「おい…これ絶対高いだろ」


そびえ立つ山の周りを走るコースター。パーク内屈指の人気アトラクションの入口の前で、翔ちゃんが青い顔でその山を見上げた。


「景色絶対きれいだよ?」
「見る余裕なんてあるかバカ!」
「えぇー…じゃあ、乗らないの?」
「でもお前は乗りたいんだろ。ここは俺様が男を見せてやるよ」

…なんて男気全開の発言をしていながら、高所恐怖症の翔ちゃんは、列に並んでいる間も「うわ、高そー…」と走るコースターを見つめている。

絶対楽しいのに。だってこんなに並んでるんだよ?超人気アトラクションなのに乗らないなんて勿体ない!


「しかも一番後ろ…」
「一番後ろって、一番怖いって言うよね」
「お、おおお大歓迎だ!怖いの大歓迎!」
「高い所は?」
「それは無理っぽい」

まったくもう。翔ちゃんたらビビりなくせにカッコつけなんだから。そんな所も好きだけど、なんてね。


カタカタと音を立てて、木造のコースターがどんどん上へと登っていく。
翔ちゃんは青ざめた顔で、目をぎゅっと瞑っていた。


「ほら翔ちゃん、目開けてよ」
「い、今は無理だ…っ!」
「ほら落ちるよっ…きゃー!楽しー!」
「うおおおおおあああああ」


声にならない声を出す翔ちゃんの横で、私は両手を広げる。もちろん目は開けて。隣に座る翔ちゃんを見る余裕すらあったけど、翔ちゃんはやっぱり目を開けていなかった。オイ!


「死ぬかと思った…」
「ねぇ翔ちゃん、もう1回乗ろうよ」
「お前ふざけんなよ」

そう言いつつ、なんだかんだ行列に並んでくれる翔ちゃんは、やっぱり良い奴だ。



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