「幾らなんでも、やり過ぎだったんじゃない」
思っていたよりも低い声が出てしまった。
反応した瑛一は読んでいた台本をそっと閉じて私を見た。
「あの曲を書いたのはお前だろう」
「そうだけど…でもあんな事するなんて聞いてない」
私が話しているのはデュエットソングのこと。ST☆RISHの一十木くんが瑛一に追い詰められて、行方不明になったと聞いた。
結局事なきを得て、デュエットプロジェクトも大成功。それでも私は納得出来ない部分があった。
どういう理由であれ、瑛一が一十木くんをあそこまで傷付けた事実は変わらない。音楽の為だとか、そんなのは関係ないの。
「結果的にプロジェクトは成功した。音也も俺も新たな道を拓けた。それで良いじゃないか」
「そうかもしれない。でも瑛一は傷付いた一十木くんを見て何とも思わなかったの?それに、ちゃんと彼に謝ってないでしょう」
終わり良ければ全て良し。
そんな感じで何事も無かったかのように振る舞う瑛一や社長が、私はどうしても許せなかった。
「もう知らない」
「おいなまえ」
「今は瑛一の顔見たくない」
「なんだと!?」
瑛一の部屋を出て行こうとしたところで、瑛一に腕を掴まれる。キッと睨んだところで、不服そうな顔をした瑛一に、強引にソファーに押し倒された。
「何するの!」
「俺に口答えするな」
「だって!んっ、」
両手首を強く握られたまま、無理矢理キスをされた。全然嬉しくない、気持ちも良くないキス。
必死に抵抗するけど瑛一も引かない。歯を食いしばって絶対に口は開けないようにしていたら、それが気に入らなかったのか、胸を無理矢理掴んできた。
「やっ、やめ…!」
身体がビクついてしまったと同時に、開いた口に舌を捩じ込まれた。
乱暴に揉まれる胸と、私の口内を暴れるように蠢く舌。必死に手を動かしても、瑛一の力に敵うことは無かった。
「んっ…!ぁ、」
嫌なのに、身体が素直に反応するのが悔しい。
瑛一は無表情で無言のまま、スカートの中に手を入れて、強引に下着を脱がせる。
「んっ、んー!」
いやいやと首を振っても、手を止めてくれることはない。こんな無理矢理にされるの、嫌なのに。
「やっ、いたっ…!」
十分には濡れていないソコが、すぐに瑛一の固いモノで埋め尽くされた。
いつもはあまり感じない裂くような痛みが下部に走って、眉間に皺を寄せた。瑛一を引っ張たこうにも、私の両手は彼の両手によって拘束されてしまっている。
「瑛一!やめ…!」
「俺はそんなに変だろうか」
ぽつりと部屋に響いた言葉。
繋がった状態のまま、瑛一は私を抱きしめた。首の辺りに瑛一の顔が埋められていて。いつもみたいな自信に満ち溢れた声と全く違う、情けない声。
その声に私の胸も締め付けられる。
瑛一なりの考えがあっての行動、音楽を愛しているがための行動…それは分かっていたはずなのに。
それに、瑛一が誰よりも一十木くんを傷付けたことを後悔していることも、私は分かっていた。
それなのに、彼を責めるような言葉をかけてしまった。そんな自分の心の小ささに反省する。
「私も言い過ぎた。ごめんね瑛一」
「…なまえ」
「大丈夫。瑛一のこと、ちゃんと分かってるよ」
それがちゃんと伝わるように、瑛一の髪をそっと撫でた。すると聞こえないくらいの声で、ありがとう、と呟いた瑛一。
もう、結局私はそんな瑛一が大切で大好きだから彼を許しちゃう。先程あんなに怒っていたのが馬鹿みたい、なんてね。
私の手首を掴んでいた瑛一の手が緩んだから、そっと腕を彼の首に回した。
顔を上げた瑛一と目が合って、どちらからともなくキスをする。さっきの強引で冷たいキスとは、全然違っていて温かい。けれど瑛一はそのままでは終わってくれなくて。
「ん、ちょ…」
「なまえ、」
「あっ…!」
瑛一はまた私の首に顔を埋めた。ねっとりと首筋を舐められて、ぞくっとする感覚。思わず高い声を上げてしまう。
繋がったままの下半身、どくんと瑛一のものが脈を打った気がした。その体勢のまま緩く動かされる腰。少しその動きは段々と速くなっていき、最初は痛みを伴っていた私の秘部も、いつの間にかすんなりと彼自身を受け入れていた。
「んっ、あ…あっ、やっ」
「何だ、もうこんなに濡らしてるのか」
「や、誰のせいよっ…」
止まらない動きに、高まる快感。
無理矢理されていたのに感じるなんて、確かにいやらしいと思う。でもそれは、間違いなくこの男のせいな訳であって。
「本当に、変わった女だ」
「や…え、いちには…言われたくない、」
「だからこそ、手放せない。お前も同じだろう?」
俺様だしちょっと変わってるし、でも本当は繊細な所もあって。けれどそんな瑛一が大好きな私は、誰よりも彼の理解者でありたいと思う。
そんな事を思いながら、瑛一がくれる刺激にひたすら溺れていくのであった。