、調教ってやつじゃないのと言う興奮した声が聞こえる。
だけどもう、全部どうでも良かった。

カーテンの隙間からオレンジ色の夕暮れが見えて、すぐに目を閉じた。

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -