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「………」

「XANXUS、星見にいこうぜぇ」

「……は?」

「星」



なんとはなしだった。ただ、不安そうにあの至高の紅が揺らいだ気がした。

その不安をどうにか減らしたくて、星を見に行こうと切り出した。
薄汚れた街からじゃあ星の光にも限界があるから、少し遠くに。まだ学生だけど二人だけでいきたかったから、電車で少しだけ重い天体観測セットを担いで夕方に街の電車にのって、光から逃げるみたいに遠く遠く、田舎の方へ。
今の世の中人工的光から逃げ切る事なんて、できないんだけどなるたけ灯りの少ない方へ。何でわざわざ星見るのにこんな労力を、とXANXUSは愚痴ったけど気にしない。
何にもない田舎の、段々畑を昇ってスニーカーが土でドロドロになったけど、気にはならない。その上の、きっと誰も近寄らなくて手入れも何もされていない、夏のため草が萌え生い茂るなだらかな丘、その先はボロッボロの本当に何十年も前にかけて忘れ去られたような「この先崖!危険!」と書かれた立て札に、申し訳程度の木打ちの柵。その手前に邪魔な石を蹴飛ばして適当に慣らし、レジャーシートを広げる。

街の光が来ないって言う訳じゃないけれど、まぁ町中よりはだいぶ見れるだろう。と望遠鏡を組み立て始める。



「持ってきた意味あんまねぇかも。望遠鏡なんかなくても綺麗に見えるなぁ」

「………」



ミルキーロードと言うだけはある、天の川。空にミルクのしぶきが上がったように鮮明にちかちか光っていた。
中途半端に組み立てたのだが…持ってきた意味はなくなってしまうが、望遠鏡に頼るよりこれなら肉眼の方が綺麗に見えるだろうと横に押しやって、レジャーシートにごろんと横になる。XANXUSは信じられないとでも言いたげにこっちを見て目をすがめる。街の灯りなんかなくても、月明かり星明かりで十分にXANXUSの表情は見て取れた。レジャーシート敷いてるんだから汚れねぇってのに変なとこ潔癖性っつーか育ちが良いっつーか…。来いよと指で示しても頑として首を横に振るので、腕を引き倒す勢いで引っ張る。



「でかい石は退けたし、草がクッションになってそれほど悪い寝心地でもねぇって。それでも気になるならオレの腹に頭乗せろよ」



それなら文句ねぇだろ、と聞くが早いかどすっと勢いを殺さない状態で腹枕になってこっちが数秒もだえるも、XANXUSは何処吹く風とばかりにごろりと上を見る。



「…いてぇえ」

「黙ってろ」

「………」

「視線がうぜぇ」



視線で不満を訴えるも、どすっ、もう一回頭をヘッドバッドのような勢いで腹に頭が落ちてきた。こいつ何様だ。勿論言わずもがな御曹司様XANXUS様な訳だが。
まぁいいか、
先ほど見た瞳は、不安に揺らいでなど居なかった。強い光を宿した、極上のルビーを溶かし込んだ夕焼けのような紅だった。それだけで今回の目的は達せられたようなものなのだ。少しでも楽になっただろうか。物思いにふけっていたら、XANXUSはぽつり口を開く。



「悪くねぇな」

「あ?ああ、わりかし街の明かりも気にならねぇし良いだろぉ」

「違ぇよ」

「?」

「テメェとこういう事するのは、悪くねぇ」



今なんと言われたろう、頭が一瞬でオーバーヒート。聞こえてたはずなのに頭はちっとも回らなくて理解が追いつかないし、さっきまでまっすぐ見れたこいつの顔も、今だけは見れそうにない。腹に乗っていた重みがふっとなくなり、ガッツリと視線が合った――と思う。実際上に覆いかぶさるように腕を突っぱねて丁度押し倒すような形になったので顔はよく見えなかったのだが。



ただいつものように、意地悪く笑ってるのだけ分かった。






(悪くないって、悪くないって)(どうしよう、心臓がうるせぇ)



20110815.



Special Thanks 夜明け前
(20000Hitおめでとうございました!)



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