ル イ ラ ン ノ キ


 31…「てがみ」



4時間かけて自宅に帰り着き、ただいまも言わずにリビングに駆け込んだ。
リビングのテーブルには、途中まで封が開けられている薄い水色の封筒があった。愕然としてよろめいた私に、母が心配そうに駆け寄った。

「大丈夫? どうしたの?」
「なんでもないっ……」

私はテーブルの上の封筒を鷲掴みにして二階へ上がった。動悸がする胸を落ち着かせ、震える手で封筒を開けた。
三つ折りにされた封筒を取り出した瞬間、何か切手ほど小さい紙切れがパラパラと足元に落ちた。私はそれを拾い上げ、唖然とした。

「……てめぇなつこ!」

それはなつこと彼氏さんが写っているプリクラだった。
便箋を開いてみると、こう書かれていた。

≪やっほー。暑中見舞い申しあげー↑
ハガキにしようかと思ったんだけどプリクラ撮ったから手紙にしたよー
あなたの親友なつみちゃんより≫

「まぎらわしいっつーの!」

なつこに怒りを覚えたが、冷静になった今、改めて封筒を見てみると、確かに封筒は薄い水色だったが、うっすらと白い水玉模様があるではないか。

「…………」

両膝と両手を床について、ガックシと脱力。もう、なにもやる気が起きない。宿題なんかくそくらえだ。

私にとってこの夏の一番の思い出は、
合計32時間電車に揺られたことです。


end - Thank you

お粗末さまでした。120926
編集:170103
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