ファーストキスはレモン味だという。
なら私のファーストキスはどんな味になるのだろう。
私は今でも、あの絵のことが忘れられない。
もう10年も前だというのに、私は未だに一人の男に恋をしていた。
それは、男と言われればそうなんだけど、人ではない。
私は絵画に恋をしてしまったのだ。
10年前のある美術館。
たしかワイズ・ゲルテナ展をやっていたときに、私は両親と美術館に訪れた。
どんな作品が展示してあったか。それはもう忘れてしまったけれど、一枚の絵画だけ今でも鮮明に思い出せる。
紫のメッシュのかかった髪、青白い肌、周りに咲く青い薔薇の花言葉は奇跡、神の祝福なのにその男性は俯き暗い表情をしている。まるで事切れた人形のように、彼はその場に座り込んでいた。
不思議な絵だった。胸のあたりが締め付けられるように苦しく、泣きそうなのになぜか、その場から離れられない。周りに咲く青い薔薇は、まるで彼の命を吸い取ったように、鮮やかな色彩で。
「忘れられた肖像」。いったい誰に忘れられたのか。その答えは案外近くにあるような気がした。
今日は私の誕生日だった。私はプレゼントとして両親からチラシとチケット一枚をもらった。
G、その文字が表すのはゲルテナ展。この町の、あの美術館で10年ぶりに個展が開かれる。
私は今日10年ぶりにゲルテナ展へ行くというわけではない。むしろ個展が開かれるたびに私は行ったのだが、なぜかあの絵がない。
けれど今回の個展では、忘れられた肖像が展示されるのだ。
楽しみだなあ、私の誕生日に開かれる、そんな淡いロマンチックな期待を胸に私は受付人へチケットを渡し、足を踏み入れた。
今回の目玉、深海の世を始め、無個性、心配、指定席、吊るされた男、赤い服の女。
それはまるで生きているかのように鮮やかなで、独特の雰囲気を放っていた。
そして、例の絵はそこにあった。
「久しぶりだね、10年ぶり」
私はそこで足を止め、ただひたすらに絵を見続けていた。
シアン色の綺麗な薔薇は相変わらず鮮やかな色彩を放っていた。
どれくらいときが経っただろう?私は違和感に気付く
気づけば、誰もいない。
立ちすくむ私に、おいでよ、イヴ。そんな声がどこかで耳鳴りのように聞こえた。
こちらは忘れられた男の話。と似ているようでパラレルワールド的存在となっています。
偽ャリーが偽物か、ギャリー本人かでの話。
こちらはギャリー本人だった話です。
=殺伐としてます。
忘れられた肖像ED10年後妄想となっています。
妄想が先走ったので、軽く補足。
薔薇が咲いている=メアリーのように外に出たい意思がある。と見ていただければいいです。
でも、多分公式では咲いてないように見えるんですよね。
そこらあたりはその……適当で((おい