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予定していた仕事が延期となり、思いがけずオフとなった。莉子に電話をかけてみるが、応答はない。眠っているのだろうかと、さほど気にすることはなく帰路について部屋のドアを開けた。
「莉子?」
いつもなら笑顔で出迎えてくれるその姿は見当たらない。リビングへ行くとスマホはテーブルの上に置いたまま。別の部屋にいるのだろう、と思い探していると、寝室から莉子の声がドア越しに漏れていた。
「えっと、これは…!ち、違うの!そのっ…」
「……」
想像をして欲しい。
好きな女が、自分のベッドの上で自分の洋服を抱き締めて…名前を呼びながら自慰をしていたら。
我慢出来る男などこの世にいるのだろうか?いや、いないだろう。
その姿を見た瞬間、ドクンと一気に下半身に血が流れる。気付けばなかなかイけないと嘆いていた莉子のナカに指を突っ込んでいた。息が自然と荒くなる。久しぶりの熱、ぬるりとした感触、莉子の息遣いに…ただ興奮した。
弱い部分を擦れば、いとも簡単に達した莉子。だが当然、それだけで俺が満足出来るはずはない。
「…っ、莉子…!」
「ぁ、真斗…んぅっ、」
ギシリとベッドが大きく音を立てたと同時に、莉子をベッドに押し付ける。べとべとになった指もそのままに激しく莉子の唇を奪った。
「あっ、は…んっ…」
口の端から漏れる吐息ですら興奮の対象になる。唇ごと飲み込むよう、深く深くキスを繰り返して、その度に荒くなっていく互いの呼吸の音。
キスをしたまま、豊満に膨らんだ胸を洋服の上から片手で掴む。が、すぐにパッと離して同時に唇からも離れれば、莉子は物欲しそうに俺を見上げた。
「あ、真斗…な、んで…?」
「自分で触ってたのだろう?どのように弄っていたか…俺に見せてくれるか?」
「や、やだっ」
「嫌?」
湧き上がる欲情を必死に抑えながら、莉子の着ていたニットをインナーごと捲し上げる。素直に両腕を挙げスムーズに脱がせてくれるあたり、相当莉子も早く触れられたいのだろう。
そんな仕草を見ていると、益々虐めたくなるのは男の性だろうか。
「俺を差し置いて一人で勝手に気持ち良くなったのは…莉子だろう?」
「だ、だってそれは…」
「一人で先に気持ち良くなっていた罰だ。ほら」
「う、ぅ…」
遂に我慢が出来なくなったのか、莉子はおずおずと自分の胸に手を伸ばして、そこに触れた。ブラ越しに自分の胸を揉む莉子の表情が徐々に歪む。ぐにぐにと形を変える胸の様子も相まって、視覚的に興奮が募っていく。遠慮がちに突起を擦る指先も、擦り合わせる太腿も…全てに触れたくなってしまい喉が鳴った。
莉子の自慰を手伝うように、スカートに手をかけ脱がせるも、肝心な部分にはあえて触れない。そんな俺に不満を抱いたのか莉子が唇を噛んだ。その表情もまた良い…と思いながら、自分の胸を揉む莉子の手に、俺の手を重ねた。
「やだぁ…もう…」
「どうした?」
「自分で、さわるの…や…真斗のが良いっ」
「…そうか。具体的に言えるか?」
「…っ、ここ舐めて…下もっ、ぐちゅぐちゅ、してほしいの…!」
本当ならばもっと焦らしたいが…涙目で必死に訴える莉子を見て無論我慢出来るはずはなく。
ブラを引き剥がし、ピンと赤く立った突起に舌を滑らせた。待ちわびた刺激に全身を震わせ悦ぶ莉子を抱き締めながら、はしたなくもわざと音を立てて強く吸う。
「(…いかん、はち切れそうだな)」
パンパンに膨れ上がった自身の硬さは、ズボン越しでも分かる程だ。禁欲していた間、一度も出してないからな…だが目の前に莉子がいる今は、それはもう関係ない。
行為を繰り返しながら、勃ち上がった股間を莉子の太股の間に押し付ける。
「ひぅっ…!や、ん…」
先程達したせいか濡れそぼったソコは、押し当てただけで俺のズボンを濡らした。莉子の弱い部分でもあるクリトリスにぐりぐりと股間を当てて刺激を与えると、莉子が大きく腰を浮かせる。胸から顔を離しその表情を確認しようと顔を上げると、莉子の両手が俺の頬を包んだ。そして触れる、唇。莉子からのキスだ。
「真斗…おねがいっ、もう我慢出来ないの…!」
「…後ろを向いて、腰を浮かせろ」
「…!い、いきなり後ろから…!?」
「ほら、早くしてくれ。俺ももう限界なんだ」
ずっと溜まっていたからな。
そう口にして、音を立ててベルトを外す。適当に放り投げてる間にも、莉子は従順に俺の言うことを聞いてベッドの上で四つん這いになる。その素直さも、また可愛くて可愛くて仕方がない。
「まさと…はやくっ…」
「そう焦るな、すぐに──ほら」
「あっ…!やぁっ、すごいっ…!」
ずんっ、と一気に奥まで差し挿れ、ぐるりと腰を回した。待ちわびたように締め付けてくるソコが、堪らなく愛おしい。気持ち良さそうに腰を反らせた莉子の胸を後ろから鷲掴みながら、更に腰を前後に揺らした。
「あっあっぁ、おっきぃっ…!まさとっ、きもち…!」
「はっ…!自ら尻を振っていやらしい女だ…!」
「だって、だってぇ…!欲しかったの、っ…やんやんっ…」
「莉子っ…はっ…」
「真斗はっ…?きもち…い?」
頬を枕に埋め、息を切らしながら俺の顔を窺ってくる莉子。その愛おしさに小さく微笑み、顔を近付けキスを落とした。もちろん、その間も動きを緩めることはせず、むしろ激しく奥まで突きながら。
「あぁ、最高だ莉子…おかげで腰が止まらないぞっ…!」
「あぁっ…んっ、は…も、だめっ!」
限界を迎え先に達した莉子が膝から崩れ落ちた。その反動でぶるんとまだ大きいままの自身が抜ける。莉子はベッドにうつ伏せの状態で、指をくわえながら荒く呼吸を繰り返していた。
だが、まだ休ませるつもりはない。寝そべったままの莉子の上に乗り、そのまま角度をつけてもう一度挿入した。
「ひゃっ…なに…!?」
「まだ休むのは早いぞ。俺はまだイってないんだ、もう少し付き合ってくれ」
「んぁっ」
驚いた様子の莉子が逃げようと身体を動かすが、覆い被さってしまえば逃げ場はない。身体をぴったりと密着させたまま、上から激しく奥を狙って揺り動かす。
「やだこれっ…ぁ、おく…あたるっ…」
「寝バックは女性が気持ち良い体位らしいからな…どうだっ…?イイだろう?」
「あっあ、すごっ…ぃ、んぁ…!」
激しく動かす度、肌同士がぶつかる音がパンパンと響く。シーツを掴んで必死に快感に耐える莉子の後ろ姿に、また興奮して動きが止まらない。
莉子の締め付けが一層キツくなった瞬間、ずるりと勢い良く抜いた。…危ない、もう少しで俺もイクところだった。
莉子が「ど、して…?」と泣きそうな顔で俺の方を振り向いた。身体を支え、莉子を仰向けに寝かせる。足を大きく開くと、誘うように体液が太腿まで滴っているのが見え、そのいやらし過ぎる光景に息を吐いた。
「やはり…最後はイク顔を見たいからな…」
「あっ…わた、しも…」
「奥まで挿れて突いて…ナカに出したい」
「真斗…っ」
「良いか?」
「うんっ…今日は、だいじょぶ…真斗のっ、せーえきっ…いっぱいちょうだいっ…!」
「莉子っ…!」
勢い良く腰を進めると、音を立てて飲み込み莉子と中まで繋がった。搾り取るような強い締め付け、包まれるような熱。
…今日ばかりは優しく出来そうにないな。いや、いつも我慢しているつもりもないが──今日は本当にまずい。
「あっあん…!まさと…真斗っ…きもちいよぉ…」
「はっ…そんなに、俺に抱かれたかったのか…!?」
「うんっ…真斗と、えっち、したかったのっ…!もっと、いっぱい、シてっ」
いつもの、清純な莉子とは違う。欲望にまみれて、ただ本能で俺の身体を求める姿。
こんなにも淫らな姿を見れるのならば…たまの禁欲も、
「(悪くはないな)」
「ああっ…!そこ、ぐりぐり、だめっ…!いっちゃ、またいっちゃう…っ!」
「はっ…莉子…俺ももう、」
「んぁっ、ああんっ、あ…!真斗っ…!」
ギシギシと激しく軋むベッドの上で、キツく身体を抱きしめ合う。その温もりの中で近づくは性的快感。ふつふつと湧き上がる欲を今度は抑えることなく、ただ奥まで突き上げた。
「真斗っ…ぁ、あっ…やぁっ…!」
「…っ、出すぞっ…!」
「あっや、…んっ、あぁっ──!」
キツい締め付けについに限界を迎えた俺は、莉子のナカに勢い良く射精をした。何度か腰が震えるタイミングで、熱い精子が注がれる。赤い顔で惚ける莉子の髪を撫でて掻き上げて、額、頬、唇に順にキスを落とした。開いた口に舌を入れて、しばらく絡ませながら、落ち着いた頃合にずるりと自身を抜いた。
「……」
「莉子?」
「はず、かし…」
唇を離すと、すぐさま莉子が両手で自分の顔を隠す。髪から覗いている耳が真っ赤に染まるのが見えて、追加でそこに唇を寄せた。
「可愛かったぞ。そしてエロい、最高にな」
「やぁだ…も、忘れてっ」
先程までの自身の乱れた姿を恥じた莉子をもう一度抱き締めて頬を撫でれば、いつもの穏やかな顔に戻った莉子は、「もう、意地悪しないでね」と、俺が果たせないであろう約束を小さく口走って笑った。
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