voice of mind - by ルイランノキ


 涙の決別1…『voice SID』


〜SID Voice of mind〜

 
故郷に帰るのは、全てが終わってからだ。
そう思っていた。
 
自分が生まれ育った町が近づいてくる度に、そしてルイの故郷に立ち寄ったときに、避けることは出来ないと諦めた。
 
偶然出会ったガキが自分と同じ町の住人だと知ったときは心底驚いた。まるで故郷へ帰るように促された気分だった。
 
姉達はことあるごとに連絡をよこしていたから平穏に暮らしていることはわかっていた。
ただ、魔物に襲われた一件でトラウマを負ったヒラリーだけはずっと気がかりだった。
 
傷を負ったトラウマに触れてはいけないと思っていた。
お前のようにズカズカと土足で心の中を踏み荒らす勇気はなかった。お前の心の中ならいくらでも荒らせたというのに。
 
帰ることを避けていた俺を故郷へと誘った運命を、俺は別の件に関するものだと思っていた。
 
 
 引き出しの中を誰にも見せるな。
 
 
そう運命までもが言っているものだと思っていた。
 
それを愚かだと気づいたのはお前が俺の心へ土足で入り込んだからだ。
姉の心にも。
 

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©Kamikawa
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