「天草はぽっぷこーんが食べたい」
夢の国に初めてやってくるというシオン。
私が色々と案内をしてあげようとしたら、すでに目的があったらしい。それがアトラクションとか、キャラクターと写真とかじゃなかったのは意外すぎたけれど。
どうやら生まれてから一度もポップコーンを食べたことがないらしい。私とはだいぶ育ちが違うようだ。
「…これが!ポップコーン…!」
そんなシオンを連れて、ポップコーンのワゴンにやって来た。
ワゴンの窓に張り付いて、ポップコーンが製造されていく過程をじっと見つめている。かれこれ数十分は経つ。よく飽きないなこの子。私、早く食べたいんだけど…
ワゴンのスタッフさんと列に並ぶお客さんの視線に耐えきられず、私はシオンを引っ張って購入したポップコーンを差し出した。
「はい、シオン。あーん」
「あーん」
こうやって素直に口を開けるのは可愛い。ちょっと動物感あるけど…。口に入れたキャラメル味のポップコーンを飲み込んで、シオンは目をキラキラさせた。
「あぁ…なんと美味…!」
「ね、美味しいでしょ。色んなフレーバーあるから、また買おう?」
「味…全制覇、する」
「…は、」
「天草は、大変気に入った…!」
あぁ…これだから不思議ちゃんには苦労する。
せっかく夢の国に来たのに、シオンはアトラクションには見向きもせず、ひたすらポップコーンのワゴンを巡るのだった。
ああもう!私はビッグサンダーマウンテンに乗りたかったのに!あ、シオン置いて一人で乗ってこようかな。でもまたイジケモードになっても面倒臭いしな。あぁ、ナギか瑛二あたり連れてくればよかった。後悔。
でもまぁ、シオンが楽しそうだからいっか。
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