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朝、いつもの時間に目覚まし時計の音で目が覚めた。それから服に着替えて昨日のうちに準備を済ませておいたリュックを持って一階に降りる。


「おはよ」

「おはようブン太」

「おはよう、史樹たちの着替え頼める?」

「わかったー」


比較的のんびり屋の家族だから、普通慌ただしい筈の朝の時間も緩やかに過ぎていく。


「史樹ーほら着替えるぞー、ばんざーい」

「ばんざーい!」


弟の史樹が両手を上げる動きに合わせて勢いよくパジャマの上を引っこ抜く。ただそれだけの事なのに史樹は楽しそうにキャッキャと笑う。そしてなんでもない、家族と過ごすいつもの朝がなんだか無性に愛おしく感じて俺も頬を弛ませた。


「にぃちゃん!じぶんできる!」

「おし!それじゃあ頑張れ!」

「あぅ〜」

「ん、こーたも着替えるぞ」


史樹の面倒も見つつ、史樹の7つ下、俺と10離れてる末っ子の浩太を着替え始める。

…それにしても改めて年齢差考えると随分年離れてるよなー、あんまそんなこと考えることないから実感湧かねーけどよぃ。


「ブン太ありがとね、そろそろ朝ご飯出来るからもう少し待っててもらえる?」

「大丈夫だよ、怪我しないように焦んないで」

「んもう!ぶんちゃん優しっ!」


母さんはやっぱり朝からテンション高めだね、なんて言えるわけもなく軽く笑って返したら余計母さんのテンションは上がってた。その様子を父さんと苦笑しながら眺めてた。


「あぁそうそう、ぶんちゃん今日学校の帰りにお使い頼まれてもらえる?」


母さんの素早い切り替えのあとに言われた言葉は思いもよらなかったせいか、少しだけポカンとしたアホ面としか言いようがない顔を晒してしまった。それをみて母さんが悶えてたけど見ないフリをして尋ねる。


「…けど、学校にお金は持っていけないよぃ」

「大丈夫!ケーキ屋さんに予約しておいたケーキをお母さんの代わりに取りに行ってもらいたいの、お金はもう払ってあるから安心して」

「それなら行く」

「商店街のよく行くお店だから場所は大丈夫ね?」


母さんの問いにご飯を食べ始めていた俺は首を縦に振って答えた。




......



いろいろぶっ飛ばして放課後〜


「皆ー車には気をつけてね、あと変な人にはついていかないこと、それではさようならー!」

『さよなら〜』


小学6年にもなったら挨拶はしっかり揃わないし少しお座なりな感じにもなる。先生も特に気にしていないのか扉から雪崩のように出ていくクラスメートを挨拶しながら眺めていた。


「あ、ブン太!」

「んー?ジャッカルか、どうしたんだよぃ、…そういや今日はお使い頼まれてるから一緒に帰れねーや」

「そうか、俺も用事あったから一緒に帰れないって言おうと思ってたから気にする必要ないぜ」

「悪ぃなジャッカル、話しかけてきたのってそれでか?」

「おぅ、じゃあ気をつけて帰れよ!」

「お前もなー」


ジャッカルは結構急いでたのか、最後の俺の言葉が聞こえているか不安になるくらい猛ダッシュで帰って行った。


「それじゃあ先生さよーなら」

「さようならー、不審者には気をつけてね」


教室に結局最後の方まで残っていた俺はとりあえず先生に挨拶して教室を後にした。

学校から商店街まではそこまで近くはないけど遠くもない距離だから、いつも学校から家に帰るまでの倍近くの時間がかかる。
…面倒臭くないって言ったら嘘になるけど、道草食ったり歩き回ったりするのが結構好きなせいか楽しいと感じる気持ちのが強かったりする。

ぼんやり空を眺めながら歩いたりするのとか気持ち良くて仕方がないと思うのは俺だけじゃないはず!

そんなことをウダウダ考えながら歩いていたら、いつの間にか目的のお店についていた。ドアを開けるとドアについていた鈴が店内の雰囲気に合った可愛らしい音を店内に響かせる。


「いらっしゃいませー、あらブン太くん!暫く見ないうちにまた可愛くなっちゃって!」

「俺なんて全然!…奥さんは以前から綺麗でしたけど、とても綺麗になりましたね」


俺が笑いながら言うとケーキ屋の奥さんは少しだけ頬を赤く染めながら笑ってきた。


「ブン太くんは相変わらずお世辞がうまいねぇ!」

「いや、お世辞なんかじゃないですよ。…そうだ、今日母の代わりに予約したケーキを取りに来たんですけど」

「ハイハイ!ちょっと待っててねー」


そう言って快活に笑うケーキ屋の奥さんの背を見送って、店内に置いてあるクッキーや、ケーキに合ういろいろな種類の紅茶の茶葉を見ながら時間を潰した。


「お待たせしました、それじゃあ傾けないように気を付けてね。あとオマケにこのクッキーも入れておくねー」

「あ、ありがとうございます!」

「またお待ちしておりまーす」


手を振ってくれている奥さんに手を振り返しつつも家へと帰る道を歩き始めた。

…にしてもデカい。俺が予想していたケーキの箱は何個か入っているようなあまり大きくないサイズの箱。だけど今俺が持っている箱は1ホールほどのケーキが入っていそうな箱。

…こんなに買って食べきれんのかな?

そんな一抹の不安を抱えながら家へ帰る足を早めた。




......



学校から商店街までのいつもはしない遠回りをしたせいか少しだけ疲れたような気がする、…肉体的な疲労じゃなくて精神的なほうで。
思わず出てきそうになる溜め息を必死に飲み込み家のドアを開けた。



パパパーン!



「ッ!?」

『ハッピーバースデーぶんちゃん(ブン太)!』


突然の大きい音にびっくりし過ぎていろいろなことに脳がついていかない。…と言うより言いたいけど驚き過ぎて言葉が出てこなくなったと言ったほうが合ってる。
用事で帰ったはずのジャッカルが何でいるんだとか、赤也とジャッカルって紹介してなかったはずだよなとか、口にしようとしてもパクパクするだけでそこから音が出てこなかった。
暫くしてから少し理解してやっとのことで言えたのは「ありがとう」のたった一言。

改めて玄関を見渡すとそこにいるのはジャッカルと赤也、史樹と浩太だった。父さんはまだ仕事場だろうし母さんは奥にいるんだろう。


「ぶんちゃんお帰りなさい!」

「ただいま!」

「よう、さっき振り…というかお前に幼なじみいたの今日知ったんだぞ」

「ははっ、やっぱまだ紹介してなかったよなー」

「ブン太お帰りなさい、お疲れ様ー」

「ただいま、コレ頼まれてたやつ」


家の中に入りリビングに行くと奥のキッチンから母さんが顔を出していた。母さんの元まで今まで引っ提げてきたケーキの箱を渡してジャッカルたちのところに戻っていく。


「…そういや今日用事あったんじゃないのかよぃ」

「いや…実は前、おばさんにそろそろお前の誕生日だから欲しいものとか知らないか聞いてみたら今日の計画が…」

「主犯は母さんかよぃ…」


朝にはそんな素振り微塵も見せてなかったのに…、侮り難し。
ってか、今日が自分の誕生日だってことも忘れてたしジャッカルが俺の誕生日覚えてたのも意外だったし。


「ブン太ってば新学期になるとそっちばかりに気をとられて自分のこと忘れちゃうから、毎年驚かすのが楽しみなのよね〜」

「あぁ!母さん前科持ちじゃん!すっかり忘れてたよぃ…」

「ちなみに今日は自分のバースデーケーキを取りに行ってもらいましたー」


母さんの悪戯っぽい笑みを後目に、自分の忘れっぽさに嫌気を感じて思わずしゃがみ込む。


「ゴホンッ、それではとりあえず、お誕生日おめでとうブン太。生まれてきてくれてありがとう」

「…母さんも」

「うん?」

「母さんも生んでくれてありがとう」(〜〜〜ッ!ぶんちゃん、大好きぃ!)

(うぉ!か、母さんっ!)



案外幸せ者だって気づいた日

11/04/20

。.。.。.。.。.。.

で、できた…!
実はこの話、取り組み始めたのは1カ月以上前なんですよー、書き上がったのは前日ですけど
どれだけ時間かけてんだって感じですよねー
一週間くらい前になると当日に間に合う気がしなかったので思わず本編と同時進行で話を書くのをやめました
今の状況を考えるとそうしておいてよかったなー、なんて^^

書き上がってから気づいたんですけど赤也がちっとも話してない
今回ジャッカルと赤也を会わせましたが予定としてはまだまだ先の筈でした
裏話として赤也とジャッカルが初めて会った時の部分も考えてたんですけど需要がなさそうなので書いていません

誕生日って自分が生まれてきたことを祝ってもらうとともに、自分を生んで育ててくれた親にも感謝の意を伝える日だと思うんですよー
子供もいませんし、あまつさえ結婚のけの字も無いような私ですけれども
もし、自分に子供がいて感謝の意を伝えられたら

と考えていたらとてつもなく嬉しいだろうなと思ったんですよ、だから主人公のお母さんは最後主人公に抱きついてます
描写はあえて入れませんでした
入れたほうがいいかなとも思ったんですけど、とりあえずはこのままいこうかと

ちなみに言ってしまうと、主人公のお母さんは結構お茶目なイメージです、ドッキリ仕掛けるにも率先して行くタイプ


…よし、話の区切りは悪いけど、誕生日話も書けたし本編の方も進められるようにしていきたいです
それでは、しーゆー





幸福(1/1)




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