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※二代目デフォルト名レナート(Renato)。ちなみにイタリア語でReが王をいみするので名前に入れてみました。



*



記憶の中の雨は白い息を吐いていたから、この会話をしたのはきっと冬だったんだと思う。
子供と言えば、どちらかと言えばとっつきやすい初代の方に懐くものだが、この子供だけはいつも俺の後をついてきては二代目、二代目と髪の毛を引っ張ってくる。とくに懐かれることをした記憶はないが、いつもいつも、二代目を守るんだとか言いながらぼうっきれを持ってついてきたから屋敷の連中もレナートさまがまた雨を連れていると暖かい目で見てくるくらいだった。


「二代目!」
「オレはまだ二代目じゃねぇ」
「でも、二代目になるんだろ?」
「…将来的には有力視されてるな」
「じゃあ、いつかボンゴレ継ぐときはオレをボンゴレの雨の守護者にして!強くなるから!」
「は、雑魚チビが何をぬかすかと思えば」
「強くなるんだ!だから約束してー!!」
「そのほっそい腕でオレを守れるわけねーだろ雑魚雨」
「雑魚じゃねえ!」


鼻の頭を赤くして、雨が真剣な目で言うものだから。
次の誕生日に雨の背丈より少し長めの剣を与えた。意地悪のつもりと言うか、今小さすぎる雨ではナイフが精いっぱいだろと言っても長い剣の方が絶対有利だと言って聞かず木の棒を引きずり続けたので、それならばとレイピアを与えた。一番軽い剣だ。それが扱えないようなら諦めろと暗に言ったつもりだったが、雨は最初剣を振り回すというより剣に振り回されながら振るっていた剣が、身長が伸びたのもあるだろうが、10歳を待たずに雨の剣の腕前はオレの部下じゃ相手にならないようになってしまった。稀代の女剣士、と呼ばれるまでに。


「勝ったぜぇ!二代目!」
「勝って当然だ雑魚」
「なあーいい加減部下にしてくれよ!」
「………、」
「一緒にボンゴレ大きくしようぜぇ」


しかしそこに来ても、オレは今だ雨をボンゴレに入れず部下にはしていなかった。
まだ、こいつは10を待たないガキ、しかも女なのだ。ボンゴレで、オレのそばで剣士なんかやらなくとも他の道をいくらでも選べるだろう幼さ、言ってしまうならば貴族を相手にしてでも通じるだろう美貌も持っている。先を勝手に縛ってしまうには、若すぎると判断してのことだった。
それでも雨は毎日オレに剣の腕をアピールするために、昔与えたレイピアを抱えては屋敷にやってきた。
そんな日々が、7年。




*




「………二代目?」



雨が16の誕生日。
その日は天気すら都合を合わせたように雨が降っていた。ドアを開けた雨の驚いた顔と言ったらない。それはそうだろう。レナートから雨を訪ねたのは長い事一緒にいたが初めてのことだ。


「どうした?こんな時間に!?冷えるから早く入れ」
「すぐ済む。ここでいい」
「け、けど」
「オレが二代目になる継承式が決まった」
「えっ…」


なんだか雨は傷ついた顔をした。それも当然だ。レナートは今の今まで雨を―――稀代の剣士を部下にはしていない。幼いころに雨が言い出した「お前の雨にしてほしい」と言う言葉は、いまだにこいつが言い続けているけれど。それでも、まだ。継承式を目前にしてまで部下にしていないのだ。雨からすればその夢は破れたと思って良いだろう。


「お前、今日でいくつだ?」
「…16…」


夢が破れ呆然としたままに、日付が変わったのを確認して答える。


「…プレゼントをわたしに来た」
「……二代目がオレにプレゼントくれるなんて、珍しいなぁ…餞別かぁ?」
「そうだな、餞別だ」


厚手のコートのポケットから。


そっと二代目が取り出したのは、二つの小さな箱。


「今の生活に別れを言え」

「え…?」


果たして、中には。
一つはボンゴレのマークの中にしずくの形をした銀色と青の彫られた指輪。
一つはアクアマリンと真珠を豪華にあしらった海を思わせる美しい形をした指輪。


「どっちを選ぶにしても、だ」
「…、ボンゴレの…雨の指輪と…こっちは…?」
「婚約指輪」
「………!!」
「どっちか、選べ」


16。
二代目が雨でも人生を選べると判断した年齢。大人と認めた年齢。
どちらにしても、もう放しはしないと告げに―――雨の中、やってきた。
お前が主役だと、告げるように。


「…どっちか…を……」


雨は。はたして。
苦渋の決断。初恋の相手であることなど誰から見ても一目瞭然。そして長年その男の仕事面でも支えていきたいと願っていた夢とをはかりにかけて。

銀箔をちりばめたような目に涙さえ浮かべて。指を震わせて。ゆっくりと。片方の指輪の箱を手に取った。

―――次期ドンボンゴレの、雨になることを決めた。


「……それでいいんだな?」
「………ああ。あり、が、ありがとう二代目っ…っ」


ぽろぽろぽろ。
これは、嬉し涙だろうか。雨には解らなかった。自分で選ばせてもらったのだ。後悔なんか、しないはずだったのに。それでも初恋は破れてしまった。


「……。ばか」
「へ?」


そっと。レナートが雨の守護者の指輪を手に取り、姫君のような白く細い薬指にはめて。
宝物をめでるようにやさしく唇を奪った。


「両方寄越せって何で言わねぇんだよ」
「…!!」
「今日は誕生日なんだろ、オレの雨」
「……。」
「何とか言え」
「大好きだ、二代目ぇえ…!」


ぽろぽろ。
雨水すら暖かく変えた体温に抱き着いた。






(お前を守る、誇りを守る)(夢を叶えてくれたのは、やっぱりお前だ)


20121028(反転コンタクトさま).


Special Thanks 夜明け前
(ありがとうございました!)



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