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・旅行直前 ・入浴中に何故か浮かんできたネタ ・誰得でもない^q^ 温泉旅行となれば準備はやはり必要だ。 近くには海もあるそうで、そうなると幼い双子は遊びたいとはしゃぎだす。 つまり水着やらパラソルやら、そういった準備もさらに必要となるわけで――。 「ちょっと」 料理中、旅行の準備に思考を巡らせていたシヴァは背後からの声にそっと体の向きを変えた。 ちなみに料理はほぼ毎度シヴァの担当になっている。 優乃と大樹が台所で料理をしようとすると、本人たちの意思とは無関係ながらも結果的には非常に危険な凶器と化すし、クリアは背が低いため一人で料理をするには心もとない。 そのため決して料理が好きだというわけでもないのだが、両親が不在の間、必然的にシヴァが台所を担当することになるのだった。 それはともかく。 フライパンを熱していた火を止め、完全に振り返る形でしゃがみ込む。 フローリングにぺったりと両手両足をつけてこちらを見上げていたのは―― 一匹の巨大な山椒魚、だった。 その存在感は異様なほどで、馴染みのない者ならばそれだけで尻込んでしまうかもしれない。 それほど黒々としたまん丸の瞳はどこまでも真っ直ぐに、ひたむきに、こちらの視線を射抜いていて。 「レイル、どうかした?」 「どうかした、じゃないわよ。温泉旅行に行くんですって?」 山椒魚――レイルと名づけられている――は女性を思わせる声でそう言った。 言った、といっても本当に喋ったわけではない。ある種のテレパシーのようなものだ。 なぜ山椒魚がそんなことをできるかといえば、答えは至極簡単なことであり。 その異常な巨大さからも分かる通り彼女はただの山椒魚ではなく、クリアに仕える魔獣だから、なのであった。 剣呑な雰囲気を孕んだ――そもそも彼女が庭の池から単独で出てくることも珍しいかもしれない――山椒魚を見つめたまま、シヴァは小さくうなずいてみせる。 彼自身は特に何かを感じているわけでもないような、いつも通りの笑みを浮かべたまま。 「うん、大樹がくじ引きで当てたんだ。クリアに聞いたのかい?」 「ええ、そうよ……ところで!」 彼女はキッと、声を一際高く張り上げ。 「どうしてあたくしが行けないというの!? そんなのおかしいじゃない!」 感極まったのか、山椒魚はその腕を床にぺちぺちと、それはもうぺちぺちと、ひっきりなしに叩きつける。 全身がしっとりと湿っているためにぺちぺちと叩かれた床は必然的に濡れたような跡が残っていた。フローリングで正解だ。 しかし後できちんと拭かないと、帰宅した大樹辺りが滑って転ぶかもしれない。 シヴァは「うーん」と短く唸り、頬をかいた。 飼い主であるクリアにべったりのこの生き物のことだから、そう言い出すことは何となく予想できていたけれど。 「ペットは禁止、なんだってさ」 「あんたはいいのにあたくしはダメなの!?」 ぺちぺち 「不公平じゃない、私も連れていきなさい! それくらいできるでしょ!」 ぺちぺちぺちぺち 「あたくしがマスターを守らなくて誰が守るというの!」 ぺちぺちぺちぺち ぺちぺちぺちぺち レイルの勢いは止まらない。怒涛だ。 ――レイルの言いたいことも、少しばかり理解できる。 なぜならシヴァは獣人だ。生活様式や言語等の共通性から容認されているものの、厳密に定義するならば当然人間そのものとは異なってくる。 しかしやはり、「獣“人”」――すなわちヒトとして容認されているのだ。 「魔“獣”」と、違って。 ぺちぺちぺちぺち、レイルは床を叩き続ける。 飽きないのかと疑問に思ったこともあるが、おそらく愚問というものだろう。彼女は呼吸するかのごとくぺちぺち続けている。ある意味リズミカルだ。 レイル、と彼女の名前をそっと呼ぶ。 反射的に顔を上げた彼女に、シヴァはふわりと微笑んでみせた。 「クリアたちは僕が守るよ」 「でもっ――」 「お土産、買ってくるから」 「ちょっと!? そんなので騙されるとでも……!」 「それに」 シヴァは立ち上がり、エプロンのシワを丁寧に伸ばす。 そろそろ料理に戻らないと夕飯が遅れてしまう。 兄弟はみんな育ち盛りだからなかなか準備は大変なのだ。 「レイル、温泉に入ったら茹でられちゃうと思うな」 「……」 勝負あり、だった。 【準備は計画的に】 (ペットの説得も含めて、ね) >>あまり関係ない呟き。 実のところよく分かってませんが(←)多分、獣人や魔獣はふつうに容認されている世界観なのかなと。 ただ、それでも数でいえばどちらかといえば珍しいのかなぁと思ったり。(鮎柳一家でも3/4が人間なわけですし) 人間の方が獣人より優性遺伝とかなのかもしれないと勝手に想像してみるテスト^q^
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