※五万打アンケート企画
3位真斗&4位綺羅



「つまんない」

何が面白くてこんなパーティーに参加しなければいけないのだろう。綺麗なドレスにそぐわない不満全開の顔で、私はロビーのソファに腰かけた。ヒールを履いた踵が痛い。

部屋の向こうからは、騒がしい声が聞こえている。昔からこうだ、この人達はお金があるだけで品の欠片もない。金持ちの退屈しのぎの、こんなつまらない時間を過ごさなくてはいけない私の身にもなって欲しい。そんなことをお父様に言う勇気はこれっぽっちもないけれど。

アルコール度数の強い、慣れないお酒を無理矢理喉に流し込もうとした所で、自分の目の前に人影が出来たことに気が付いた。


「ぎゃっ!誰!?」
「足は、大丈夫か」

そう言って、私の足元にしゃがんだのは同い年くらいの男の子だった。靴擦れの場所に折り畳んだナプキンを当ててくれる。こうすれば少しは痛みが和らぐ、と行った男の子は綺麗な黄色の瞳をしている。彼もこのパーティーの参加者なのだろうか。


「あの、あなたは──」
「皇さん!」

聞こうとした名前は、突然現れたもう一人の男の子によって明かされた。あ、この人は見た事ある。多分、こういう集まりにいつも居る気がする。


「足を、怪我していた…」
「え、え?」
「そうでしたか…それで具合が悪そうだったのか」
「あのー、話が飲み込めないんですけど…」
「ずっと、青い顔をして眉間に皺を寄せていた…気になっていた」
「酔いが回っていたのかと思っていたのだが…水だ、少し飲むと良い」


眉間に皺を寄せていたのは、単に機嫌が悪かったからなんだけど…だけど何だか心配してくれてるのに本音を言うのが申し訳なくて、青い髪の彼から差し出された水を素直に受け取った。まぁ、酔いが回っていたのも本当だからこれは有難い。


「……え!」
「これは度がきついな、全く。女性に飲ませるものじゃない」
「いや!あのー…」

水の入ったグラスを受け取ると同時に、無意識に差し出してしまったお酒が入ったシャンパングラス。それを彼はごく自然に口に含んで飲み切った。ていうか、

「(普通に間接キスなんだけど…!)」
「少し、夜風に…当たるのが良い」
「そうですね、外に出ましょう」
「少し離れたところに…夜でもやっているバラ園がある…」
「良いですね!それでは早速……」
「ちょ、ちょっと待って下さい!」

どうして私の知らない所で話が進むの!
このままじゃ面倒な事に巻き込まれる!そう思ってさすがに止めに入ったら、このイケメン二人は微笑んで私の方を振り返った。


「お前もつまらなかったのだろう?こんな会合が」
「それは……」
「俺達も、一緒だ。……少し、気分転換に付き合って欲しい」
「ほら、俺達と一緒に抜け出そう」


そっと差し出された二人の手を、少しだけ迷った後に、両手で取った。彼ら二人に両サイドを挟まれてまるでエスコートをされるように、会場を離れていく。

月が綺麗な今夜に、私を連れ出してくれた二人が本物の王子様に見えて……これからどんな素敵な夜になるんだろうと思ったら、胸の高まりは治まりそうになかった。





(20200930更新)




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