【とある休日】


今日は土曜日だから仕事はお休み。
一人で街中のショッピングモールに買い物に出掛けていた。

洋服とか、化粧品とか…欲しいものをいくつか購入して、ぷらぷらと歩く。
何となく、いつもは立ち寄らないCD屋が目に入った。



「わぁ…すごいなぁ」

ST☆RISHだけで特設コーナーが出来ている。やっぱり超人気アイドルなんだなぁ、と実感した。

この前CM撮影で一緒になった聖川さん。
何だか不思議だけど、彼の曲を聴いてみたいなと思った。こちらを見て微笑む、そのジャケットに写る顔を見てやっぱり素敵だなぁ、なんて思ってしまう。

どうしよう…せっかくだから聴いてみたいけど、数がありすぎてどれから聴けば良いか分からない。


うーんうーんと、一人で唸る。側から見たら不審者かもしれない。とりあえず一番目立つ場所に並んでいる、今週発売したと思われる新しいシングルを手に取ろうとしたところで、同じタイミングでCDを取ろうとした人と手がぶつかった。


「あ、すみません」
「こちらこそ…って、聖川さん!?」

驚いた。今買おうとしていたCDを歌う本人が目の前に現れたのだから。

キャップを被って、黒縁の眼鏡をしていたけれど、すぐに聖川さんだと分かった。彼も同じように驚いたような表情を見せる。


「櫻井さんは、どうしてここに…?」
「今日は仕事が休みなので、買い物を…聖川さんは?」
「収録の間に空き時間が出来たので、時間を潰そうかと思いまして」


それで新曲がどう陳列されているかを見に、と少し気まずそうに話す聖川さん。いつも新曲が発売されるたびに、CD屋さんへ行って、自分のCDが売られている様子を見に来るのだという。

すごい、真面目だなぁ。撮影で一緒になった時の印象と変わらない。
けれど、それを見られて恥ずかしそうにする聖川さんの姿が、ちょっぴり可愛いなんて思ってしまった。


「…櫻井さんは、買おうとして下さったのですか?」
「え!あ…えっと、そうですね…」


聖川さんの歌を聴いてみたいと思って──だなんて恥ずかしくて言えない!ましてや本人の前でなんて。

ありがとうございます、と聖川さんは微笑んでくれたけど、CDを買おうとしていたところを本人に見られた時点で、結構恥ずかしい。



「CDたくさん出されてるんですね!ちなみにおすすめとかありますか?」

そう言ってなんとか誤魔化そうとする。聖川さんはそうですね…と言って、並べてあるCDを眺めた。


「初期の曲だと、この辺りとか…あと今回の新曲もとても気に入っていますよ」
「へぇー…そしたらおすすめしてくれたのと、新曲を買おうかな」
「新曲のCDでしたら、俺が今持っています。よろしければ差し上げますので」


渡すなら店の外で…と聖川さんに誘導される。
聖川さんはバッグの中から先程並んでいたCDと同じ物を取り出し、私に手渡してくれた。


「い、いいですよ!そんな悪いですし!」
「いえ、よろしければ聴いて下さい」
「でも…」
「もう一つのCDも自宅へ行けばあるので、次お会いした時にでもお渡しします」


『次お会いした時に』

なんてことない一言だけど、もしかしたらまた会えるのかなと思ってしまう。胸が少し、きゅんとした。
でもさすがにもらってばかりは申し訳ない。


「…時間何時まで大丈夫ですか?」
「え?まぁ、あと1時間くらいでしたら…」
「そしたら、少しお散歩に付き合ってもらえませんか?」
「?」




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