【身体重ねて】


※R18




ありがたく入らせてもらった温かいお風呂から出ると、脱衣所には黒のVネックTシャツとジャージの半ズボンが置いてあった。少し迷ってからその服に手を伸ばす。


「おっきい…」

真斗の私物と思われるそれは、当たり前ながら私の身体には一回り大きかった。一般の男性よりは細身な彼だけど、私と比較すると体格の違いを実感して。逸る気持ちを押さえようとTシャツの胸元をギュッと掴んだ。


マンションの下にあるコンビニで急遽用意した簡易お泊まりグッズで、最低限のスキンケアだけしておく。すっぴんを見られるのが恥ずかしいとか…今はそれどころじゃない。


「(そういうこと…だよね、たぶん)」


お互いもう子供でもない。この後の展開は、大体想像がつく。

胸のドキドキがずっと鳴り止まない。どうしよう、という戸惑いと触れ合いたいという期待。
真斗はどう思っているんだろう。同じ気持ちだったら、嬉しいけど…ううん、考えていても仕方ない。自然の流れに身を任せよう──そう決めて、彼が待っていると思われる寝室へと向かった。




「お風呂、ありがとう」
「ああ…服は、やはり少し大きいな」
「ん、でも大丈夫」

ベッドに腰かけた真斗が台本と思われる本を閉じてサイドテーブルに置いた。いつも私服や衣装の姿ばかり見ていたせいか、ラフな格好をしているのを見るのはすごく新鮮だ。

小さなランプだけが点いた薄暗い部屋。ベッドまで駆け寄って、そのまま真斗の横に腰を下ろした。すぐそこに、手を伸ばせば触れる距離に真斗がいる。ちょっとだけ甘えたい気持ちが芽生えて、真斗の肩にこてんと頭を預けた。


「どうした?」と聞く優しい声。何も言わず、首だけ横に振った。

真斗の片腕が私の肩に回って、ぎゅっと抱き寄せてくれる。湯上り特有の心地よい香りと、確かな温もり。

視線を上げて、上目で真斗を見つめた。目が合ってそっと微笑まれて──優しく、唇が落ちる。


最初は触れるだけのキスだった。だけどお互い、それだけじゃ足りなくて。


「んぅ、ぁ…」

ゆっくりと唇が重なって、味わうように何度も角度を変えられる。舌が差し込まれて、絡めとるように動く度、ぴちゃ、と音を立てた。


うっとりしちゃうような、深いキス。
つい夢中になってしまっている所で、Tシャツの裾から真斗の手が入り込む。

ウエストをすっと撫でられた瞬間、無意識に肩が震えた。私の反応に、真斗の手がぴたりと止まる。


「…嫌だったか?」

唇を離され、ぽつりと呟かれた言葉。息を乱す私に対して、全く乱れていない真斗の呼吸。それがほんの少しだけ、悔しい。


「強引に誘ってしまったのでな…迷惑では、なかったかと」
「ち、違うよ!そんな…」

零れた言葉は予想外のもので。迷惑なんて、嫌だなんて思うはずないのに。なんて真面目なんだろう。


「全然、本当に嫌じゃないの。ただ、緊張はしてるけど…」
「そうか…良かった」


ちゃんと伝わったか不安に思っていると、真斗の指が私の唇をなぞった。お互いの唾液で濡れているのが恥ずかしい。


「俺も、これでも緊張しているんだ」
「ほんと…?」
「あぁ…こういった行為は、まるで慣れてなくてな」

嘘でしょう、って思う。けどすぐにぎゅっと抱きしめられて、その胸板に耳を預けられた。音を立てている心臓は、確かに鼓動が速い気がして。



「七瀬、好きだ」
「あっ…」
「好きだからこそ、全て手に入れたいと、思う」
「んっ」


耳に唇を付けて甘く囁かれる。感じる吐息と低いその声に、身体が少しづつ反応しちゃうのが分かる。

再びキスをされながら、真斗の手がTシャツの中で身体をまさぐる。胸を優しく揉まれて指が突起を掠めると、自然と声が漏れた。背中をすっと撫でられブラのホックが外れて、自然と服が捲れ上がる。後はもうされるがままだ。服を脱がされベッドに一糸纏わぬ姿で横たわると、ベッドが軋む音がして、私を組み敷いた真斗にじっと見下ろされた。


「あぁ…綺麗だ、七瀬」
「あっ…んまり、見ないで…」


至る所に落ちる唇と滑る舌、触れる指一つ一つによって、私の身体が熱に犯される。音を立てて真斗の指を飲み込んだ頃にはもう、少しの刺激で身体が大きく震えるまでになってしまった。



「ひぅ…やっ、こんなの…恥ずかし…」
「恥ずかしがる事はない、大丈夫だ」
「だって、こんなっ…」


とろりと体液が滴ってるのが自分でも分かって、更に呼吸が荒くなっていく。もう身体が限界だと叫んでいるよう。

ただひたすらに淫らに息を漏らす私を見て、真斗は嬉しそうに私の頬を撫でた。軽く唇にキスが落ちてから、ベッドの上で膝立ちになった真斗が無造作に自身のTシャツを脱ぎ捨てる。普段の落ち着いた所作からは想像出来ない荒っぽさとか、露になった身体の逞しさとか。真斗の全てに心臓が跳ねて、熱が全身を駆け巡る。



「お前が欲しい」
「…っ」
「良いか?」


そうやってちゃんと丁寧に聞いてくるの、ずるい。ずるいよ。


「聞か、ないで」
「七瀬」
「真斗にされて、嫌なことなんて、何もないよ…」

偽りのない、本音。
実際私の全身は完全に熱を持っていて、どうも収まりそうにない。
身体が心が、あなたが欲しいって訴えてるから。



封を切って中身を取り出された正方形の空袋が、枕の横に落ちる。それを見つめていよいよだと、緊張と期待が走った。ぐっと足が開かれて熱い先端が当てがわれて。「あっ…」と漏れた声はもう掠れてしまっている。


「…っ、あぁっ!」

次に襲ったのは、少しの圧迫感と強い快感だった。私のナカで熱くうねる真斗自身に、心も身体もいっぱいに満たされる。一番深くまでぐっと挿入された頃には痛みなんてなくて。腕を伸ばしたら、ぎゅっと抱き締めてくれる身体。私と真斗の素肌が、ぴたりとくっついた。


こうして密着すると胸の鼓動が直接聞こえてきそうで不思議だ。その温かさにしばらく酔いしれていると、真斗がゆるゆると腰を動かして、また違う快感に全身が震えた。



「んっ…ふ、ぁっ」

真斗に奥を突かれる度に、自分の意思と反して声が出てしまう。口から漏れる赤ちゃんみたいな高い声が恥ずかしくて、聞こえないように片方の手の平で口を塞いだ。
だけど、律動を繰り返す真斗の手によって、そっと外されてしまう。


「ゃっ!へんな、声…でちゃ、」
「聞きたい」
「だめだよっ…ぁっ」
「俺しか聞いていない、大丈夫だ」


外された手の平と一緒に、もう片方の手も掴まれて、顔の横のシーツに縫い付けられた。
優しく指を絡められる。それが嬉しくて、爪痕がつかない程度に強くぎゅって握り返した。


「あっ…真斗っ…、ゃ、ぁん…あっあっ、」
「…っ、七瀬」


その間にも絶え間なく与えられる快感に、もう我慢なんて出来なかった。

自然に滲んだ涙のせいで霞んだ視界、映る真斗も息を切らしながら余裕のない顔をしていて。それがまた愛しくて胸が高鳴る。


どうしよう、もう止まらない。


真斗の動きが段々と大きくなっていく。動きが激しくなって、腰を打ちつけられる度に響くベッドの軋む音。それに重なる息遣いがさらに荒くなっていくのが分かって。


「だめ、ぁっ…もう、まさ…とっ」
「あぁっ、すまない、俺も」
「だいじょぶ…ん、ぁ…我慢しないで…?」
「すごい殺し文句だな…!っ、」


動きが今までで一番速くなったと同時に、真斗が噛み付くように私の首元に顔を埋めた。 大きく吸われる首筋と、止まらない腰の動き。

真斗の青い髪をくしゃりと掴んで、私も必死にしがみついた。
いよいよ限界が近い。気持ちが互いに通じたのか、顔を上げた色っぽい顔をした真斗と目が合った。そのまま唇を奪われて、必死に応えるように舌を絡めた。

気持ちが、溢れる。


「あっ…やんっ…!…はぁ、やっもう…あっ、」
「七瀬、七瀬っ…」


好き

真斗が大好き──。




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