あなたが生まれた真冬の日


「え?じゃあ、誕生日一緒に過ごせないの?」


外の空気がすっかり冷たくなった12月の下旬。
今日は紗矢ちゃんと友ちゃんとウインドウショッピングにやってきた(残念ながら春ちゃんはお仕事の都合で欠席だ)。


「うん、その日は紅白のリハーサルとバラエティの収録もあるって聞いてて…」
「まぁ…年末忙しいのは仕方ないよね、アタシ達の仕事柄さ」

可愛いデザインのニットワンピを私の身体に当てながら友ちゃんがそう話す。うん、似合う!と紗矢ちゃんもそう言ってくれるけど、可愛い服を見ても私はいまいちテンションが上がらずにいた。


「仕事だから仕方ないって分かってるけど…やっぱり、ちょっと寂しくて」
「莉子…」

…なんて、わがまま言っているのは分かっている。真斗は一生懸命お仕事を頑張っているのだから、応援してあげなくちゃいけないのに。



「大丈夫!年末年始会えなくても、テレビ越しに見れるし!きっとどこかでデート出来ると思うし」


そう、お誕生日おめでとうなら直接言えなくてもお祝いは出来る。もちろん、直接会って顔を見て伝えたいけど、真斗に迷惑をかけるのだけは嫌だから。




「…よーし!今日はとことん、莉子の買い物に付き合うよ!」
「紗矢ちゃん…ありがとう」
「そうと決まればー…早速行くわよ!」
「早速?どこへ?」


結局友ちゃんが選んでくれたアイスグレー色のニットワンピを購入した私の手を、二人が引いて別のお店へと向かう。


お店の入口をくぐって、その華やかな品々を見てぎょっとしてしまった。こ、ここって…


「私、帰る!」
「ちょっと待ったー!」


踵を返そうとした私の腕を紗矢ちゃんが掴んだ。だって、ここ…ランジェリーショップじゃない!しかも普通の下着だけじゃなくて、セクシーな物を置いていることで有名なお店だ。こんな場所、恥ずかしくて耐えられないもん!


「まさやんに喜んで欲しいんでしょ?アタシと紗矢で選んであげるから!」
「うぅ…けど」

色っぽい下着なら、前に真斗からプレゼントしてもらった物もあるし…って、そんなこと二人には言えないし…!


「良いから良いから!私達に任せて!」

結局、腕を引かれお店の中へと強引に引き込まれてしまった。確かに可愛いなぁと思うデザインばかりだけど…


「こんなの、私似合わないよ」

レースやフリルがたくさんついたブラを手に取るけど、自分で着こなせる自信はない。だって私スタイルだって普通だし、似合わないって思われて、真斗をがっかりさせたくない。


「…こんなカラダしておいて何言ってんの!」
「ひゃあ!」


背後から友ちゃんにがしっと両胸を掴まれ、思わず変な声が出てしまった。お店の中で恥ずかしいよもう!ていうか、友ちゃんが言っても何も説得力ない!

ぷぅ、と頬を膨らませる私の横で二人は楽しそうにアレコレ言いながら商品を物色している。
ふ、二人とも…やけに楽しそう、ていうか楽しみすぎてない!?


その後10着近く試着をさせられ、最終的に気が付けば私の手には下着の入ったショッピングバッグがかけられていた。紗矢ちゃんと友ちゃんが勧めてくれた下着…勢いでつい買ってしまった…。


次のデートで絶対着てね!と二人に念を押され、頷いてバッグをぎゅうと握りしめた。


「(真斗、喜んでくれるかな…)」


自分では絶対選ばないようなちょっと大胆な下着だけど、いつも自分に自信を持てない私にほんの少し勇気を与えてくれる気がした。




  
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