私の彼氏は喧嘩早い。
それは本人の問題、というのではなくて。


「…っ、てぇ!」
「はい、静かに」
「何だよ冷たいな」
「無理しないでって言ってるのに怪我してくる方が悪いんでしょ。はい、出来た」
「サンキュ」


彼、龍也の代表作である「ケンカの王子様」。
その撮影で怪我をしてくることもしばしば。
スタントマンを使わないで、全部自分で演じているのだから無理もないけれど…。


けれどやっぱり心配。

仕事だから仕方ないけれど、無理をしないで欲しいのが本音だ。年中怪我して帰って来られたら、心臓がもたないもの。


左手に巻かれた包帯をそっと撫でてみれば、龍也は不思議そうに私の顔を覗き込んできた。



「…心配か?」
「いつでも心配だよ」
「悪いな、いつも」
「本当にね」


そのままそっと手を繋がれる。龍也が少しだけ痛そうな顔をしたから、慌てて離した。けれど龍也は微笑んでもう片方の手を使って、私を抱き寄せる。



目を瞑ると、間を空けずにすぐに塞がれる唇。


「ん、ちょ…」

その気持ち良さにしばらく浸っていたら、龍也が私の口内に舌を入れてきた。

ただならぬ雰囲気になってきた事を察した私。


ま、待ってちょっと待って。そんなつもりは無かったのに…第一、彼は怪我をしているのだ。そんな無理をさせる気は毛頭ない。


両手で彼の胸を押して離れようとするけど、ビクともしない。そりゃ私の力じゃ龍也に敵う訳ないのだけれど。




名残惜しむように、ゆっくりと唇が離される。ゆっくりと息を吸って呼吸を整えるけど、肩が上下しているのが分かった。


そのまま片腕で、器用にカーペットの上に押し倒される。見上げた天井と一緒に、妖しく笑う龍也の顔が見えた。



「腕、ケガしてるのに」
「問題ねぇよ」
「ちゃんと治ってからに、しようよ…」


そう言ったのに、龍也は構わず怪我をしていない右手だけで器用にブラウスのボタンを外していく。あっという間に下着が露わになって、ぐいっとブラを上に捲り上げられた。


「ん、あ…待って」

待って、と言っているのに聞く気は全く無いみたい。ピンと勃った胸の突起を口に含まれれば快感で身体が震えた。


いやいや、と首を横に振っているのに龍也は胸から口を離さないまま、目線だけ私の顔に向けた。




「嫌なら抵抗すれば良いだろ」
「…っ」
「しないって事は合意の上って事だ。違うか?」
「ちが、わない…」


そう、違わない。

今龍也はほぼ片手しか使えないのだから、本気で拒否すれば、良いのに。
私はわざとそれをしない…龍也からの刺激を望んでしまっているから。



「自分で下着脱げるか?」
「ん、あ…できる、」


龍也に言われるがまま、自ら下着を外す。
足を開いたらもう濡れているのも分かってしまって、どうしようもなく恥ずかしくなった。


子どもを褒めるように、大きな手が私の頭を撫でる。すぐに、龍也のものが力強く突き立てられた。



「ん、あっあっ…」


龍也は右腕だけで自分の身体を支えながら、器用に律動を繰り返す。

どれだけ腕に負担がかかってるんだろう…心配になってその逞しい腕に手を這わせたら、優しく微笑んでくれた。


「心配いらねぇよ、そんな顔すんな」
「だ、って…」


無理してないかな。痛くないかなってやっぱり心配だから。

それはやっぱり、



「龍也が、大切だからだよ」
「んな事は知ってる」
「もう、ずるい」


自信満々に笑う龍也の首に腕を回したら、たっぷりとキスをくれる。

彼は私だけの、大好きな大好きなケンカの王子様。



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