バンッと大きく音をたて勢い良く開いた扉の先には、愛しい彼女の姿と、それに覆い被さる中年男の姿があった。
無言で怒りのオーラを撒き散らす俺の事を一瞥し、残念そうに首を竦めた。
「じゃあ、気を付けろよ」
彼女の頭を優しく撫で、俺の隣を通り過ぎる。
まだ怒りの収まらない俺の頭さえポンと一つ叩き、いかにも余裕綽々とした顔で部屋から遠ざかって行く。どうせ餓鬼だとでも思っているんだろう。
恨みがましくその背を見つめ、短く溜め息を吐けば中の彼女に近付いた。
「た、ただいま…」
「怪我、したんだって?」
任務終了から直接医務室に来たというのに。どこで聞き付けたのか…それともボスお得意の超直感というやつか…
多分、前者だろう。漏らしたのはリボーンで間違いない。入口で腕を庇っていた所を見られたから。
シャマルによって巻かれた包帯を見つめる彼の視線が痛い。
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「大丈夫だよ、掠り傷だし…」
笑いながら軽々しく告げた彼女の言葉に少しの安堵と苛つきを覚える。
肩に額をつけて表情を隠し、情けない顔を見られまいと、弱い心を知られまいと、精一杯の虚勢を張って。
「…心配かけるなよ、馬鹿」
「ごめん…ね?」
申し訳なさそうに苦笑した君に口付けて抱き締める。
「…もう、任務禁止な」
「えぇっ!」
一睨みすれば、彼女は口をつぐんで大人しくなった。
「はじめからそういう約束だっただろ?」
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最初に任務に行く時に言われていた。傷付くようなら止めさせると約束もしていた。それを承知で私は任務を自ら進んで受けた。
「や、やだ!」
「ダメ」
「絶対嫌っ」
「…何でそんなに強情なんだよ」
呆れた様子のツナに、俯きながらポツリポツリと言葉を紡いでゆく。
「だって、任務出来なきゃ私、お荷物でしょ…?」
ツナの為にも自分の為にも、お荷物なんてなりたくない。
釣り合うようになんて贅沢は言わないから、せめて隣に立たせて欲しい。
「…ホント、馬鹿」
見上げれば少し赤らんだ頬。視線を外したツナは咳払いをひとつして。
「とりあえず任務は禁止」
やっぱり隣にも立たせてくれないのか、なんて肩を落とす私に彼がそっと耳打ちした。
「お前には、任務より重大な役目があるだろ」
目を丸くさせてパッと見上げた先には、にんまり顔のツナがいて…
「お前は何にもせずに俺の傍に居れば良い」
大事な日にはいってらっしゃいと、帰った時にはお帰りなさいと、二人の時は愛していると囁いて。それだけで大きな支えになるから。
そう囁いた彼の甘い声に、頭が痺れて麻痺しそう。
貴方からの新たな任務は永久に続く愛の日々。
(…あ、一つだけ任務あった)
(え、何々?)
(俺の世継ぎを産むこと)
(…)
(俺は今すぐにでもオッケーだけど?)
(いやいやいや、その任務は結構です!)
(遠慮するなよ)