voice of mind - by ルイランノキ


 プロローグ1


 
脆弱
 
暗くて何も見えない。
寒さから身を守りたくて
膝を抱えて小さく縮こまってみても
凍てつく寒さに耐えるには
限界がある。
 
 
容赦なく心に吹きすさぶ冷たい風は
私の芯から足の爪先や頭のてっぺんまで冷やしては、体温を奪ってゆく。
 
冷淡な心だけが息づいて
頬を伝う涙さえ
冷え切った冬の雨のように冷たい。
 
 
私は脆くて壊れやすい欠陥品だ。
 
 
独りになった今、思い出す
 
始まり と 過去
 

今日まで歩いてきた
終わりの見えない道
 
  
ぶち壊したくなる衝動から逃げ出すのも
楽じゃないね。
 
 
ふいに彼の声が聞こえた気がした
 
 
『 待ってるから 』
 

 
《その場所》は、一面に大自然が広がり空気の澄んだ世界。
しかし不思議なことに街は、巨大な塀で囲まれ、点々としている。
塀で隔離されているとはいえ、大都会の街では車が行き交い、電飾で彩られ、文明の利器が発展し、一見、戦争や紛争から掛け離れた世界がそこにある。
しかし街から一歩“外”へ飛び出せば、そこは弱肉強食の世界。今となっては住人を失い廃墟から瓦礫と化した家の残骸が残されている。
──夜になると、獣の声が闇に響く。
 
一方、《この場所》は、背の高い建物が大半を締め、自然は少なく、日本の首都である大都市・東京。そこから随分と離れた、まだ自然が残る田畑や山林に囲まれた大分県の片隅に建つ家賃の安いアパートで、一人の女が大きな口を開けて欠伸をしていた。
 

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©Kamikawa
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