とむとむ
「ねぇ・・・マジでやるの?」
当たり前じゃんと言って、友人たちは笑った。
1LDKの閻魔の部屋を彼らは冷かし交じりに褒めて、昼間から酒盛りをはじめる。
閻魔と彼らは大学の同級生で普段から意味も無くつるんでいるメンバー、本人を除いて5、6人ほどだ。
「とむとむがいいって言ったんじゃん」
「言ったけど・・・」
とむとむと言うのは閻魔のあだ名だ。
本名は戸村井閻魔。
とむらいという姓だから誰かが勝手にそう呼んだ。
そして友人たちが言っているのは、先日閻魔と彼らの間で行われた賭けごとの事だ。
別の友人の家に集まってみんなで賭け麻雀をしていて、閻魔は途中で手持ちがなくなった。
その日は負け続きで彼は少し嫌にもなっていた。それに元々そんなに強くもない。
もう下りたいと言うと、酔いも手伝って一人の友人が馬鹿げた事を言い出す。
金の代わりに別のものを賭けないか。
閻魔ははじめ断った。
だけれど周りの勢いに押されて、どうにも収集がつかなくなり、渋々それに応じたのだ。
これだけ負けたし、今度こそ勝てるかもしれないとも閻魔は思っていた。
勿論、ゲームというのはそういう理屈で成り立つものではない。彼はまた負けてしまった。
「お前の彼氏とやらしてくれるって言ったろ?」
「ううん・・・」
閻魔が賭けたのは自分の恋人を友人たちに貸してやると言う、とんでもない物だった。
彼の恋人は年下で、まだ高校生だ。
2年前まで同じ学校に通っていて、相手の方から告白して来た。
「のんびりした所が好きなんです」とはにかんだ彼の可愛い顔を、閻魔はまだちゃんと覚えている。
のんびりしていると言うのは、悪く言えば、意気地がないとか、抜けていると言い換える事も出来る。
彼はそれを好きだと言ってくれたが、今度はそれが原因でこんな事態を招いてしまった。
閻魔はそのぼんやりした頭で、切ないなと思った。