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アーロ君が大切にしているぬいぐるみがカラスに奪われてしまったと木の下で泣いていた。
仕方ないと慣れない木登りをしてカラスにつつかれながらもなんとか取り返したものの枝が折れて尻餅をつきながら落下。いたたたたと思いながらアーロ君にライオンを返せば耳が解れていて綿が。ぎゃぁあおおおんと火のついた怪獣のような声を上げて泣き続けるアーロ君に困り果てていれば、気づいた優先生が走ってきてアーロ君をなでてこちらを見上げて。


「オッタビオさん大丈夫ですか?アーロ君どうしたの?おけがしたの?」

「…優先生、」

「うわぁああ!!べすたぁせんせがぁあ!!」

「ベスター先生?」


泣きやまないどころかさらに声を張り上げて泣いているアーロ君の手に握られたライオンの人形に目をやり、耳の解れに気づいたようでアーロ君の頭を優しく撫でた。


「大変!ベスター先生おけがしちゃったみたい。お医者さんに見せなきゃ」

「おいしゃしゃん…!」

「ね。先生お医者さんもできるよ。お怪我治すからベスター先生ちょっとだけ先生に貸してくれないかな?」

「べすたあせんせい、なおる?」

「うん、お医者さん行けばなおるよ。がんばれって声かけてあげて」

「べすたあせんせ、がんばって!ゆうせんせ、ちゃんとなおしてなぁ!」


治ると聞けば、泣きそうなのを我慢して「ベスター先生」を優先生に。


「うん、ちゃんと治すよ。オッタビオさんも。擦りむいたり怪我してらっしゃいますから一緒に保健室ご一緒しませんか?良ければ消毒させてください」


…優先生は本当にお優しい。慣れない木に登ったりカラスにつつかれたりしたかいがあったかもしれない。
じかに触って貰えて消毒までしていただき、すみません。嬉しすぎて顔が見れなくて。
失礼にならないでしょうか。






(こんなに近くで見ていられるなんて)(慣れないことはするものだ)



20130428.



ある幼稚園の事務員の話/夜明け前




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