▼ 3
「真斗、お風呂ありがとう…」
「あぁ、こちらこそありがとう。美味しかった」
浴室を出て、リビングにひょっこりと顔を覗かせる。洗い物を終えた様子の真斗が手を拭きながらこちらを振り返った。
先程まで肉じゃがが入っていたタッパーを綺麗に洗った状態で返してくれる。
部屋に入って早々、真斗に先にお風呂に入るよう促された。真斗の方が疲れているし、と思い遠慮したけど強引に押されてしまったのだ。
「じゃあ入ってくる。良かったら先に休んでいてくれ」
そう優しく微笑んで頭をぽん、と撫でられる。「うん」と返してお風呂に向かう真斗を見送った後、ソファに座ってクッションを抱き締めた。せっかくだから戻ってくるまで起きて待っていたい…そう思うのに12時を過ぎたせいか、ふつふつと睡魔が襲ってくる。
「…真斗の香りがする」
なんて、変態じみた事を思いながら抱えたクッションに顔を埋めた。くっつきそうな瞼を開いては閉じてを繰り返し、何とか気を逸らしながら眠気と戦った。だけど、徐々に意識は遠のいてしまって───
「…ん、ぅ、」
温かいぬくもりとお風呂上がりの石鹸の香りに、うっすらと目を開ける。身体が空を飛んでいるように、ふよふよと浮いている…なんだろう。
身体が柔らかいベッドの上に置かれる感触に薄目を開くと、白い天井と一緒に真斗の顔が映った。
「すまない、起こしてしまったか?」
眠い私を気遣ってか、小さな声で優しく囁かれる。真斗を目で追いながら、ようやく自分がソファで寝落ちしてしまっていたのだと気付く。
「ごめ…私、寝ちゃってたみたい…」
「良いんだ。先に休めと言ったろう?」
枕の上に頭を置かれ、真斗はベッドに腰掛けた。前髪を撫でられる感触が気持ちよくて目を瞑ったら、眠いと思われてしまったのか「寝て良いぞ」と真斗の言葉。これにふるふると首を横に振った。
だって、寝たくない。もう眠気だって覚めたもん。せっかくの真斗の誕生日だからたくさん一緒にいたいのに。
「隣の部屋にいる。何かあれば呼んでくれ」
「えっ」
額にあったぬくもりが離れ、寂しくなる。立ち上がり私から離れようとした真斗の服を、咄嗟に掴んで引き止めた。真斗は少しだけ驚いた顔をしたけど、すぐにまた頭を撫でてくれる。ぽかぽかの手が温かい。
「明日の仕事の準備をしてくるだけだ。すぐに戻るから」
「違う…そうじゃ、なくて」
私ってどうしてこうも口下手なんだろう。
ちゃんとはっきり伝えなくちゃ。今日くらいは、素直にならなくちゃ。
「やだやだ真斗、待って…」
「どうしたんだ今日は…珍しいな」
「……その、」
真斗の服を掴んだ手にきゅっと力を入れて、私は思い切って起き上がった。
「今日は、朝までくっついていたい…」
勇気を振り絞って出した声は相当震えていたと思う。少し驚いた顔をした真斗。すぐに私の視界が暗くなる。灯りを消してくれたからじゃない、真斗が私の身体に覆いかぶさったから。
「まったくお前と言う奴は…意味を分かって言っているのか?」
まっすぐな瞳に見つめられ、指で唇をなぞられればスイッチが入ったように身体が熱くなる。
ぎゅってして欲しい。キスして欲しい。
抱いて、欲しい。
全部言葉にする前に、こくりと小さく頷いた。
口を開こうとすると勢いよく塞がれる。今日は「待って」も「嫌」も言わない、ただ絡まれる舌を必死に追いかけた。
「んっ…ぁ、」
舌を吸われる感覚が気持ち良い。好きって気持ちが大きすぎて、呼吸をする時間すら惜しくなる。
キスに夢中になっていると、真斗の指がスっと私の首を滑った。首筋をなぞるように触れられゾクッとしてまた感じちゃう。
その指が焦らすように徐々に身体を這うように動く。パジャマの間に手が入ってお腹を撫でられて、ついに胸の上に届く。その時ふと頭をよぎったのは、先日の買い物の出来事だった。
「…っ、ま…まさと!あの、」
「ん?」
し、下着!
今日、あの日に買った勝負下着をつけてるんだった!
いざ、あれを見られるとなると急に恥ずかしくなった。いや、そのために買った物ではあるんだけど…!
「あ、あの…今日は自分で脱ぐから!」
「焦らさないでくれ。俺は一刻も早く莉子に触れたいんだ」
「けどっ…!えっと、」
パジャマのボタンは真斗の手によってあっという間に外されてしまった。ボタンが全て外されブラが露になると真斗の手がピタリと止まる。
絶対に赤くなっている顔を見られたくなくて、顔を横に逸らす。ベッドサイドにある置時計を見つめていると、パジャマのズボンが脱がされていくのが分かった。上の袖も全て剥がされ私は、下着一枚の姿でベッドの上に仰向けになった。
じっと見下ろす真斗の視線に耐えきれず、両手で胸元を隠す。その手はすぐに拘束されてしまい、頭の上で一纏めにされてしまった。
「…自分で用意したのか?」
「そんなっ、見ないで…」
身につけているのは、透けた紺色の生地に赤色の花があしらわれた大人なランジェリー。
ブラとお揃いのショーツはガーターベルト付きで、黒のニーハイストッキングを履いた足を擦り合わせて恥ずかしさを紛らせた。
「今日は抵抗しないでくれるな」
「ん…」
拘束されていた手首は、あっさりと解放された。 真斗の言葉通り私は、抵抗することなく逆にその腕を真斗の首に回してぎゅっと抱きつく。
片手で少し乱暴に揉まれる胸も、音を立てて吸い付かれる耳も、全てがいつもより感じちゃう気がする。耳の裏に噛みつかれて…あぁ多分跡になっているな、とか髪結んだら見えちゃうな、とか色々考えるけどそんな事どうでも良いくらい今は真斗だけを感じたかった。
「あっ…あの、真斗…」
「どうした?」
ブラの上から胸の突起をきゅぅっと摘まれ全身が震えた。直接触れて欲しいのに中々してもらえず焦らされる。けれどそれすらも刺激になるから不思議だ。
「これっ…どう、かな?」
肩紐を掴んでおずおずと尋ねてみる。やっぱり、似合ってなかったかな。真斗はふっと微笑んで身体をに触れながら優しいキスをくれる。全身のラインを確かめるように滑る手の平が擽ったくて、それもまた快感を覚える。
「あぁ…最高の誕生日プレゼントだ」
「ほんとう…?」
「脱がせるのは、勿体無いな」
その言葉通り、下着を履いたまま下部に指があてがわれる。下着ごとナカに指を入れられるとくちゅ、と音が聞こえた。わざと音を立てて強引に指を入れられ、ナカを擦られる。奥まで指が届かないのがまた焦れったい。
「んっ…あっ、」
「どうした?腰が揺れているぞ」
「だって、」
わざと音を立てるように擦るのに、なかなか直接は触れてくれない。すると敏感になっている下の突起を突然くに、と押された。急な刺激に、全身に電流が走ったように快感が走る。
「んっ…!」
引こうとした腰はすぐに掴まれてしまい、逃げ場がなくなる。更に下着の横から指が侵入して、直接真斗の指がソコに触れた。
「…っ!あぁっ…」
待ち構えていた刺激と快感に、目の前が真っ白になった。どうやらすぐにイってしまったようだ。
「はぁっ…はっ、あっ…」
「随分と早かったようだな…そんなに欲しかったのか?」
「ごめん、なさ…」
謝らなくていい、と優しい言葉をかけられながらショーツから足が抜かれる。太腿にショーツが引っ掛かったまま、晒された部分が恥ずかしい。真斗は何も言わないでじっとソコを見つめるから余計に羞恥心が煽られる。やだ…イったばかりだからか、垂れてきてる…。
「…!や、」
閉じようとした足は無理矢理開かれて、いつの間にか足の間には真斗の顔。
「すごいな、舐めても溢れてくる」
「いわないでっ…あっ、んっ…!」
割れ目を舌でねっとりと舐められ、指先で突起を同時に弄られる強い刺激に身体が震えた。だめっ…どうしようもなく感じて、またイっちゃう…!
「あぁっ…、やっ…!」
ぱしゃぱしゃ、と音を立てながら何かが一気に吹き出る感覚がした。たださえ濡れていた身体が下着やストッキングまでびしょびしょになる。
初めて経験する…たぶん潮吹きってやつなんだと思った。もうどうしようもなく恥ずかしくって涙が出てくるって言うのに、真斗は顔を上げて嬉しそうに笑うから何だか悔しくなった。
「うっ…ひっく…も、嫌…」
「あぁ良いなその顔…もっと泣かせたくなる」
「いじ、わる…!」
親指で自分の唇を拭う真斗のニヤリとした笑顔にゾクゾクする。分かってる、本当は…もう欲しくてたまらないんだってこと。
「ほら莉子、こっちへ来るんだ」
「んっ…」
促されるままベッドの上に座った真斗の上に跨る。反り立った真斗のそれが目に入り、思わず視線を逸らす。けどすぐに頬に手を添えられ正面を向かされてしまった。
欲望に染まった視線がかち合い、身体が自然と動いた。
「やっ…こんな大きいの、入んな…っ」
「大丈夫だ。…俺に、身を任せろ」
「んっ…はぁっ…」
「そう、上手だ」
ぬるぬるになった私の身体は、いとも簡単に真斗を受け入れる。ゆっくりと腰を沈めていくと圧迫感と快感が私を襲った。腰をがっちりと押えられているから逃げようにも、逃げられない。
根元まで飲み込んで真斗にぎゅってしがみつく。
真斗の肩に顎を乗せてひと息つこうとしたらそんな暇はなく、下から勢いよく突き立てられた。
「やっ…待って、そんな激しくしちゃ、」
またすぐにイっちゃうのに…!
真斗は動きを緩めることなく、ずんずんと突き上げる。激しく身体を揺さぶられたせいで、ブラの肩紐がずれて肩から落ちる。
すると、真斗が片手でブラの肩紐を掴んだ。紐が勢いよく肘の位置まで引き下ろされ、ぷるんと胸が露になる。
先端を舌でなぶられ、弱い所を同時に責められる。また、すぐに限界を迎えそう。
「まさ、と…っ、」
「何だ?」
「すきっ…おめ、でと…ぁっ、」
声にならない声でそう伝えると、真斗は「ありがとう」と言う。後頭部に真斗の手が触れて、髪をくしゃっと強く掴まれる。そのまま喘ぎ声ごと飲み込むように唇が覆われた。
食べられちゃうような、激しいキス。
いつも優しい真斗のこの強引な仕草が、私はすごく好きだったりする。
「やぁっ…!んっ、あっ、ぁ…!」
「…っ、は…、」
ほぼ同時に限界を迎えた私達。冬なのに汗ばむくらい熱くなった身体をぎゅうっと抱きしめ合い、呼吸を整える。
しばらく経ってから身体が離れ、ベッドに寝かされる。行為の激しさに頭がぼんやりしているのに、
真斗はまた私に覆いかぶさってきた。
「今日は、朝まで付き合ってもらうからな?」
「うそっ…」
「先にけしかけたのは莉子だろう?」
「そうだけど…!」
身体はもう限界のはずなのに、触れられるとまた熱くなっちゃう。そのまま二回戦に持ち込まれ、私はまた真斗の熱に溺れていくのだった。
▼ ▲