「大和なんて大嫌い」
「んだよ、そのくらいで怒るかフツー」
「最低」


あぁ、また喧嘩してしまった。でも悪いのは大和だもん。


事の発端は、たった今降りてきたアトラクション。

ボートに乗って水の張ったプールを移動しながら、人形たちが踊っている様子を眺めて楽しむアトラクション、だったんだけど。


「ありえないでしょ寝るなんて!」
「いや、良い感じに暗かったし。音楽も流れてたし」
「それを楽しむ乗り物なの!」
「あーっもう!うるせぇな!悪かったつってんだろ!」


せっかく大和とデートするの楽しみにしてたのに。大和のせいで台無しだ。しかも当の本人は全く悪びれない様子。もう絶対許してなんかやらない。


「今日すっごく楽しみにしてたのに…大和の筋肉バカ。もう帰る」
「待てよ!まだ朝だろ」

ふんと鼻を鳴らして、大和を置いて出口へ向かって歩き出す。もうやだ。怒りを通り越して泣きそうになってきた。むしろ涙、出てきた。




「…泣くほどのことかよ」

すたすたと歩いている私を、大和は追いかけて後ろから強引に抱きしめてきた。


歩いていた足を止める。あー…どうして後ろ向いてたのに泣いてるってバレてたんだろう。


「本当、ごめん。俺が悪かった」
「大和…」
「お前だけじゃねーんだよ。俺もさ、その…今日のことすげー楽しみにしてた」


ぎゅっと抱きしめた力が強すぎてちょっと苦しかったけど、それでもすぐ彼を許してしまう私は甘いのだろうか。


「もう一回乗りに行くか」
「うん!」


その後、リベンジでもう一度乗ったボートの上で、必死で瞬きを繰り返したり、目を見開く大和の姿があった。




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