抱かれて


「あっ…トキヤ、ん、」
「そういえば、まだ言ってませんでしたね」
「な、にが…?」

繰り返されるキスの合間に、呟いた。答えを聞こうとした紗矢の言葉を遮るように、また重ねた唇。今日、何回目のキスかも分からない。


「水着、とても似合っています」
「ほんとう…?」
「はい。…ですが、」

今にもまた唇が触れてしまいそうなくらい、至近距離で見つめれば、潤んだ瞳と目が合った。そのまま右手で彼女の太腿を、左手で腰を撫でた。


「少し、露出が多すぎではありませんか?」
「そんな、こと…」
「他の男の視線に気が付きませんでした?…皆見てましたよ、紗矢の身体を」
「だってそれは、…ただトキヤに喜んで欲しかっただけなのにっ」

そんな可愛い言い訳をしてくる紗矢が愛しくて、今度は啄むキスを一つ。
そのまま上に向かって滑らせた両方の手のひらで、胸を下から持ち上げるように揉みあげた。自分の手が胸の形を変えているその光景に、妙に満足してしまう。
彼女は、自分だけのものだと。そう自覚出来るからだろうか。


「んっ、トキヤぁ…」

肌がやたらと露出されている水着。首の裏で結ばれている紐を噛んで引っ張れば、簡単に解ける。はらりとビキニが落ちて胸が露わになった。
耳、首筋、鎖骨と順に唇を落としていく。少しだけ香る、塩素の独特の匂い。
姿を見せた胸の突起にも唇を寄せれば、紗矢は肩を大きく動かした。
舌でなぞりながら顔を見ると、目を瞑り口を手の平で抑えている。


「んっ…ふ…」

仕切りとカーテンだけで隔たれた空間。隣には人がいるというこのシチュエーションが、さらに興奮を煽っている。



「トキヤ、声…出ちゃ、」

下の水着も同じように紐を解いたところで、紗矢が弱々しく私の手を掴んで抵抗した。
本当は止めて欲しくないだろうに…本当に、可愛いと思う。



「濡れてますよ」
「やっ…」
「水じゃありませんね?」

ヌルヌルとした下部に、直接触れる。明らかに水ではない感触、それを指摘すればまた彼女はいやいや、と首を横に振った。


髪を纏めているゴムを指で外せば、水を含んだ髪が肩に落ちる。前髪から水が滴っていて、いつもとは違う色っぽい紗矢に、また欲情したのが分かった。


「ふっ、ぅ…あ」
「すみません、我慢出来ないので挿れます」
「や、嘘でしょっ…」
「ここで嘘をつくなんて、何の冗談ですか。いやらしい水着で誘っておいてよく言いますね」


…こんな所で女を抱くような、そんな男ではなかったはず。私は自分で自分のことを、もっと理性のある人間だと思っていたのに。



「やぁっ…、あぁ、と、きや…」

「こうなるのは、全部あなたのせいです」


そう、自分がこんな風になるのは紗矢のせいだ。そう言い訳をしながら、立った状態のまま自分のモノをを突き立てた。



「…っ、声は、我慢してくださいね、」
「あっ…んっ、んっ、」
「ほら、隣にほかの客もいるでしょう…?」

かろうじてシャワーの音である程度は誤魔化せるだろう。しかし、いつバレてしまうか分からない。
それが余計、良い。


ぱしゃぱしゃと響く音、その音がどんどん激しくなっていく。何も考えられないくらい紗矢に夢中になっている自分がそこには居て、彼女と出逢う前の自分じゃ考えられなかった。


「あぁ可愛い、好きです紗矢…」
「ときや、私も…」


射精する直前に抜いて、白い液体がシャワーの水によって下に流れていくのが分かった頃、紗矢からキスをくれた。それに応えるようまた唇を重ね、お互いずぶ濡れになった身体を抱きしめた。




  
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